妊活でホルモン検査はなぜするの?検査の概要やホルモン検査で分かること

この記事の監修者

前田 裕斗

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

妊活を始めるにあたって、「ホルモン検査って本当に必要なの」「どんな検査をするのか不安」と感じていませんか。妊活におけるホルモン検査は、妊娠に向けた身体の状態を正確に把握するために重要な役割を担っています。
ホルモン検査では、エストロゲンやプロゲステロンなど妊娠に関わる重要なホルモンの値を測定し、排卵機能や卵巣の状態を詳しく調べることができます。検査結果により、個人に適した妊活プランを立てることが可能になり、効率的な妊活につながります。この記事では、妊活で行うホルモン検査の概要から具体的な検査内容、費用まで、不安を解消できる情報をお伝えします。
この記事でわかること

  • ホルモン検査とは
  • ホルモン検査で何がわかるの?
  • ホルモン検査の種類と調べる内容
  • ホルモン検査をするにあたって気になること
  • ホルモン検査はご自宅のセルフでも検査ができる

ホルモン検査とは

ホルモン検査とは、血液検査によって体内のホルモン濃度を測定し、生殖機能の状態を調べる検査です。妊活や不妊治療において、ホルモン検査は妊娠に向けた身体の準備状況を正確に把握するために欠かせない検査となっています。
妊活や不妊治療でホルモン検査が活用される理由は、妊娠に関わる複数のホルモンが正常に分泌されているかを確認できるためです。卵胞の成熟や排卵、着床に至るまでの一連のプロセスは、エストロゲンやプロゲステロンなどのホルモンが複雑に連携して行われています。
検査により、排卵障害や黄体機能不全などの妊娠を妨げる要因を早期に発見でき、適切な治療方針を立てることが可能になります。また、卵巣の機能状態や卵子の残存数の目安を知ることで、妊活のタイミングや方法を個人に合わせて調整できるというメリットがあります。

ホルモン検査で何がわかるの?

妊活や不妊治療で行うホルモン検査では、排卵機能の状態、卵巣の機能、妊娠に向けた身体の準備状況などを詳しく調べることができます。これらの情報により、妊娠しやすい身体づくりに向けた具体的なアプローチを検討できるようになります。
具体的には、正常な排卵が行われているかの確認、卵巣に残っている卵子数の推定、ホルモンバランスの乱れの有無、月経周期の安定性、着床に必要な子宮内膜の状態などが分かります。また、甲状腺ホルモンやプロラクチンの値から、妊娠に影響する可能性のある疾患の早期発見も可能です。
これらの検査結果をもとに、医師は個人の状況に応じた治療計画を立て、排卵誘発剤の使用やタイミング指導、人工授精、体外受精などの治療方法を提案します。早期にホルモンの状態を把握することで、効率的で安全な妊活を進めることができるのです。

ホルモン検査の種類と調べる内容

妊活で行うホルモン検査では、妊娠に関わる6つの主要なホルモンを測定します。それぞれのホルモンには特定の役割があり、検査結果により排卵機能や卵巣の状態を総合的に評価できます。これらのホルモン値を組み合わせて分析することで、個人に最適な妊活プランを立てることが可能になります。

1. エストロゲン(卵胞ホルモン)

エストロゲンは卵胞の成熟と子宮内膜の増殖を促進する重要な女性ホルモンです。月経周期の前半に卵巣から分泌され、妊娠に向けた身体の準備を整える役割を担っています。
エストロゲンの検査では、卵胞の発育状況や卵巣機能の状態を評価できます。値が低い場合は卵巣機能の低下や更年期の兆候を、逆に高すぎる場合は多嚢胞性卵巣症候群などの可能性を示唆します。適正な値であることで、質の良い卵子の成熟と排卵が期待できるため、妊活における重要な指標となります。

2. プロゲステロン(黄体ホルモン)

