高齢出産とは何歳から?リスクや気を付けることも併せて解説

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

「高齢妊娠は何歳から?出産の最高齢は何歳まで?」「高齢妊娠はどんなリスクがあるか知りたい」と悩んでいませんか?

晩婚化の影響から高齢妊娠は珍しいものではなく、元気な赤ちゃんを授かっている方もたくさんいます。ただ、高齢妊娠はさまざまな妊娠・出産に関わるリスクが高まるため注意が必要です。

本記事では高齢妊娠のリスクや気をつけることを紹介します。30歳を過ぎ、自分が高齢妊娠に当たるのか気になる方は参考にしてください。

この記事でわかること

  • 高齢出産(高年出産)とは何歳から?
  • 高齢出産は初産婦だけ?リスクは経産婦も同じ?
  • 高齢妊娠のメリット
  • 高齢妊娠のリスク
  • 【妊活】高齢で妊娠するのは難しい?
  • 高齢妊娠のリスクを抑えるための対策
  • 自宅で卵巣の年齢をチェックしてみよう

高年妊娠(高齢妊娠)とは何歳から?

高齢妊娠とは妊娠適齢期よりも高い年齢で妊娠することです。医学的には35歳以上での初めての出産を高齢出産とよび、最近では高年妊娠とも呼ばれます。

晩婚化の影響から高齢妊娠は珍しいものでもなく、無事に元気な赤ちゃんを授かっている方もたくさんいます。

ただ、一般的に女性の妊娠・出産適齢期は20代で、加齢により妊娠・出産に関わるリスクが高くなります。とくに、35歳以上ではじめて出産をする方は難産、妊娠高血圧などの病気などのリスクが高くなるため、妊娠の経過に注意が必要です。

高齢出産は初産婦だけ?リスクは経産婦も同じ?

医学的には35歳以上での初めての出産を高齢出産と定義していますが、経産婦(2人目以降の出産)でも同様のリスクが存在します
日本産科婦人科学会では、35歳以上の初産婦を「高年初産婦」と定義していますが、これは初産に限った話ではありません。経産婦の場合でも、35歳以上での出産では年齢に関連したリスクは変わらず存在します。
実際に、経産婦でも35歳以上では妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの合併症リスクが高まります。また、染色体異常による流産リスクも初産婦と同様に年齢とともに増加する傾向があります。そのため、経産婦であっても35歳以上での妊娠・出産には十分な注意と管理が必要です。

高齢妊娠のメリット

高齢妊娠は経済的・精神的なゆとりをもって出産に望めるメリットがあります。

出産はゴールではなく子育てのスタートです。子育てがはじまり、多くの方が悩むのが家庭と仕事の両立や金銭的な問題です。ただ、20代はキャリア形成期であり、経済面や精神面での余裕がないカップルも少なくありません。

高齢妊娠にあたる年齢では経済面や精神面でもゆとりがあるカップルが多い傾向です。そのため、高齢妊娠は出産後も余裕をもって子育てができるメリットがあります。

高齢妊娠のリスク

高齢妊娠は必ずしも難産や障害をもつ赤ちゃんが産まれる訳ではありません。ただ、高齢妊娠は流産、難産、妊娠特有の病気、障害をもつ赤ちゃんが産まれるリスクが高まるため注意は必要です。

