妊娠や出産は奇跡の連続です。特に大きな病気などがなければいつかは妊娠できると誰もが思ってしまいますが、全員が当たり前に妊娠・出産できるわけではないという厳しい現実があります。
30代に入ったら、妊娠しやすい体を意識した生活を送りましょう。ここでは、日頃の食生活や睡眠、適正体重などを紹介していきます。30代の妊娠率や流産率なども挙げているので参考にしてください。
この記事でわかること
- 妊娠しやすい体とはどんな体?
- 妊娠しやすい体を目指すためにやること
- 男性も一緒に意識したいこと
妊娠しやすい体とは
妊娠しやすい体とは、健康な体のことを指します。具体的には、
- 適正体重であること(BMI18.5〜25.0、理想は22とされ、妊娠・出産を考えると24以下が良い)
- 月経不順がなく周期が安定していること
- 冷え性がなく体温36度以上
- ストレスがなく睡眠をしっかり確保できていること
- 適切な食生活や運動が習慣になっていること
などが挙げられます。このような理想的な体に少しでも近づけるように、今のご自身に足りない部分を補うような体づくりが必要です。
30代女性の妊娠確率はどれくらい?
30代女性の妊娠確率はどのくらいでしょうか。27〜34歳女性の場合、妊娠確率は25〜40%ほどであるのに対し、35〜39歳女性では20〜30%になります。これは夫婦が同い年の場合のデータで、女性が35〜39歳、男性が5歳以上年上の場合は15〜20%まで減少します。
また流産率に関しても35歳を境に急激に増加します。米国における調査では、35歳未満の妊婦と比較し、35〜40歳の流産率は2倍、40歳以上では2.4倍に増加すると報告されています1)。年齢による違いはあれど、初産婦や経産婦による違いはないと考えられています。
【日常生活編】30代で妊活したい人がやるべきこと
30代での妊活を成功させるためには、まず日常生活の見直しから始めることが大切です。適切な生活習慣を身につけることで、ホルモンバランスが整い、妊娠しやすい体づくりの土台となります。この見出しでは、30代女性が妊活を始めるにあたり、まずやるべき基本的な生活改善のポイントをご紹介します。毎日の生活から少しずつ変えていくことが、妊娠への近道となるでしょう。
生活リズムや体のリズムを整えよう
規則正しい生活リズムを整えることは、妊娠しやすい体づくりの基本です。毎日決まった時間に起床・就寝し、バランスの良い食事を適切なタイミングで摂ることで、体内時計が整い、ホルモンバランスも安定します。 特に質の良い睡眠は、生殖ホルモンの分泌に大きく関わっています。適度な運動習慣を取り入れることも、血行促進やストレス解消につながり、生殖機能の向上に役立ちます。30代の体は20代と比べて回復力が低下するため、より意識的に生活リズムを整える必要があります。日々の小さな習慣の積み重ねが、妊娠しやすい体づくりの第一歩となるでしょう。
自分の身体の状態を知ろう
妊活を効率的に進めるためには、自分の体の状態を把握することが重要です。月経周期の記録をつけ、排卵日を予測できるようになりましょう。基礎体温を毎日測ることで、ホルモンの変化や排卵の有無も確認できます。 ホルモンバランスは、さまざまな要因で乱れることがあります。30代になるとホルモンバランスが変化しやすくなるため、自分の体調の変化に敏感になることが大切です。疲労やストレスのサインを見逃さず、無理をしないことも妊活成功の鍵となります。 より詳しく自分のホルモン状態を知りたい場合は、自宅でできるホルモン検査キットを利用するのも有効です。canvasのWomen's Fertility Check(ブライダルチェック)やAMH Check(卵巣年齢)は、専門的な数値を確認できるため、自分の体の状態を客観的に把握するのに役立ちます。自分の体の現状を知ることで、効果的な妊活プランを立てられるでしょう。
パートナーとの妊活に関する話し合いをしておこう
