不妊症になりやすいタイプは?検査方法や治療法も紹介。

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

不妊に悩む夫婦は多く、厚生労働省の調査によると夫婦の39.2%つまり夫婦全体の約2.6組に1組が不妊を心配した経験があるといわれています。1)
妊娠を希望する女性のなかには、自分が不妊症なのか気になっている人もいるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、不妊症の原因や不妊症になりやすいタイプを解説します。自分が不妊症なのか心配な人は、不妊症になりやすいかどうかチェックしてみてください。

また、普段の生活のなかでできる不妊症の対策も紹介しますので、ぜひ意識して実践してみましょう。

この記事でわかること

    • 不妊症とは
    • 不妊症の原因
    • 不妊症になりやすい女性の特徴とは?
    • 不妊症になりやすい女性の特徴(詳細)
    • 病院で不妊症の検査を受けましょう
    • 自宅でも不妊症検査の一部が受けられるキットもおすすめ
    • 不妊症の治療方法・対策
    • 自分でできる不妊症対策

不妊症とは

不妊症とは、妊娠を希望する男女が性交渉を行っているにもかかわらず、1年以上妊娠しない状態のことをいいます。

不妊症に悩む男女は約10組に1組だといわれていますが、近年は妊娠を考える年齢が高くなっていることもあり、実際に不妊に悩む人はもっと多いと考えられています。

不妊症をそのままにしておくと、時間が経つにつれて治療をしても効果が低くなってしまう可能性があるので、不妊かもしれないと感じたときは早めに医師に相談しましょう。

不妊症の原因

不妊症の原因が女性側にある場合、主に下記の5つに分けられます。

  • 排卵因子:ホルモンバランスの異常や極度の肥満などにより排卵が起こらない
  • 卵管因子:感染症やその他の病気によって卵管がふさがっているため受精ができない
  • 頸管因子:頸管粘液(おりもの)が少ない、もしくは粘り気が強く精子が子宮に進入できない
  • 免疫因子:抗精子抗体を持っているため、卵管や子宮頸管内で精子を攻撃してしまう
  • 子宮因子:子宮の形や筋腫・ポリープなどの疾患によって受精卵が着床できない

不妊症の原因は、女性と男性とでおよそ半分ずつと考えてください。そのため、女性側だけではなく男性側に原因がある可能性もあります。

原因の特定は不妊症の治療を行ううえでも重要なポイントになるので、早めに検査を受けて原因を特定させることも大切です。

不妊症になりやすい女性の特徴とは?

不妊症になりやすい女性には、いくつかの特徴があります。これらの特徴を知ることで、自分が不妊のリスクを抱えているかどうかを把握できます。
不妊症になりやすい女性の主な特徴は以下の通りです:

  • 月経周期が不規則または異常がある
  • 基礎体温が安定していない
  • 性感染症にかかったことがある
  • 子宮筋腫や子宮内膜症の診断を受けたことがある
  • 下腹部の手術を受けたことがある
  • 喫煙の習慣がある
  • 慢性疾患の持病がある、または既往歴がある
  • 35歳以上である

これらの特徴に該当する場合でも、必ず不妊症になるわけではありませんが、妊娠を希望する場合は早めに医師に相談することをおすすめします。

不妊症になりやすい女性の特徴(詳細)

不妊症になりやすい女性の特徴について、より詳しく解説します。これらの特徴を理解することで、早期発見や適切な対策につなげることができます。
各特徴には医学的な根拠があり、妊娠を希望する女性にとって重要な判断材料となります。もし該当する特徴がある場合は、一人で悩まずに専門医に相談することが大切です。

月経に異常がある

月経に異常がある女性は、不妊症になりやすい傾向があります。正常な月経周期は25~38日程度で、3~7日間続くのが一般的です。
以下のような月経の状態は、不妊症のリスクを高める可能性があります:

  • 月経周期が24日以下と短い(頻発月経)
  • 月経周期が39日以上と長い(希発月経)
  • 月経が3カ月以上来ない(無月経)
  • 月経量が極端に少ない(過少月経)
  • 月経量が極端に多い(過多月経)
  • 月経期間が8日以上続く(過長月経)

