プレ更年期とは、本格的な更年期に入る前の移行期で、女性ホルモンエストロゲンの変動により心身に様々な症状が現れる時期です。忙しい現代の女性は仕事や家庭の責任が重く、症状に気づかずに我慢してしまいがちです。しかし、この時期の特徴を正しく理解し、セルフチェックと適切な対策を行うことで、より快適に過ごせるようになります。
この記事では、プレ更年期の基本知識から、簡単にできるセルフチェックリスト、具体的な症状の解説、そして日常生活で実践できる効果的な対策方法まで、30代後半~40代半ばの女性が知っておきたい情報を包括的にお伝えします。
この記事でわかること
- プレ更年期とは
- プレ更年期のセルフチェックリスト
- プレ更年期の主な症状
- プレ更年期について
- 更年期とプレ更年期の違い、判断方法は?
- プレ更年期の対策、ケア方法
プレ更年期とは
プレ更年期とは、30代後半から40代半ばの女性に現れる、更年期移行期前の身体的・精神的変調の時期を指します。この時期は卵巣機能が徐々に低下し始め、女性ホルモンエストロゲンの分泌量が不安定になることが特徴です。プレ更年期では、完全に月経が停止する更年期とは異なり、月経周期に多少の変動はあるものの基本的には月経が継続している状態です。そのため、ホルモンバランスの変化による症状があっても見過ごされがちな時期でもあります。
プレ更年期のセルフチェックリスト
以下のチェックリストを活用して、自分がプレ更年期に該当するかを客観的に判断してみましょう。複数の項目に該当する場合は、プレ更年期に入っている可能性があります。30代後半から40代半ばの女性で、最近これまでとは異なる体調の変化や精神的な変化を感じている方は、セルフチェックの材料として活用してください。
身体的な症状
- 十分な睡眠を取っても疲労感が残り、体が重く感じる
- 肩や首のこりが以前より強くなり、マッサージをしても改善しにくい
- 前触れもなく顔がほてったり、急に大量の汗をかくことがある
- 特に激しい運動をしていないのに、心臓がドキドキすることがある
- 夜なかなか眠りにつけない、または夜中に何度も目が覚める
- 月経周期がこれまでより短くなったり長くなったりする
- 月経量が以前より多くなったり少なくなったりする
- 頭痛の頻度が増え、鎮痛剤を使用する機会が多くなった
- 膝や腰、手首などの関節に痛みやこわばりを感じる
精神的な症状
- 普段は気にならないことでも、強いイライラを感じてしまう
- 特に明確な理由がないのに気分が沈み、やる気が起きない
- 仕事や家事に集中できず、物忘れやミスが増えた
- 感情のコントロールが難しく、涙もろくなった
- 漠然とした不安感や焦燥感に襲われることがある
- 以前は楽しめていた趣味や活動に興味を持てなくなった
プレ更年期の主な症状
プレ更年期では、エストロゲンの分泌量が不規則になることで、身体面と精神面の両方にわたって多様な症状が現れます。これらの症状の強さや現れ方には大きな個人差がありますが、主要な症状について理解を深めておくことで、適切な対応策を講じることができます。ここからは、プレ更年期に特によく見られる症状について、それぞれの特徴やメカニズム、対処のポイントを詳しく解説していきます。これらの症状は一過性のものが多いですが、生活の質を維持するためには適切なケアが重要です。
ひどい肩こりや強い倦怠感・だるさ
プレ更年期では、マッサージや湿布では改善されない頑固な肩こりや、一日中続く重い倦怠感に悩まされることがあります。これはエストロゲンの減少により血流が悪化し、筋肉の緊張や疲労物質の蓄積が起こりやすくなるためです。肩こりは首から背中、時には腕にまで広がることがあり、頭痛や眼精疲労の原因となる場合もあります。倦怠感は休日にゆっくり休んでも完全には回復せず、「体が鉛のように重い」「やる気が出ない」と表現されることが多い症状です。これらの症状は長時間のデスクワーク、運動不足、精神的ストレスによってさらに悪化する傾向があります。定期的な軽い運動やストレッチ、入浴による血行促進、マインドフルネスやヨガなどのストレス管理法の実践が症状改善につながります。
月経不順
プレ更年期では、これまで規則的だった月経周期に変化が生じ、周期が短くなったり長くなったり、月経量にも変動が見られることがあります。これはエストロゲンとプロゲステロンの分泌バランスが不安定になることで、排卵のタイミングや子宮内膜の状態に影響が出るためです。具体的な変化としては、月経周期が24日以下に短縮する頻発月経や、逆に39日以上に延長する稀発月経が見られます。また、月経量が普段より多くなる過多月経や、逆に少量で終わってしまう過少月経も特徴的です。月経と月経の間に少量の出血が起こる中間期出血も、プレ更年期でよく見られる症状の一つです。ただし、急激な月経量の増加や月経が2週間以上続く場合は、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患の可能性もあるため、早めの婦人科受診が必要です。