妊活は二人三脚で進めるものです。パートナーと妊活について率直に話し合い、お互いの考えや希望を共有しましょう。具体的には、欲しい子どもの人数、 子どもを持ちたいタイミング、妊活にかける期間、仕事との両立方法、妊活のために取り入れたい生活習慣の変更などについて話し合うことが大切です。 話し合いの際は、一方的に意見を押し付けるのではなく、お互いの気持ちを尊重する姿勢が重要です。特に女性は「早く妊娠しなければ」というプレッシャーを感じやすいものです。そのようなストレスが妊娠を遠ざけることもあるため、パートナーからの精神的サポートは非常に価値があります。 また、妊活中に気をつけるべき生活習慣についても共有しましょう。禁煙や適度な飲酒、バランスの良い食事など、二人で協力して取り組める具体的な行動計画を立てることで、モチベーションも維持しやすくなります。男性の精子の質は約3ヶ月かけて改善されるため、男性も積極的に生活改善に取り組むことが妊活成功への近道となります。
【妊活編】30代で妊活したい人がやるべきこと
30代の妊活は、具体的で効率的なアプローチが重要です。ここでは、基礎体温の測定から排卵日の特定、適切なタイミング法まで、30代女性が実践すべき具体的な妊活テクニックを紹介します。
毎朝基礎体温を計測して記録しよう
基礎体温の測定は、妊活において最も基本的かつ重要な習慣です。基礎体温とは、十分な睡眠をとった後、起床時に体を動かす前に測定する体温のことで、女性ホルモンの変化によって周期的に変動します。この変動パターンを記録することで、排卵の有無や排卵日の予測が可能になります。 測定方法は簡単です。毎朝、目覚めたらすぐに体を動かさないまま、基礎体温計を舌の下に挿入して測定します。一般的な体温計よりも精度の高い基礎体温専用の体温計を使用しましょう。最近では、スマートフォンと連動するタイプの基礎体温計も普及しており、アプリで自動的にグラフ化してくれるので便利です。 測定は毎日同じ時間帯に行うことが理想的です。また、測定値に影響を与える可能性のある要因(睡眠不足、飲酒、夜更かしなど)があった場合は、記録に残しておくとよいでしょう。基礎体温表をつけることで、自分の体のリズムや排卵パターンが見えてくるだけでなく、将来的に産婦人科を受診する際の貴重な資料にもなります。
排卵日を予測してタイミングをとろう
妊娠の確率を高めるためには、排卵日を把握し、適切なタイミングで夫婦生活を持つことが大切です。基礎体温表から排卵日を見つけるには、低温期から高温期への移行点を見つけるのがポイントです。一般的に、低温期が続いた後、体温が0.3〜0.5℃上昇し始める直前が排卵日と考えられます。 具体的な見方としては、まず基礎体温表の中で体温が明らかに上昇している部分を見つけます。この上昇の前日または前々日が排卵日である可能性が高いです。排卵が起こったかどうかを確認するには、高温期が3日以上継続しているかを確認します。高温期が続かない場合は、その周期で排卵が起こっていない可能性があります。 より正確に排卵日を予測するには、基礎体温に加えて排卵検査薬を使用するのも効果的です。また、子宮頸管粘液の状態も排卵の目安になります。排卵前は粘液量が増加し、生卵の白身のような透明で伸びやすい状態になります。卵子の寿命は約24時間と短いのに対し、精子は女性の体内で約3〜5日生存可能です。そのため、排卵日の2〜3日前から排卵日当日までのタイミングをとるのが理想的です。
タイミングがわからない場合は産婦人科へ行こう
基礎体温測定や排卵検査薬を使ってもタイミングがわからない場合や、正しいタイミングで試みているのに6ヶ月程度妊娠しない場合は、産婦人科の受診を検討しましょう。30代前半では約6ヶ月、35歳以上では3ヶ月程度を目安に受診することをおすすめします。 産婦人科では、超音波検査によって卵胞の発育を観察したり、血液検査でホルモン値を測定したりすることで、より正確な排卵のタイミングを把握できます。また、子宮や卵管の状態も確認でき、妊娠を妨げる要因がないかチェックすることができます。 医師の指導のもとで行うタイミング法は、排卵日を特定し、最適なタイミングでの夫婦生活を勧める治療法です。必要に応じて排卵誘発剤の処方や、人工授精などのステップアップも検討できます。産婦人科に行くことに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、早めの受診が妊娠への近道になることもあります。まずは2〜3ヶ月分の基礎体温表を記録してから受診すると、医師の診断に役立ちます。
妊活を初めてどれくらいしたら産婦人科に行けばよい?