これらの月経異常は、ホルモンバランスの乱れや排卵障害を示している可能性があります。排卵が正常に起こらないと、妊娠の確率が大幅に低下するため、早期の検査や治療が重要です。

基礎体温に異常がある

基礎体温のパターンに異常がある女性も、不妊症になりやすいといわれています。正常な基礎体温は、排卵を境に低温期と高温期の二相性を示します。
以下のような基礎体温の異常は、排卵障害の可能性を示しています:

  • 低温期と高温期の差が0.3℃未満
  • 高温期が10日未満と短い
  • 一相性の体温(高温期がない)
  • 体温の変化が不規則

基礎体温は排卵の有無を知る重要な指標です。正常な排卵が起こっていない場合、自然妊娠は困難になります。基礎体温を3カ月以上記録し、パターンに異常がある場合は医師に相談しましょう。

性感染症にかかったことがある

過去に性感染症にかかったことがある女性は、不妊症のリスクが高くなる傾向があります。特に以下の性感染症は、卵管に炎症や癒着を起こし、不妊の原因となる可能性があります:

  • クラミジア感染症
  • 淋病
  • 梅毒

特にクラミジア感染症は、自覚症状が少ないまま進行し、卵管炎や骨盤内炎症性疾患を引き起こすことがあります。これらの炎症により卵管が詰まったり癒着したりすると、精子と卵子の出会いが妨げられ、不妊の原因となります。

骨盤腹膜炎を起こしたことがある

骨盤腹膜炎の既往歴がある場合、不妊になりやすくなる傾向があります。骨盤腹膜炎とは膀胱や子宮、卵管などの下腹部が炎症を起こす女性特有の病気です。

クラミジアなどの性感染症が原因となるケースもあり、子宮や子宮の周りの圧痛、性交痛、不正出血などの症状が現れます。

骨盤腹膜炎は卵管を詰まらせたり癒着を起こしたりする原因となり、結果として不妊症を引き起こす可能性があります。過去に骨盤腹膜炎の既往歴がある方は、早めに医師に相談してみてください。

子宮筋腫・子宮内膜症の診断を受けたことがある

子宮筋腫や子宮内膜症の診断を受けている女性も、不妊になる可能性があります。

子宮筋腫があると、筋腫ができている場所によって子宮の中で精子が移動したり受精卵が着床したりするのを邪魔してしまうことがあります。

また、子宮内膜症は、特にチョコレート嚢胞がある場合、卵巣予備能が低下するので注意が必要です。 妊娠を希望する子宮内膜症患者の約30%に不妊があるとされているので、早めに医師に相談することをおすすめします。

下腹部の手術を受けたことがある

盲腸(虫垂炎)や胸膜炎、または過去に帝王切開や子宮外妊娠の経験があり開腹手術をしている場合も、不妊になりやすいといわれています。

手術の後遺症によって、卵管が癒着したり、詰まったりすることがあるため、不妊の原因になる可能性があります。

もし過去に開腹手術(特に下腹部)の経験がある場合は、卵管造影検査で癒着や詰まりがあるか卵管の状態を確認してみるのもおすすめです。

喫煙の習慣がある

生活習慣によっても妊娠のしやすさは変わり、特に喫煙習慣がある人は不妊症になりやすいといわれています。喫煙は卵巣にダメージを与え、卵子の質低下をもたらしたり妊娠しても流産のリスクが高くなると考えられています。2)

喫煙によって不妊症のリスクが高くなるのは、女性だけではありません。男性も喫煙することで精子の質が悪くなるので、不妊の原因になる可能性があります。

妊娠を希望する場合は、男女ともに禁煙することもとても大切です。3)

慢性疾患の持病がある、または既往歴がある

過去に慢性疾患を患ったことがある、または現在慢性疾患の持病がある女性も、不妊症のリスクがあるといわれています。

慢性疾患とは、例えば子宮内膜症が挙げられます。その他にも、糖尿病や甲状腺機能障害、肥満症なども排卵障害を引き起こし、不妊につながると考えられているので注意が必要です。