不眠
プレ更年期では、布団に入ってもなかなか眠りにつけない入眠困難や、夜中に何度も目が覚める中途覚醒といった睡眠障害が現れやすくなります。これはエストロゲンの減少が睡眠リズムを調節するメラトニンの分泌に影響するためです。睡眠障害の背景には、夜間のホットフラッシュによる体温上昇、仕事や家庭のストレスによる精神的緊張、将来への不安感による思考の活性化などが複合的に関与しています。十分な睡眠が取れない状態が続くと、日中の集中力低下、イライラの増大、免疫力の低下など、プレ更年期の他の症状も悪化させる悪循環に陥りがちです。寝室の温度・湿度の適切な調整、就寝前のスマートフォンやパソコンの使用制限、深呼吸や軽いストレッチなどのリラクゼーション法の実践が効果的です。
身体のほてり・ホットフラッシュ
プレ更年期では、前触れもなく顔や首、胸元が急激に熱くなるホットフラッシュが起こることがあります。これはエストロゲンの減少により、体温調節を司る視床下部の機能が不安定になることが主な原因です。ホットフラッシュは通常3分から10分程度続き、同時に大量の発汗を伴うことが特徴的です。特に夜間に発生すると、寝汗で目が覚めてしまい、睡眠の質が著しく低下する場合があります。日中に起こる場合も、会議中や外出先での突然の発汗は精神的なストレスにつながりがちです。症状が頻繁に起こる場合は、吸湿性・速乾性に優れた下着の着用、首元を冷やせる携帯用冷却グッズの活用、室温の調整などの対策が効果的です。
動悸・めまい
プレ更年期では、階段を上ったわけでもないのに心臓がドキドキしたり、立ち上がった瞬間にふらつくようなめまいを感じることがあります。これはホルモンバランスの変化が自律神経系に影響を与え、循環器系の調節機能に乱れが生じるためです。動悸は安静にしているときでも突然起こることがあり、胸の圧迫感や息苦しさを伴う場合もあります。めまいは特に起立時や体位変換時に起こりやすく、転倒のリスクも考慮する必要があります。これらの症状が持続する場合や、胸痛・呼吸困難を伴う場合は、心疾患や他の疾患の可能性も否定できないため、循環器内科や婦人科での詳しい検査を受けることが重要です。
プレ更年期について
プレ更年期の具体的な症状について理解を深めたところで、さらに詳しくプレ更年期という時期の特徴や背景について解説していきます。プレ更年期の根本的な原因やメカニズム、更年期との明確な違いを知ることで、より適切で効果的な対処法を見つけることができるでしょう。また、プレ更年期になりやすい人の生活習慣や体質的特徴、症状で困った時の適切な受診先についても詳しく紹介しますので、自分の現在の状況と照らし合わせながら参考にしてください。
プレ更年期の原因
プレ更年期の原因は大きく分けて2つあります。
- ホルモンバランスの乱れ
- 自律神経の乱れ
ホルモンバランスの乱れは、女性ホルモンのエストロゲンが減少することを指します。プレ更年期ではエストロゲンが徐々に減少しているため、月経は定期的に起こっていることが多いです。
ホルモンバランスの乱れに伴い、ホルモンの分泌の指令を出す脳の機能のバランスが崩れます。そのため、自律神経の乱れが起きやすくなります。
さらに、30代~40代は仕事や子育て、親の介護など、責任も重く忙しい人が多い年代です。ストレスも多く、自律神経が乱れやすい環境にあります。
これらの要因が重なることで、プレ更年期を引き起こす原因となります。
更年期とプレ更年期の違い、判断方法は?
更年期とプレ更年期の違いとして、症状を発症する年齢に違いがあります。
更年期の症状は、閉経の前後5年間で一般的に45~55歳ごろに起こります。一方、プレ更年期は更年期前の30代後半から40代前半ごろに症状が出るとされています。
また、更年期では女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少するため、以下のような更年期特有の症状が出ます。プレ更年期とは異なる症状も出るため、判断する基準になるでしょう。
更年期で特に強く出る症状を示します。
- ほてり、寝汗、発汗
- 強いイライラや抑うつ感
- 月経不順、不正出血
- 関節痛
プレ更年期では、エストロゲンが徐々に減少するため強い疲労感や肩こりなどの症状が主です。
ただし、症状は人によって異なり、プレ更年期であっても更年期の症状が出る人もいます。自己判断せず、医療機関を受診するようにしましょう。
プレ更年期になりやすい人の特徴はある?