高齢妊娠のリスクの把握は対策を考える上でも大切です。そのため、まずは高齢妊娠のリスクを解説します。

流産のリスク

高齢妊娠の場合、流産のリスクが高まります。

一般的な流産の頻度は約15%で、加齢により流産する可能性は高まります。高齢妊娠でも35歳以上よりも40歳以上の流産率の方が高くなるデータもあります。

〜自然妊娠における流産率1)〜

  • 30歳以前:7~15%
  • 30~34歳:8~21%
  • 35~39歳:17~28%
  • 40歳以上:34~52%

流産の主な原因は赤ちゃんの染色体異常です。加齢により卵子の質が低下することで、染色体異常を起こす可能性が高くなります

そのため、高齢妊娠でも年齢が高くなるほど流産リスクが高くなると考えられています。

難産のリスク

35歳以上の高齢妊娠は難産になりやすく、帝王切開になる可能性が高まります2)。

赤ちゃんの通り道の産道は加齢により弾力性が失われ硬くなると考えられています。

産道が硬いと赤ちゃんが中々出てこれず、お産に長時間かかり難産となります。母子の負担をさけるためにも、帝王切開になる可能性は高まります。

初回帝王切開の割合とリスクは年齢とともに増加したという報告もあります2)。

妊婦特有の病気のリスク

高齢妊娠は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などの妊娠特有の病気のリスクを高めます

妊娠高血圧症候群と妊娠糖尿病は妊娠時に高血圧や糖代謝の異常がみられる病気です。どちらも正常な妊娠の過程や赤ちゃんの発育に影響をおよぼします。

高齢妊娠になると妊娠時特有の病気にかかるリスクが高まるため、妊娠の経過には注意が必要と考えられています。

赤ちゃんが障害をもつ確率が上がる

妊娠する年齢が高くなるにつれて、染色体異常による障害をもつ赤ちゃんが生まれる確率は高くなります
これは主に卵子の老化が原因で、年齢とともに染色体の分離異常が起こりやすくなるためです。特にダウン症候群(21トリソミー)については、母体年齢との関連が明確に示されています。


年代別染色体異常の発生率

年齢 発生率
20歳 約1/526
25歳 約1/476
30歳 約1/385
35歳 約1/192
40歳 約1/66
45歳 約1/21

 

年代別ダウン症の発生率

年齢 発生率
20歳 約1/1667
25歳 約1/1250
30歳 約1/952
35歳 約1/385
40歳 約1/106
45歳 約1/30

ただし、これらの数値は確率であり、高齢妊娠でも多くの場合は健常な赤ちゃんが生まれます。不安な場合は、出生前診断について医師と相談することも可能です。

発達障害の赤ちゃんが生まれる確率は上がる?

発達障害と母体年齢の関係については、現在も研究が続けられている分野です。
一部の研究では、父親の年齢が高い場合に自閉症スペクトラム障害のリスクがわずかに上昇する可能性が示されています。40歳以上の父親から生まれた子どもは、30歳未満の父親から生まれた子どもと比較して、自閉症スペクトラム障害の発症リスクが約1.5倍高くなるという報告があります。
しかし、母体年齢と発達障害の直接的な関連については、明確な因果関係は確立されていません。発達障害は遺伝的要因と環境的要因が複合的に影響すると考えられており、年齢だけが決定要因ではありません。むしろ、妊娠中の栄養管理や健康管理、感染症の予防などの方が重要な要素とされています。過度な心配をせず、適切な妊婦健診を受けることが大切です。

【妊活】高齢で妊娠するのは難しい?

年齢を重ねるにつれて妊娠率は低下し、自然妊娠が難しくなる傾向があります。
これは女性だけでなく男性にも当てはまることで、カップル両方の年齢が妊娠に影響します。妊活を考えている高齢カップルにとって、自分たちの妊娠力を理解しておくことは重要です。この見出しでは、年齢と妊娠の関係、男性側の影響、そして対策について詳しく解説します。高齢妊娠を希望する方が知っておくべき現実的な情報と、適切な準備方法をお伝えします。

妊娠率が低下し、自然妊娠が難しくなる

女性の妊娠率は30代前半から徐々に低下し、35歳以降はより顕著に低下します
これは主に卵子の質と数の低下が原因です。女性は生まれた時から卵子の数が決まっており、加齢とともに減少していきます。また、卵子の質も年齢とともに低下し、受精や着床の確率が下がります。卵巣機能も年齢とともに衰え、排卵周期が不規則になることも妊娠率低下の要因となります。


年齢別自然妊娠率(1年以内)

年齢 妊娠率
20~24歳 約86%
25~29歳 約78%
30~34歳 約63%
35~39歳 約52%
40~44歳 約36%

ただし、これらは統計的な数値であり、個人差が大きいことも重要なポイントです。健康的な生活習慣を維持し、適切な栄養摂取や運動を心がけることで、妊娠の可能性を高めることは可能です。

男性側も加齢によって妊娠力が低下する可能性がある

男性も加齢により精子の質が低下し、妊娠力に影響する可能性があります。
精子は約74日周期で常に新しく作られますが、40歳を超えると精子の運動率や正常形態率が低下する傾向があります。また、精子のDNA損傷率も年齢とともに増加し、受精率や妊娠継続率に影響を与える可能性があります。さらに、精子の濃度や総数も年齢とともに減少することが報告されています。
男性の場合、女性ほど急激な変化はありませんが、50歳を超えると妊娠率が明らかに低下するという報告もあります。また、高齢の男性では、流産リスクや子どもの先天性疾患のリスクもわずかに上昇する可能性が指摘されています。そのため、高齢での妊活では男性も生活習慣の改善や健康管理に取り組むことが重要です。