プロゲステロンは排卵後に分泌され、着床に適した子宮内膜を維持するホルモンです。妊娠の成立と継続に欠かせない役割を果たし、「妊娠ホルモン」とも呼ばれています。
プロゲステロンの検査により、排卵が正常に行われているかを確認でき、黄体機能不全の診断も可能です。値が低い場合は着床障害や流産のリスクが高まる可能性があり、ホルモン補充療法などの治療が検討されます。また、基礎体温の高温期を維持する働きもあるため、妊娠初期の安定にも重要なホルモンです。

3. FSH(卵胞刺激ホルモン)

FSHは脳下垂体から分泌されるホルモンで、卵巣内の卵胞の成熟を促進する働きがあります。月経周期の調節において中心的な役割を果たし、排卵に向けた準備を整えるために重要です。
FSH値が高い場合は卵巣機能の低下を示し、閉経が近づいている可能性や卵子の質の低下を示唆します。逆に低すぎる場合は、多嚢胞性卵巣症候群やストレスやダイエットによる無月経などの可能性があります。年齢とともに数値は上昇する傾向があるため、妊活のタイミングを判断する重要な指標として活用されています。

4. LH(黄体形成ホルモン)

LHは排卵を直接的に引き起こすホルモンで、排卵日の予測に重要な役割を果たします。月経周期の中頃に急激に分泌量が増加し、約36時間以内に排卵が起こることが知られています。
LH検査により排卵のタイミングを正確に把握でき、タイミング療法の精度向上につながります。また、FSHとの比率により多嚢胞性卵巣症候群の診断にも活用されます。排卵予測検査薬もLHの急上昇を検出する仕組みであり、自宅での妊活においても重要な指標となっています。

5. AMH(抗ミュラー管ホルモン)

AMHは卵巣に残っている卵子の数の目安を示すホルモンで、卵巣年齢の評価に使用されます。発育途中の卵胞から分泌され、個人の妊娠可能期間を推定する重要な指標となっています。
AMH値が低い場合は卵子の残存数が少ないことを示し、妊活を急ぐ必要性を示唆します。逆に高すぎる場合は多嚢胞性卵巣症候群の可能性があります。年齢とともに減少する傾向があり、体外受精での採卵数の予測や、個人に適した治療方針の決定にも活用されています。

6. プロラクチン

プロラクチンは母乳の分泌を促すホルモンですが、妊娠していない状態で高値を示すと排卵障害の原因となります。ストレスや薬剤の影響でも上昇することがあり、不妊の原因として見落とされがちなホルモンです。
プロラクチン値が高い場合は、排卵の抑制や月経不順を引き起こす可能性があります。原因として下垂体腫瘍や甲状腺機能低下症などの疾患も考えられるため、詳しい検査が必要な場合があります。薬物療法により正常値まで下げることで、排卵機能の改善が期待できるため、妊活において重要な検査項目の一つです。

ホルモン検査をするにあたって気になること

ホルモン検査を受ける際には、検査のタイミングや費用、結果の解釈について疑問を持つ方が多くいらっしゃいます。これらの疑問を解消することで、安心して検査を受け、妊活に活かすことができます。適切な知識を持って検査に臨むことで、より効果的な妊活につながるでしょう。

ホルモン検査のタイミングや検査の実施回数

ホルモン検査は月経周期に合わせて適切なタイミングで実施することが重要です。ホルモンの種類により測定に最適な時期が異なるため、医師の指示に従って複数回に分けて検査を行うのが一般的です。
基本的な検査スケジュールとして、月経開始から3~5日目にFSH、LH、エストロゲン、プロラクチンを測定し、排卵後の高温期(月経開始から21~23日目)にプロゲステロンを測定します。AMHは月経周期に関係なくいつでも測定可能です。
病院への通院頻度は個人の状況により異なりますが、初回検査では月に2~3回程度の通院が必要になることが多いです。その後は検査結果や治療方針により調整され、月1回程度の検査で経過を観察する場合もあります。

ホルモン検査にかかる費用はいくら?