産婦人科を受診するタイミングは年齢によって異なります。一般的に35歳未満の方は6ヶ月間、35歳以上の方は3ヶ月間妊活してみて妊娠しない場合に受診することをおすすめします。 産婦人科を受診する前に、できれば2〜3ヶ月間ほど基礎体温を測定して記録しておくとよいでしょう。この記録は、医師があなたの月経周期や排卵の有無を判断する重要な情報となります。また、過去の妊娠・出産歴や、現在の生活習慣などもメモしておくと、より的確な診察が受けられます。ただし、基礎体温の記録にこだわって受診を遅らせる必要はありません。妊活に取り組んでもなかなか妊娠しない場合は、受診のできるタイミングで早めに産婦人科を受診しましょう。 産婦人科の受診に不安を感じる方は、まず自宅でできるホルモン検査キットを利用してみるのもよいでしょう。Women's Fertility Check(ブライダルチェック)は、自宅で簡単に女性ホルモンをチェックできるキットです。検査結果には医師のコメントが付き、今後の妊活の参考になります。また、AMH Checkで卵巣年齢を知ることで、自分の妊娠力を客観的に把握することもできます。こうした情報をもとに、必要に応じて産婦人科受診を検討すると安心です。 妊娠しやすい体づくりをしよう! 妊娠しやすい体づくりのために、具体的に取り組めることを解説します。日常に取り入れやすいことから少しずつ始めてみましょう。ただし、必ず妊娠できる方法というわけではありません。あくまで妊娠しやすい体づくりと割り切って取り組んでみてください。
妊娠しやすい体づくりをしよう!
妊娠しやすい体づくりのために、具体的に取り組めることを解説します。日常に取り入れやすいことから少しずつ始めてみましょう。ただし、必ず妊娠できる方法というわけではありません。あくまで妊娠しやすい体づくり、着床しやすい体づくりと割り切って取り組んでみてください。
【生活習慣の改善】健康的な食生活を
健康的な食生活を送ることは極めて重要です。特に妊娠前からできることのひとつに『葉酸の摂取』が挙げられます。葉酸は神経管閉鎖不全の予防に有効と言われていますが、最近の研究では先天性心疾患や腹壁破裂、口唇口蓋裂および自然流産を減少するという報告があります1)。
健康な精子や卵子は、健康な体から作られます。脳が働き、卵巣が機能するのも、全てわたしたちが取った栄養によるものなのです。1日3食、なるべく決まった時間にバランスの良い食事を意識しましょう。
【生活習慣の改善】ゴールデンタイムに眠る
睡眠は、脳や体の疲労回復、ストレス発散、老化防止など様々な役割を果たしています。妊娠を望んでいる女性にとっては、睡眠は妊娠のためのホルモンが分泌される大事な時間です。
特に、眠り始めてから3時間が「睡眠のゴールデンタイム」と言われています。この時間に深い眠りにつけるように、カフェインやアルコールの摂取を見直しましょう。
寝る前のスマホは睡眠の質を落とすため、寝る30分前で切り上げると深い眠りにつきやすくなります。
【生活習慣の改善】適度な運動
適度な運動は、新陳代謝を促し、ストレスを解消するのに効果的です。運動によって血液循環が良くなると、骨盤内の血液の滞りが解消され生殖器の働きが良くなります。
「運動が大事」と聞いて、ジムに入会すると考える方もいますが、日常生活の中でできる範囲で構いません。日常の運動の中でも散歩やジョギング、ヨガなどがおすすめですが、あなたが毎日少しでも続けられるものをチョイスしましょう。
運動に時間を割くことが難しい場合は、お風呂上がりのストレッチや腹筋運動などでも十分効果はあります。
適正体重に近づく
ご自身の適正体重、BMIについてご存じですか。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出されます。150cm、45kgの方は45÷1.5÷1.5でBMIが20と計算できます。一般的に22が理想とされ、BMIが18.5未満が低体重、18.5以上25未満が標準、25以上が肥満と判定します2)。BMIは、高くても低くても妊娠率が低下し流産率が上昇することがわかっています。
また、出生児体重には、妊娠中の体重増加よりも妊娠前のBMI値が強く影響することがわかっています3)。適正体重へ近づくことは、妊娠しやすい体づくりだけでなく健康なこどもを出産するためにも重要と言えます。
ホルモンバランスを整える
妊娠の確率を上げるためには、月経周期が安定していることが大事です。そのためには、ホルモンバランスを整えましょう。過度なストレスは、女性ホルモンの分泌に関わる視床下部や脳下垂体の働きに影響を及ぼしホルモンバランスを乱します。
妊活している間は、毎月の月経に一喜一憂したり、生活習慣を変えることにこだわりすぎてしまったりと、ストレスをためがちです。それが原因で月経周期を乱しては本末転倒となってしまいますので、妊活中は無理をしすぎることなくホルモンバランスを整えることに集中しましょう。