不安な方は不妊治療やホルモン検査を検討しましょう

高齢カップルは不妊治療に早めに取り掛かることをおすすめします
一般的に、35歳未満のカップルは1年間の自然妊娠を試みてから不妊治療を検討しますが、35歳以上のカップルは6か月程度で専門医に相談することが推奨されます。時間的な制約がある高齢妊活では、早期の対応が重要です。不妊治療の選択肢には、タイミング療法、人工授精、体外受精などがあり、年齢や状況に応じて適切な治療法が選択されます。
忙しくてすぐには病院に行けないという方へ、まずは自宅でできるホルモン検査をおすすめします。
Women's Fertility Check(ブライダルチェック)では、排卵・卵子の数・体調に重要な役割を持つホルモンの値から、妊娠に向けた身体の状況や今の体調にホルモンがどう影響しているかをセルフチェックできます。病院で行う検査と同じように数多くのホルモンを対象とし、医学的に正しくセルフチェックできる唯一の郵送検査です。


canvasの検査キットはこちら

高齢妊娠のリスクを抑えるための対策

加齢による高齢妊娠のさまざまなリスクが高まることは避けられません。ただ、生活習慣の見直しなどで避けられるリスクもあります

ここでは、高齢妊娠のリスクを抑えるための対策を紹介します。

生活習慣を整える

高齢妊娠の場合、生活習慣を整えることからはじめてみましょう。

高齢妊娠に限らず、生活習慣の乱れは健やかな妊娠・出産の妨げになります。ただ、高齢妊娠の場合、妊娠前高血圧などの妊娠特有の病気になりやすいため、生活習慣にはとくに注意する必要があります。

睡眠、食事、嗜好品などの生活習慣を妊娠してから急にすべて変えることは難しいです。そのため、妊娠前から少しずつ生活習慣を整えることがすすめられます。

睡眠時間

良い睡眠は高血圧などの生活習慣病の予防になります。

個人差はあるものの、必要な睡眠時間は 6時間以上8時間未満あたりと考えられています3)。

睡眠不足は生活習慣病のリスクを高め、8時間以上と長すぎると睡眠の質が悪くなるため注意が必要です。

睡眠の質をあげるためには、38〜40℃程度のお湯でゆっくり入浴したり、寝室の環境を整える、寝る前のカフェインの摂取を避けるなどを意識してみましょう。

食事の時間・量

1日3食決まった時間の食事は体内時計が整い、また適切な食事量は生活習慣病の予防につながります

最近では朝食を抜いたり、1日必要な摂取量が足りていない方も多いため、1日3食、必要な量を食べるようにしてみましょう。

〜理想な食事の時間〜

  • 朝食:朝6〜7時前後
  • 昼食:12〜13時
  • 夕食:18〜19時

〜活動量の少ない成人女性の場合の適切な食事量(1400~2000kcal)〜

主菜4~5つ、副菜5~6つ、主菜3~4つ、牛乳・乳製品2つ、果物2つ

禁煙する

喫煙は妊娠時の流産・早産のリスク、低出生体重児が産まれるリスクが高くなります

ダウン症などの染色体異常による赤ちゃんの障害をおさえることは難しいですが、健康のためにも禁煙をしましょう。

適正体重を維持する

痩せすぎも、太りすぎも妊娠・出産によくない影響を与えるため、適正体重を維持しましょう。

痩せすぎの場合は低出生体重児のリスクが高まります。一方、肥満の場合は流産・早産の可能性、妊娠高血圧症候群のリスクが高まり難産になりやすくなります。

適正体重を維持するためには、適度な運動やバランスの良い食事を心掛けることがおすすめです。

適度な運動

適度な運動は生活習慣病の予防、ストレス・肥満の解消など高齢妊娠に対するさまざまなメリットがあります。

妊娠・分娩時は女性のカラダに大きな負担がかかります。

高齢妊娠だと体力が落ちやすいため、運動して筋肉をつけて健康的なカラダづくりをしておくことが大切です。また、肥満は難産になりやすいため、運動で適正体重を目指すことも必要です。

