不妊に悩む夫婦は多く、厚生労働省の調査によると夫婦の39.2%つまり夫婦全体の約2.6組に1組が不妊を心配した経験があるといわれています。1)
妊娠を希望する女性のなかには、自分が不妊症なのか気になっている人もいるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、不妊症の原因や不妊症になりやすいタイプを解説します。自分が不妊症なのか心配な人は、不妊症になりやすいかどうかチェックしてみてください。
また、普段の生活のなかでできる不妊症の対策も紹介しますので、ぜひ意識して実践してみましょう。
この記事でわかること
- 不妊症の概要
- 不妊症の原因
- 不妊症になりやすいタイプ
- 不妊症の治療方法・対策
不妊症とは
不妊症とは、妊娠を希望する男女が性交渉を行っているにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態のことをいいます。
不妊症に悩む男女は約10組に1組だといわれていますが、近年は妊娠を考える年齢が高くなっていることもあり、実際に不妊に悩む人はもっと多いと考えられています。
不妊症をそのままにしておくと、時間が経つにつれて治療をしても効果が低くなってしまう可能性があるので、不妊かもしれないと感じたときは早めに医師に相談しましょう。
不妊症の原因
不妊症の原因が女性側にある場合、主に下記の5つに分けられます。
- 排卵因子:ホルモンバランスの異常や極度の肥満などにより排卵が起こらない
- 卵管因子:感染症やその他の病気によって卵管がふさがっているため受精ができない
- 頸管因子:頸管粘液(おりもの)が少ない、もしくは粘り気が強く精子が子宮に進入できない
- 免疫因子:抗精子抗体を持っているため、卵管や子宮頸管内で精子を攻撃してしまう
- 子宮因子:子宮の形や筋腫・ポリープなどの疾患によって受精卵が着床できない
原因の特定は不妊症の治療を行ううえでも重要なポイントになるので、早めに検査を受けて原因を特定させることも大切です。
不妊症になりやすいタイプは?
不妊症になりやすい女性には、どんな特徴があるのでしょうか。この章では不妊症になりやすいタイプを解説します。自分は不妊症ではないかと悩んでいる女性は、ぜひ参考にしてみてください。
月経に異常がある
月経に異常がある女性は、不妊症になりやすいといわれています。月経異常とは、例えば下記のような症状のことをいいます。
- 月経周期が極端に長いまたは短い
- 月経量が極端に多いまたは少ない
- 月経の期間が極端に長いまたは短い
その結果、妊娠しにくくなる可能性があるので、月経異常がある女性は、早めに医師に相談してみてください。
基礎体温に異常がある
基礎体温に異常がある場合、不妊へとつながる可能性があるので注意しましょう。基礎体温は、正常に排卵が行われている場合、低温期と高温期を一定のサイクルで繰り返します。
このサイクルが乱れているときはからだに何かしらの異常がある可能性があります。 とはいえ、基礎体温は生活習慣やストレスなどでも乱れることがあるので、数日程度の乱れであれば問題ありません。
しかし、高温期が来ない場合は、排卵が行われていない可能性もあるため、早めに医師へ相談してみてください。
性感染症にかかったことがある
これまで淋菌やクラミジアなどの性感染症にかかったことがある場合、不妊になる可能性があります。淋菌やクラミジアを放置すると子宮頸管や卵管にまで感染が広がり、炎症や癒着が起きて不妊症の原因となります。
また、妊娠できたとしても子宮外妊娠となる可能性があるので注意が必要です。
性感染症は女性だけでなく、男性にとっても不妊のリスクを高めます。
女性の場合は特に症状が現れないこともあるため、心配な方は性感染症の既往を調べてみるとよいでしょう。
骨盤腹膜炎を起こしたことがある
骨盤腹膜炎の既往歴がある場合、不妊になりやすくなる傾向があります。骨盤腹膜炎とは膀胱や子宮、卵管などの下腹部が炎症を起こす女性特有の病気です。
クラミジアなどの性感染症が原因となるケースもあり、子宮や子宮の周りの圧痛、性交痛、不正出血などの症状が現れます。
骨盤腹膜炎は卵管を詰まらせたり癒着を起こしたりする原因となり、結果として不妊症を引き起こす可能性があります。過去に骨盤腹膜炎の既往歴がある方は、早めに医師に相談してみてください。
子宮筋腫・子宮内膜症の診断を受けたことがある
子宮筋腫や子宮内膜症の診断を受けている女性も、不妊になる可能性があります。
子宮筋腫があると、筋腫ができている場所によって子宮の中で精子が移動したり受精卵が着床したりするのを邪魔してしまうことがあります。
また、子宮内膜症は、特にチョコレート嚢胞がある場合、卵巣予備能が低下するので注意が必要です。 妊娠を希望する子宮内膜症患者の約30%に不妊があるとされているので、早めに医師に相談することをおすすめします。
下腹部の手術を受けたことがある
盲腸(虫垂炎)や胸膜炎、または過去に帝王切開や子宮外妊娠の経験があり開腹手術をしている場合も、不妊になりやすいといわれています。
手術の後遺症によって、卵管が癒着したり、詰まったりすることがあるため、不妊の原因になる可能性があります。
もし過去に開腹手術(特に下腹部)の経験がある場合は、卵管造影検査で癒着や詰まりがあるか卵管の状態を確認してみるのもおすすめです。
喫煙の習慣がある
生活習慣によっても妊娠のしやすさは変わり、特に喫煙習慣がある人は不妊症になりやすいといわれています。喫煙は卵巣にダメージを与え、卵子の質低下をもたらしたり妊娠しても流産のリスクが高くなると考えられています。2)
喫煙によって不妊症のリスクが高くなるのは、女性だけではありません。男性も喫煙することで精子の質が悪くなるので、不妊の原因になる可能性があります。
妊娠を希望する場合は、男女ともに禁煙することもとても大切です。3)
慢性疾患の持病がある、または既往歴がある
過去に慢性疾患を患ったことがある、または現在慢性疾患の持病がある女性も、不妊症のリスクがあるといわれています。