プレ更年期になりやすい人には、生活習慣や体質、性格面でいくつかの共通した特徴が見られる傾向があります。特にストレスの多い環境にある人や、不規則な生活パターンを送っている人は注意が必要です。生活習慣面では、慢性的な睡眠不足が続いている人、過度なダイエットや偏った食生活を続けている人、運動不足で筋力が低下している人、喫煙や過度の飲酒習慣がある人などが挙げられます。また、性格的には完璧主義で責任感が強すぎる人、感情を内に溜め込みやすい人、ストレス発散が苦手な人も、ホルモンバランスが乱れやすい傾向があります。さらに、家族歴として母親や姉妹に更年期症状が重かった人がいる場合も、体質的にプレ更年期の影響を受けやすい可能性があります。これらの特徴に多く該当する人は、早めの生活習慣の見直しや予防的なケアを心がけることが大切です。
プレ更年期は何科に受診したら良い?
プレ更年期の症状で困っている場合、婦人科を受診するのが良いでしょう。
月経に関する症状がある場合、女性ホルモンの値の採血や治療としてホルモン剤の使用も検討することがあるため、婦人科を受診するのがおすすめです。
また、プレ更年期とは別の病気が隠れていることもあるため、自分で判断してしまうのは注意が必要です。プレ更年期の症状が続いたり、症状が重くて悩んでいる場合、医療機関で診断してもらいましょう。
最近では、更年期外来も設置されていたり、プレ更年期についても相談ができる医療機関もあるため、選ぶ際の参考にしてください。
プレ更年期の対策、ケア方法
プレ更年期の主な原因はホルモンのゆらぎや、ゆらぎからくる自律神経の乱れであるため、生活習慣の改善によって症状を軽くすることが期待されます。また、症状の程度によっては薬の使用も治療方法の1つです。
続いては、プレ更年期の対策、ケア方法について紹介します。
良質な睡眠
良質な睡眠をとることは、プレ更年期のケア方法の1つです。
プレ更年期の症状で睡眠障害が出る人もいますが、睡眠不足が続くと体だけでなく、精神的にも影響が出ることがあります。その結果、気分の落ち込みやうつ症状などが出やすくなります。
とはいえ、30~40代の女性は、仕事や育児などで忙しく睡眠時間が十分でない人も多いです。睡眠時間をしっかりと確保することを心がけ、精神的な症状につながらないようケアしましょう。
有酸素運動を取り入れる
有酸素運動などの適度な運動は、プレ更年期の原因の一つである自律神経の乱れを整える効果が期待されます。
通勤時に普段より多めに歩くようにしたり、早歩きするのもおすすめです。このとき、いつもより脈拍が速くなる状態を意識的に作るのがポイントです。
運動が苦手な人は自宅で簡単にできるスクワットなどのストレッチから始めてみたり、10分程度のウォーキングを週に3回ほど取り入れてみるとよいでしょう1)。
さらに、プレ更年期を知ったうえで運動を習慣にすると、イライラなどの心の症状も改善したという研究結果もあります。理解を深めて、有酸素運動にもチャレンジしてみてください2)。
食事を見直す
栄養バランスを整え食事を見直すことは、プレ更年期の症状に悩んでいる人におすすめです。
和食によく使われる大豆には、イソフラボンが含まれていています。イソフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用があることで有名です3)。
また、全粒粉や玄米などの全粒穀物や野菜、果物などを積極的に食べると、ストレスの自覚が減少するという研究もあります3)4)5)。
プレ更年期のケアができる食材は様々ありますが、きびしい食事制限はかえってストレスとなってしまうため、逆効果です。無理なくできる範囲で食事の見直しをすることをおすすめします。
気がついたときだけでも、肉を大豆へ、白米を玄米へ置き換えるとよいでしょう。
規則正しい生活習慣を心がける
プレ更年期の症状の原因である自律神経の乱れを整えるためには、規則正しい生活習慣を心がけることが効果的です。
人間の体内時計は24時間より長く設定されています。体内時計をリセットするために、朝起きてから日の光を浴びる必要があります。生活リズムがとりやすいよう、食事の時間や寝る時間なども日によって大きく変動しないように心がけてください。
できるだけ規則正しい生活習慣を身につけて、プレ更年期を乗り切りましょう。
ストレスを解消する
ストレスを解消できるように工夫することもプレ更年期の対策になります。
30代後半から40代前半の女性は、仕事や育児、親の介護など様々なことに責任があり、ストレスが多い状態です。女性ホルモンの変化もある中で、ストレスによってさらに自律神経が乱れやすい環境にあります。
そのため、ストレスを減らせるように工夫することが大切です。原因が明確な場合は、その状況から離れることが1つの対処法です。
ただし、自分ではどうしようもないストレスの場合、がんばって改善しようとするとかえって不満がたまることもあります。無理せずにできる範囲でストレスを解消できるよう心がけましょう。
周りの人に理解してもらう
周りの人に症状を理解してもらうことも、プレ更年期とうまく付き合うための工夫の1つです。
同年代であれば同じようなプレ更年期やPMSなど、女性特有のつらい症状を我慢している女性は少なくありません。プレ更年期は一目見てわかるような症状は少なく、だるさや肩こりなど本人にしかわからない症状が多くあります。
まずは自分自身でプレ更年期の原因や症状、治療方法について理解し、周囲にしっかり伝えて理解してもらうことも重要です。
