月経困難症という言葉を聞いたことはありますか?
月経痛がひどい、月経量が多いなどの症状で悩んでいても、多くの方はそれを病気として認識していません。そのため、鎮痛剤を飲みながら我慢している方が多いのですが、実は裏に治療しないと将来の不妊につながる病気が隠れている可能性もあります。
ここでは、月経困難症の症状やチェックリスト、月経困難症にひそむ病気のリスクなどを紹介しています。毎月我慢している痛みの原因を突き止めたい方、鎮痛剤以外の治療方法が知りたい方はぜひ最後までご覧ください。そして、医療機関を受診することも検討してください。
この記事でわかること- 月経困難症の症状と原因
- 月経困難症かも?と思った場合のチェックリスト
- 月経困難症改善のためにやるべきこと
月経困難症とは
月経困難症とは、月経の直前もしくは開始後に起こり、日常生活に支障をきたすような様々な症状のことを言います。月経の終了とともに症状は消失します。
軽度の月経痛などは誰もが感じるものですが、月経困難症は日常生活に支障をきたすような重度のもので治療の対象になります。
原因となる病気がはっきりしない場合の月経困難症を「機能性月経困難症」、原因となる病気がある場合を「器質性月経困難症」と呼び区別されています。
月経困難症のセルフチェックリスト
もしかしたら月経困難症かもと感じたら、まずは簡単にできるセルフチェックで確認してみましょう。セルフチェックの一部を抜粋するので、ご自身の月経の状態を確認してみてください。
- 鎮痛剤が効かないほどの痛みがある
- 月経痛以外にも頭痛や吐き気がある
- 月経時の出血量が多いと感じる
- 月経の周期が乱れている
- 月経前になるとイライラする
- 排便痛や性交痛がある
月経困難症の原因
機能性月経困難症と器質性月経困難症とで、原因は異なります。
機能性月経困難症は、子宮内膜から産生されるプロスタグランジンが子宮筋を過度に収縮させることが主な原因です。
若い女性の場合は月経への不安や緊張など、心理的要因の関与も指摘されています1)。
他にも、経血を排出する子宮頚部が狭すぎることも月経痛を強めます。
一方、器質性月経困難症は、子宮や卵巣などの病気が原因です。具体的には子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫、子宮内炎症、子宮奇形などが挙げられています1)。
月経困難症にひそむ病気のリスク
たかが月経痛くらいで、と我慢しながら生活している方もいらっしゃるでしょう。しかし前述のとおり、その痛みは子宮や卵巣など婦人科の病気が原因で起こっている可能性があります。ここでは、月経困難症にひそむ病気のリスクをもう少し具体的にみていきましょう。
子宮内膜症
子宮内膜症は、子宮内膜もしくはそれに類似する組織が、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し発育する疾患です。
女性ホルモンの影響で月経周期に合わせて増殖しますが、子宮の内側以外のところにあるため、月経時に排出されずに残ってしまいます。そして周辺組織と癒着を起こして痛みをもたらすのです。また、子宮内膜症は不妊の原因とも言われています。
子宮内膜症では、月経時以外にも腰痛や下腹部痛、排便痛、性交痛など様々な痛みを伴うことがあります。
子宮筋腫
子宮筋腫は、腫瘍の一種です。悪性の腫瘍ではないものの、貧血や痛み、月経量が多いなどの症状が出ます。めずらしい腫瘍ではなく、小さな腫瘍を含めると30代女性の20〜30%に見られる病気です。腫瘍ができた場所によっては、大きくなるまで症状が出ないこともあるので注意が必要です。
子宮筋腫の場合、月経時以外の出血(不正出血)や腰痛、頻尿などの症状が出ることがあります。また、不妊や習慣流産の原因とも考えられています。
子宮腺筋症
子宮は、子宮平滑筋と子宮内膜の2つの組織から出来ている伸び縮みをする臓器です。子宮腺筋症と は、子宮内膜症が子宮の内側ではなく、子宮の筋肉に生じた場合のことを言います。
女性ホルモンの一種であるエストロゲンによって進展および増悪するため、月経の度に少しずつ進行していきます。子宮筋腫や子宮内膜の肥厚を併発することが多い病気です。主な症状は強い月経痛や経血量の過多、不正出血、月経時以外の腹痛および腰痛などが挙げられます。
月経困難症を改善する方法
月経困難症には、子宮になんらかの原因がひそんでいる器質性月経困難症と子宮とは関係のない原因で起こる機能性月経困難症があります。原因によって対処方法は異なるため、まずは痛みの原因を突き止めることが最も重要です。
婦人科を受診する
痛みによって日常生活に支障が出ている場合や鎮痛剤が効かないような場合は、婦人科を受診してみましょう。婦人科では問診の他、内診や経膣超音波検査などで診断を行います2)。
子宮内膜症や子宮筋腫などが原因の器質性月経困難症が疑われる場合は、CTやMRIなどの画像診断、クラミジアを含む感染症の検査、子宮内膜症のマーカーであるCA125の測定などが行われます2)。
月経困難症の治療は子宮や卵巣に異常がないか確認した後に、鎮痛剤や漢方、ピルなどを組み合わせて行われます。
生活習慣を整えてストレスを減らす
ストレスは様々な病気の引きになります。ストレス解消のために十分な睡眠を取り、リラックスできる時間を設けることが重要です。
ウォーキングやヨガなどの適度な運動は、ストレスを和らげるだけでなく骨盤内の血流を良くすることで痛みの改善につながります。その他、身体を冷やさないことやバランスの良い食事を心がけましょう。
基礎体温を測って記録しておくことも、月経サイクルや体調変化の把握に役立ちます。
以下の記事も合わせて読む
→月経困難症の治療で用いる薬について
まとめ
「みんな同じように痛みと戦っている」と、月経の度に起こる痛みや吐き気、頭痛などを我慢して過ごしている女性は多いものです。
しかし、たかが月経痛と思っていた痛みが実は子宮内膜症や子宮筋腫などの病気のサインだった、ということもあり得るのです。
まずは、月経困難症のチェックリストをご覧ください。当てはまる項目が多かったり、月経時の痛み以外にも困っている症状があれば、一度婦人科を受診して検査をすることをおすすめします。
参考文献
1)本岡夏子ら,「月経痛に関する看護ケア」,人間看護学研究,12:77-82,2014
2)相良洋子,「月経随伴症状に対する心身医学的対応」,Jpn J Psychosom Med,Vol.49,No.11,2009