自覚症状が無くても不妊に影響があるケースもあるので、妊娠を希望する場合は早めに医師へ相談してみましょう。

男性側が原因の場合も

不妊の原因は女性だけではなく、男性側にあるケースもあります。前述しましたが、不妊の原因の48%は男性にあるといわれています。

男性で不妊になりやすいのは、下記のタイプの人です。

  • 大人になってからおたふく風邪になり、睾丸(こうがん)が腫れた人
  • 高熱が続いたときに睾丸に痛みを感じたことがある人
  • 睾丸が小さい、または子供の頃に比べて小さくなった人
  • 睾丸の袋の表面に血管が多い人
  • 子供の頃に鼡径(そけい)ヘルニアの手術を受けたことがある人
  • 生活習慣が乱れている人
  • 肥満の人
  • 喫煙をする人

病院で不妊症の検査を受けましょう

不妊症の検査は、原因を特定し適切な治療方針を決めるために重要です。病院では様々な検査を組み合わせて、包括的に不妊の原因を調べます。
検査では女性と男性それぞれに異なる検査項目があり、月経周期に合わせて実施されるものもあります。検査結果をもとに、最適な治療法を選択することができるため、不妊症かもしれないと感じたら早めに検査を受けることをおすすめします。

病院で受けられる不妊症検査

病院では、不妊の原因を特定するために様々な検査が実施されます。女性の場合は主に以下の検査が行われます:

検査名 検査内容 実施時期
基礎体温測定 排卵の有無を確認 毎日(3カ月程度)
ホルモン検査 血液検査でホルモン値を測定 月経周期に合わせて
卵管造影検査 卵管の通過性を確認 月経終了後
超音波検査 子宮・卵巣の状態を確認 いつでも可能
子宮鏡検査 子宮内腔を直接観察 月経終了後
腹腔鏡検査 腹腔内の癒着等を確認 必要に応じて

男性の場合は精液検査が基本となり、精子の数や運動率、形態などを詳しく調べます。これらの検査により、不妊の原因を特定し、適切な治療方針を決定できます。

不妊症検査にかかる時間と期間

不妊症検査にかかる時間と期間は、検査の種類によって異なります。血液検査や超音波検査のみの場合1ヶ月、子宮卵管造影など追加の検査を行う場合は2-3ヶ月程度かかります

検査名 検査時間 結果が出るまでの期間
基礎体温測定 毎日1~2分 3カ月継続
ホルモン検査 採血5分程度 1週間程度
卵管造影検査 15~30分 当日~数日
超音波検査 10~15分 当日
精液検査 採取時間数分 1~2時間

月経周期に合わせて実施する検査もあるため、すべての検査を完了するには数カ月かかることがあります。早期に検査を開始することで、より早く原因を特定できます。

不妊症検査にかかる費用

不妊症検査の費用は、検査内容や医療機関によって異なります。基本的な検査の多くは保険適用となりますが、一部の検査は自費診療となる場合があります。

検査名 費用(目安) 保険適用
ホルモン検査 3,000~5,000円 適用
卵管造影検査 5,000~10,000円 適用
超音波検査 1,500~3,000円 適用
精液検査 3,000~5,000円 適用
AMH検査 6,000~8,000円 自費

2022年4月より、不妊治療の多くが保険適用となりました。ただし、医療機関によって費用設定が異なるため、事前に確認することをおすすめします。

自宅でも不妊症検査の一部が受けられるキットもおすすめ

病院に行く前に軽くチェックしたい、忙しくて病院に行く時間がないという方には、自宅でできる検査キットがおすすめです。これらの検査キットは、医学的に正しい方法で重要なホルモン値を測定でき、不妊症のリスクを事前に把握するのに役立ちます。
自宅での検査は、病院での本格的な検査を受ける前の第一段階として活用できます。検査結果に異常が見つかった場合は、早めに医療機関を受診することで、より早期の治療開始につなげることができます。
不妊に関する自宅検査では、特に卵巣年齢を知ることができるAMH検査が重要です。AMH(アンチミューラリアンホルモン)は卵子の残り数と相関するホルモンで、妊娠の可能性を判断する上で大切な指標となります。AMH Checkなら、登録衛生検査所で医療機関と同等の精度で測定が可能です。