慢性疾患とは、例えば子宮内膜症が挙げられます。その他にも、糖尿病や甲状腺機能障害、肥満症なども排卵障害を引き起こし、不妊につながると考えられているので注意が必要です。
自覚症状が無くても不妊に影響があるケースもあるので、妊娠を希望する場合は早めに医師へ相談してみましょう。
男性側が原因の場合も
不妊の原因は女性だけではなく、男性側にあるケースもあります。前述しましたが、不妊の原因の48%は男性にあるといわれています。
男性で不妊になりやすいのは、下記のタイプの人です。
- 大人になってからおたふく風邪になり、睾丸(こうがん)が腫れた人
- 高熱が続いたときに睾丸に痛みを感じたことがある人
- 睾丸が小さい、または子供の頃に比べて小さくなった人
- 睾丸の袋の表面に血管が多い人
- 子供の頃に鼡径(そけい)ヘルニアの手術を受けたことがある人
- 生活習慣が乱れている人
- 肥満の人
- 喫煙をする人
不妊症の検査方法
女性が受ける一般的な不妊症の検査は、経腟超音波検査と子宮卵管造影検査、血液検査です。経腟超音波検査では子宮筋腫・子宮内膜症・卵巣のう腫の有無や状態などを確認します。
また、不妊症の治療をするときには、超音波検査で卵胞の大きさを観察し排卵日を予測することも可能です。子宮卵管造影検査では子宮の形や卵管の状態を、血液検査ではホルモンの検査を行います。
その他にも、子宮や卵巣の状態を詳しく確認するためにMRI検査や、子宮や卵巣などの骨盤内臓器の状態を確認するために腹腔鏡検査・子宮鏡検査を実施することもあります。
不妊症の治療方法
不妊症を治療するときには、下記の方法で行います。
- タイミング法:排卵に合わせて性交渉を行う治療方法 排卵誘発法:注射や内服薬によって卵巣を刺激し排卵を起こす治療方法
- 内視鏡手術:子宮にあるポリープや筋腫を切除したり、卵管の詰まりを解消したりして、自然妊娠する確率を上げる方法
- 人工授精:採取した精液から成熟精子を回収し、排卵に合わせて子宮内に注入する治療方法
- 生殖補助医療:卵子を取り出して体外で受精させる体外受精や顕微授精で、難治性不妊の場合に選択される方法
自分でできる不妊症対策
自分でもできる不妊症対策がいくつかあります。
- 生活習慣の改善
- ストレスを減らす
- 冷え性対策
どれも普段の生活から心がけられるという特徴がある対策ばかりなので、今後妊娠を希望している女性は日頃から意識してみてください。
生活習慣の改善
バランスの良い食事や適度な運動、規則正しい生活リズムを整えて十分な睡眠をとるなど生活習慣を改善することは、不妊症対策をするうえでとても大切なポイントです。
栄養が偏った食事をしていたり睡眠不足になったりすると、ホルモンバランスが乱れて排卵が不安定になる可能性があります。
また、喫煙や過度のアルコール摂取も妊娠しにくくなる可能性があるので、妊娠を希望する場合は避けるようにしましょう。
ストレスを減らす
不妊症対策として、ストレスを減らすことはとても大切です。ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、ホルモンの分泌量が低下します。
その結果、排卵障害が起こる可能性があるので、なるべくストレスを溜めないようにしましょう。
不妊症治療を行うときは、治療がうまくいかないことや周囲からの言葉でストレスを感じることもあります。十分な休養を取ったり趣味を楽しんだりと、自分の好きなことをする時間を作ってうまくストレス発散できるよう心がけてみてください。
冷え性対策
冷え性に悩む女性は多いですが、身体の冷えは不妊に悪影響を及ぼす可能性があるので気を付けましょう。
身体が冷えると血流が悪化し、子宮や卵巣の機能低下を引き起こす可能性があります。
また、冷えは胎児へも悪影響があるため、妊娠後も気を付けなくてはいけません。 少しでも妊娠しやすい身体を目指すために、身体を冷やさないよう意識してみてください。おすすめの冷え性対策はこちらです。
- 湯船に浸かる
- 運動をする
- 温かい飲み物を飲む
- 冷え性を改善する漢方薬を飲む
短期間では冷え性は改善されませんが、数カ月続けていくことで徐々に身体に変化が現れます。体外から変化させる入浴や運動と、体内から変化させていく漢方薬を併用して改善していくのもおすすめですよ。
まとめ
不妊症とは、妊娠を希望する男女が性交渉を行っているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態のことをいいます。
月経や基礎体温に異常がある人や性感染症・子宮筋腫・子宮内膜症などの既往歴がある人などは、不妊になりやすいといわれているので、早めに医師に相談しましょう。
これから妊娠を希望している場合は、普段の生活から不妊症対策を意識してみてください。生活習慣の改善をしたりストレスを溜めないようにしたりと、妊娠しやすい身体つくりを心がけてみましょう。
参考文献
1) 不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック 厚生労働省2) Fenton AJ. Premature ovarian insufficiency: Pathogenesis and management. 2015https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26903753/
3) Sharma Ret al. Cigarette Smoking and Semen Quality: A New Meta-analysis Examining the Effect of the 2010 World Health Organization Laboratory Methods for the Examination of Human Semen. 2016.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27317089/