ホルモン検査の費用は保険適用の有無により大きく異なり、1回あたり3,000円~15,000円程度が目安となります。不妊症の診断や治療目的での検査は保険適用となることが多く、費用負担を軽減できます。
保険適用の場合、基本的なホルモン検査(FSH、LH、エストロゲン、プロゲステロン)で3,000円~5,000円程度、AMH検査は保険適用外となることが多く、7,000円~10,000円程度の費用がかかります。プロラクチンや甲状腺ホルモンの検査は保険適用で1,000円~2,000円程度です。
検査項目数や医療機関により費用は変動するため、事前に確認することをおすすめします。また、自治体によっては不妊検査の助成制度があるため、居住地域の制度も調べてみるとよいでしょう。

年齢によってホルモン検査の結果はかわる?

ホルモン検査の結果は年齢により大きく変化し、特に35歳以降は卵巣機能の低下に伴いホルモン値に変化が現れやすくなります。これは自然な老化現象であり、妊活における重要な考慮要素となります。
年齢とともにAMH値は低下し、FSH値は上昇する傾向があります。これは卵巣に残っている卵子数の減少と、卵巣機能の低下を反映しています。エストロゲンの分泌も徐々に減少し、月経周期の変化や排卵機能の低下につながります。
40歳以降では、これらの変化がより顕著になり、自然妊娠の可能性が大幅に低下することが知られています。しかし、個人差が大きいため、年齢だけでなくホルモン検査の結果を総合的に評価することが重要です。定期的な検査により、個人の状況に応じた適切な妊活プランを立てることができます。

ホルモン検査の結果で妊活はかわる?

ホルモン検査の結果により、妊活のアプローチ方法や治療方針は大きく変わります。検査結果は個人の生殖機能の状態を客観的に示すため、最も効果的で安全な妊活方法を選択する重要な判断材料となります。
検査結果により、自然妊娠を目指すタイミング療法、排卵誘発剤を使用した治療、人工授精、体外受精など、適切な治療段階を決定できます。例えば、AMH値が著しく低い場合は早期の体外受精を検討し、排卵障害がある場合は排卵誘発剤による治療を優先します。
また、生活習慣の改善指導など、検査結果に基づいた具体的な改善策も提案されます。定期的な検査により治療効果を評価し、必要に応じて治療方針を調整することで、より効率的で成功率の高い妊活を実現できるのです。

ホルモン検査はご自宅のセルフでも検査ができる

病院での検査に加えて、自宅でできるホルモン検査キットも活用できます。忙しくて病院に通う時間がない方や、まず自分の身体の状態を知りたいという方におすすめの方法です。
Women's Fertility Check(ブライダルチェック)では、排卵・卵子の数・体調に重要な役割を持つホルモンの値から、妊娠に向けた身体の状況や今の体調にホルモンがどう影響しているかをセルフチェックできます。
病院で行う検査と同じように数多くのホルモンを対象とし、医学的に正しくセルフチェックできる唯一の郵送検査です。登録衛生検査所で検査を行い、検査結果は全て医師がレビュー、コメントをしています。

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自宅での検査は、プライバシーが保たれる環境で気軽に受けられることや、病院への通院回数を減らせることがメリットです。ただし、詳しい相談や治療が必要な場合は、専門医療機関での受診も併せて検討することが大切です。

まとめ

妊活におけるホルモン検査は、妊娠に向けた身体の状態を正確に把握し、個人に最適な治療方針を立てるために重要な検査です。エストロゲン、プロゲステロン、FSH、LH、AMH、プロラクチンの6つの主要ホルモンを測定することで、排卵機能や卵巣の状態を詳しく評価できます。
検査のタイミングは月経周期に合わせて行い、費用は保険適用により3,000円~15,000円程度が目安となります。年齢とともにホルモン値は変化し、特に35歳以降は定期的な検査が重要になります。検査結果により妊活のアプローチ方法は変わり、より効果的で安全な妊活を実現できます。
病院での検査に加えて、自宅でできるホルモン検査キットも活用でき、忙しい方でも気軽に自分の身体の状態を把握できます。ホルモン検査を通じて、安心で計画的な妊活を進めていきましょう。

参考文献

日本産科婦人科学会『生殖・内分泌委員会報告』
厚生労働省『不妊に悩む方への特定治療支援事業』
日本生殖医学会『不妊症Q&A』

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