ホルモンバランスに問題がないかを簡単に調べるには、自宅でできるホルモン検査キットを活用することもできます。ホルモンバランスを調べるには月経中に検査をする必要がありますが、自宅でできるものであればスケジュール調整がしやすく簡単です。
自宅でできるホルモン検査canvasは、自宅にいながら、チェックに必要な全ての項目を医療機関と同等精度で検査ができる日本で唯一の検査です。結果は全て医師がレビュー、コメントをしています。
<Women's Fertility Check(ブライダルチェック)>
「Women's Fertility Check(ブライダルチェック)」は、女性の妊娠力や生殖機能に関連するホルモンをチェックするキットです。
ホルモンレベルの測定により、排卵のタイミングや卵巣の機能など、妊娠に関連する重要な情報を得ることができます。
▶canvasの検査キットはこちら。
【温活】体を冷やさない
体が冷えていると、血行が悪くなり卵巣に酸素や栄養が届きにくくなり、卵巣機能が低下しやすくなります。そのため、妊娠しやすい体づくりのために体を冷やさないように注意しましょう。特に平熱が36度以下の方は冷え性の傾向にあるため、注意が必要です。
冷えを解消するためには、まずはお風呂にしっかりつかりましょう。ぬるま湯にみぞおちあたりまでつかる半身浴がおすすめです。湯船に30分以上しっかりつかることで、冷えを改善できるだけでなく、発汗によってストレス解消にもつながります。好きな香りの入浴剤を入れるのもおすすめですよ。
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その他にも温活の方法をご紹介
サプリメントや漢方薬で体内環境を整える
バランスの良い食事を続けていても、適正カロリーの中で全ての栄養素を賄うことは難しいため、不足しがちな栄養素は存在します。そのため、必要に応じたサプリメントで不足した栄養素を補いましょう。特に、妊活中に意識したい成分は亜鉛です。
亜鉛は、細胞分裂や着床に関係するホルモン合成に関与すると言われています。亜鉛は体内で合成できないため外から摂取する必要があります。他にも、体内の血液や水分の不足、めぐりの悪さを調節するために当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)という漢方薬が用いられることがあります。
男性も妊娠しやすい体づくりを
妊娠しやすい体づくりは、女性だけががんばるものではありません。パートナーである男性も一緒に取り組む必要があります。
健康な精子を作り出すためには、男性も健康な体づくりを意識しましょう。栄養バランスの整った食事、規則正しい睡眠、ストレスの少ない生活など、少しずつご自身の生活に取り入れてください。
たばこの抽出液で精子の運動機能を検討した結果、精子の運動機能が低下し、精液中の活性酸素が上昇したと報告されています4)。禁煙は、男性が積極的に取り組むべきことと認識しましょう。
まとめ
30代からでも妊娠しやすい体づくりはできます。しかし、30代後半になると妊娠率は低下し、流産率は上昇します。今回紹介している方法は、必ず妊娠できる方法ではありません。実践してすぐ妊娠出来るひともいれば何度も何度も来てしまった月経に涙するひともいるでしょう。
しかし、妊娠しやすい体づくりや着床しやすい体づくりを通じて、自分自身の生活を見直すことは決して無駄にはなりません。パートナーとより良い関係性を築き、ストレスを溜めない程度に妊娠しやすい健康な体を目指しましょう。
参考文献
1) 古川誠志,「高齢妊娠に伴う諸問題」,杏林医会誌,47巻1号, 2016 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyorinmed/47/1/47_77/_pdf
2) 久保田修ら,「生活習慣とBMIの関連について-健診受診者6,826人の集計より-」,人間ドックVol.25,No.4,2010 https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/25/4/25_626/_pdf/-char/ja
3) 野村恭子ら,「妊娠適齢期の女性の栄養問題と妊娠中の適正体重」,日衛誌,73,2018 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjh/73/1/73_85/_pdf
4) 田中雄一郎ら,「P-269喫煙と精子機能:タバコ抽出液の精子機能におよぼす影響」,日産婦誌51巻臨時増刊,1999 https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_10703885_po_ART0002409344.pdf?contentNo=1&alternativeNo=