ただ、激しい筋肉トレーニングや長距離のランニングなどの疲労やストレスがたまるような過度な運動はおすすめできません。

とくに女性の場合はホルモンバランスの乱れの原因になるため、適度な運動を心掛けましょう。

運動方法

一週間に150分程度の運動が目安と考えられています。疲労がたまらない程度の下記のような運動を週に何回かに分けて継続的に取り組んでみましょう。

  • 早歩き:少し息が上がるが会話できる程度で早めに歩く
  • ヨガ:ポーズ、独特な呼吸法、瞑想を組み合わせて行い、心身のバランスを整える

バランスの良い食事

バランスのよい食事とは、主食・主菜・副菜がそろった食事です。これをとれば、妊娠・出産リスクが下がるといった食材や栄養素はありません。

ただ、最近では偏った食生活で妊娠・出産に重要な葉酸の摂取が不足している人が増えています。葉酸の不足は赤ちゃんの神経の異常を起こすリスクになるため、妊娠前から積極的な摂取を心掛けましょう。

〜葉酸を多く含む植物性食品(100g中の葉酸の含有量) 4)〜

いちご 90μg
ほうれん草(ゆで) 110μg
えだまめ(ゆで) 260μg

摂取方法

バランスのよい食事の摂取方法のポイントは下記の2つです。ぜひ、普段から意識してみてくださいね。

  • 肉・魚・大豆製品など多様な種類の主菜を組み合わせてタンパク質を十分にとる(1日主菜3~4つ目安)
  • 不足しやすい葉酸、鉄分、カルシウムなどは副菜からとる(1日副菜5~6つ目安)

心の健康にも気を遣う

カラダの負担がかかりやすい高齢妊娠はカラダだけではなく、心の健康にも気を配る必要があります

妊娠中は体調管理などでストレスが溜まりやすく、ホルモンバランスの変化もあるため情緒が不安定になる方も多いです。

強いストレスが続くとメンタルの病気にかかる可能性があるため注意が必要です。メンタルの病気をさけるためにも、ストレスとうまく付き合うことが大切です。

ストレスをためない方法

ストレスをためない方法としては、自分にあうストレス発散法をうまく日常の生活に取り入れることです。

以下のストレス発散方法もぜひ参考にしてみてくださいね。

  • 人混みを避けて緑の多い場所を歩く
  • 1日の終わりはゆっくり湯船につかる
  • カラダを動かす
  • 友人や知人とはなす
  • アロマを取り入れる

自宅で卵巣の年齢をチェックしてみよう

高齢妊娠ではさまざまなリスクがあることから、自分のカラダの状態を把握しておくことが大切です。

とくに「卵巣の年齢(卵子の残り数)」は早めにチェックすべき検査の一つになります。卵巣の年齢は卵子の残りの数と相関するホルモンであるAMHを調べることで推定が可能です。

canvasの「AMH Check (卵巣年齢)」は病院にいかなくても、自宅で簡単に卵巣年齢を調べることができる検査キットです。

病院へいく時間がない方や受診のハードルが高いと感じている方は試してみてはいかがでしょうか?

canvasの検査キットはこちら

まとめ

本記事では高齢妊娠のリスクや気をつけることを解説しました。記事のポイントは下記の通りです。

  • 35歳以上での初めての出産を高齢出産とよび、最近では高年妊娠とも呼ぶ
  • 高齢妊娠は経済的・精神的なゆとりをもって出産に望めるメリットがある
  • 高齢妊娠は流産、難産、妊娠特有の病気、障害をもつ赤ちゃんが産まれるリスクが高まる
  • 生活習慣の見直しなどで抑えられるリスクもある

高齢妊娠で元気な赤ちゃんを産むためにも、自分のカラダを整えることからはじめてみましょう。

参考文献

1) 一般社団法人日本生殖医学会.生殖医療の必修知識2020.2020 http://www.jsrm.or.jp/publications/pub_index.html

2)Richards MK,et al. Primary cesarean section and adverse delivery outcomes among women of very advanced maternal age. 2016 https://www.nature.com/articles/jp2015204

3)厚生労働省健康局.健康づくりのための睡眠指針2014 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

4) 厚生労働省.妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 https://www.mhlw.go.jp/content/000776926.pdf

この記事をシェア