さらに、パートナーや家族などに共有して理解してもらうことがおすすめです。一緒に対応方法を考えることで安心感が生まれてストレスが減るため、症状が軽くなる可能性がありますよ。
ピルを服用する
ピルを服用することで、プレ更年期症状の改善が期待できます。
低用量ピルを服用して減少したエストロゲンを補充することで、プレ更年期におこる不調を改善します。
「ピルで太ってしまうのでは」と心配している人もいますが、プレ更年期の治療で用いられる低用量ピルには体重を増加させる作用はありませんので、ご安心ください。
また、ピルを服用した後も、服用していない人と比べて妊娠確率が下がることもありません。
ただし、ピルには血栓症のリスクがあります。加齢とともに血栓症のリスクが高まるため、ピルを服用するのが適切かは医師に確認する必要があります。婦人科などの医療機関を受診して相談するようにしましょう。
漢方薬を服用する
プレ更年期の症状には、女性ホルモンのバランスを整える漢方薬の服用も有効です。漢方薬は、体質や生活習慣などから、体の内側から緩やかに症状を改善します。漢方薬には様々なものがありますが、プレ更年期に有効な漢方薬は以下のとおりです。
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン):肩こり、イライラ、不眠など
- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):強い肩こり、多汗など
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):冷え、めまい、頭重感など
- 桃核承気湯(トウカクジョウキトウ):のぼせ、便秘、イライラ、興奮など
プレ更年期の症状には個人差があり、症状にあった漢方薬の服用が必要です。漢方薬はゆっくり症状を改善してくれるので、ピルなどと比較して生活に取り入れやすいのが特徴です。少しでも 症状を軽くしたいという人は、ぜひ医師や薬剤師に相談してみてください。
また、医療機関に行かずにネットで漢方を購入することができます。LINEを使って簡単な問診に答えるだけで、無料で悩みや体質に合ったオーダーメイド漢方の紹介を受けられます。
忙しくて医療機関を受診する時間がない女性でも、オンラインで購入できるのが便利です。漢方薬局よりも価格が抑えられており、長期的に続けて利用しやすいのも魅力です。
購入後にもLINEで薬剤師に体の不調や漢方について気軽に相談ができます。
まとめ
プレ更年期の症状で悩んでいる女性は多く、プレ更年期の原因や治療法を知ることが対策につながります。
プレ更年期の主な原因は、ホルモンバランスや自律神経の乱れです。家でできるケア方法は、質の良い睡眠や規則正しい生活を心がけることや、周りの人に理解してもらえるように工夫することなどがあります。薬を使った治療法は、ピルや漢方などがあります。
最近では、プレ更年期かどうかについてのセルフチェックもできるため、いつもと違う症状が出てきたときに試してみてください。
軽度の場合は家でできるケアで改善することもあるため、プレ更年期の症状が軽いうちから適切な対処をすることが大切です。プレ更年期の症状で悩んでいる人は、婦人科など医療機関を受診しましょう。
参考文献
1) Can walking exercise programs improve health for women in menopause transition and postmenopausal? Findings from a scoping review.Menopause. p952-963.2020 http://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32404793/
2) 宮内清子.更年期女性に対する健康教育に関する過去10年間の文献検討.p7.2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/17/1/17_1_3/_pdf
3) Mark Messina.Soy foods, isoflavones, and the health of postmenopausal women.2014 https://academic.oup.com/ajcn/article/100/suppl_1/423S/4576564
4) Liu、Zhao-min PhD.Associations between dietary patterns and psychological factors: a cross-sectional study among Chinese postmenopausal women.2016 https://journals.lww.com/menopausejournal/Abstract/2016/12000/Associations_between_dietary_patterns_and.7.aspx
5) Liu、Zhao-min PhD.Associations between dietary patterns and psychological factors: a cross-sectional study among Chinese postmenopausal women.2016 https://journals.lww.com/menopausejournal/Abstract/2016/12000/Associations_between_dietary_patterns_and.7.aspx