AMH Check (卵巣年齢)はこちら 

より包括的に検査したい場合は、AMHに加えて排卵や体調に関わる複数のホルモンを同時に測定できるWomen's Fertility Checkが特におすすめです。病院で行う検査と同じように数多くのホルモンを対象とし、妊娠に向けた身体の状況を総合的にセルフチェックできる唯一の郵送検査となっています。


Women’s Fertility Check(ブライダルチェック)はこちら

不妊症の治療方法

不妊症を治療するときには、下記の方法で行います。

  • タイミング法:排卵に合わせて性交渉を行う治療方法 排卵誘発法:注射や内服薬によって卵巣を刺激し排卵を起こす治療方法
  • 内視鏡手術:子宮にあるポリープや筋腫を切除したり、卵管の詰まりを解消したりして、自然妊娠する確率を上げる方法
  • 人工授精:採取した精液から成熟精子を回収し、排卵に合わせて子宮内に注入する治療方法
  • 生殖補助医療:卵子を取り出して体外で受精させる体外受精や顕微授精で、難治性不妊の場合に選択される方法

自分でできる不妊症対策

自分でもできる不妊症対策がいくつかあります。

  • 生活習慣の改善
  • ストレスを減らす
  • 冷え性対策

どれも普段の生活から心がけられるという特徴がある対策ばかりなので、今後妊娠を希望している女性は日頃から意識してみてください。

生活習慣の改善

バランスの良い食事や適度な運動、規則正しい生活リズムを整えて十分な睡眠をとるなど生活習慣を改善することは、不妊症対策をするうえでとても大切なポイントです。

栄養が偏った食事をしていたり睡眠不足になったりすると、ホルモンバランスが乱れて排卵が不安定になる可能性があります。

また、喫煙や過度のアルコール摂取も妊娠しにくくなる可能性があるので、妊娠を希望する場合は避けるようにしましょう。

ストレスを減らす

不妊症対策として、ストレスを減らすことはとても大切です。ストレスによって自律神経のバランスが崩れると、ホルモンの分泌量が低下します。

その結果、排卵障害が起こる可能性があるので、なるべくストレスを溜めないようにしましょう。

不妊症治療を行うときは、治療がうまくいかないことや周囲からの言葉でストレスを感じることもあります。十分な休養を取ったり趣味を楽しんだりと、自分の好きなことをする時間を作ってうまくストレス発散できるよう心がけてみてください。

冷え性対策

冷え性に悩む女性は多いですが、身体の冷えは不妊に悪影響を及ぼす可能性があるので気を付けましょう。

身体が冷えると血流が悪化し、子宮や卵巣の機能低下を引き起こす可能性があります。

また、冷えは胎児へも悪影響があるため、妊娠後も気を付けなくてはいけません。 少しでも妊娠しやすい身体を目指すために、身体を冷やさないよう意識してみてください。おすすめの冷え性対策はこちらです。

  • 湯船に浸かる
  • 運動をする
  • 温かい飲み物を飲む
  • 冷え性を改善する漢方薬を飲む

短期間では冷え性は改善されませんが、数カ月続けていくことで徐々に身体に変化が現れます。体外から変化させる入浴や運動と、体内から変化させていく漢方薬を併用して改善していくのもおすすめですよ。

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まとめ

不妊症とは、妊娠を希望する男女が性交渉を行っているにもかかわらず、一定期間妊娠しない状態のことをいいます。

月経や基礎体温に異常がある人や性感染症・子宮筋腫・子宮内膜症などの既往歴がある人などは、不妊になりやすいといわれているので、早めに医師に相談しましょう。

これから妊娠を希望している場合は、普段の生活から不妊症対策を意識してみてください。生活習慣の改善をしたりストレスを溜めないようにしたりと、妊娠しやすい身体つくりを心がけてみましょう。

参考文献

1) 不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック 厚生労働省

2) Fenton AJ. Premature ovarian insufficiency: Pathogenesis and management. 2015https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26903753/

3) Sharma Ret al. Cigarette Smoking and Semen Quality: A New Meta-analysis Examining the Effect of the 2010 World Health Organization Laboratory Methods for the Examination of Human Semen. 2016.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27317089/

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