痩せる薬とはどんなもの?種類とメリット・デメリット

この記事の監修者

前田 裕斗

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学 

はじめに

多くの人が体重管理や減量に頭を抱えているもの。特に、女性の場合はホルモンの影響で太りやすくなったりむくみやすくなったりと、常に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そんな中、最近では「薬を使ったダイエット」が注目されています。本記事では、薬を使ったダイエットの有効性、薬の種類、そしてそれぞれの注意点を解説していきます。

この記事でわかること

  • なぜ薬を使ったダイエットがよい?
  • ダイエットに使用される主な薬の種類とメリット・デメリット
  • 薬を使ったダイエットの注意点

1. なぜ薬を使ったダイエットがよい?

薬を使用したダイエット(メディカルダイエット)は、体内の様々な反応を医学的にコントロールすることで体重減少をサポートする方法です。多くの場合、食欲を抑える、代謝を上げる、脂肪の吸収を抑えるといったメカニズムで効果を発揮します。元々は、体重管理が難しい肥満症の患者や生活習慣病のリスクがある人々に対して、医師の指導のもと薬物療法が行われてきたのですが、その薬が自費診療の一部として多くの方に提供されるようになりました。

食事療法や運動が必須であるのは言うまでもありませんが、薬物療法はその努力をサポートし、ゴール達成を早めるツールとして利用されています。しかし、薬には副作用などのリスクも伴うため、使用にあたっては十分な注意が必要です。

2. ダイエットに使用される主な薬の種類とメリット・デメリット

GLP-1作動薬

GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)作動薬は、2型糖尿病治療薬として開発されましたが、最近では肥満症の治療にも用いられています。GLP-1は腸から分泌されるホルモンで、インスリン分泌を促進すると同時に脳内の食欲中枢に働きかけて食欲を抑制します。また、胃の排出速度を遅くすることで、満腹感を長持ちさせる効果もあります。複数の薬が存在しますが、薬によって効果・副作用に多少の差があり、投与頻度なども異なってきています。

薬の例:

セマグルチド(商品名:オゼンピック、リベルサス)

下記に挙げたリラグルチドのような従来の薬と比較して2倍の効果が報告されておりよく用いられる薬です。副作用として吐き気、便秘・下痢などの胃腸症状が出ることがあります。オゼンピックは週1回の注射、リベルサスは1日1錠の服用です。

チルゼパチド(商品名:マンジャロ)

チルゼパチドはGLP-1作動薬の中でも比較的新しい薬です。効果が非常に高く、副作用 の胃腸症状もセマグルチドと同じ位と言われていますが、歴史が浅いため今後新たな副作用が報告されるかもしれません。週1回の注射です。

リラグルチド(商品名:サクセンダ、ビクトーザ)

10年ほど前から流通している薬です。下痢・便秘・消化不良などの副作用が現れることがあります。1日1回の注射です。

デュラグルチド(商品名:トルリシティ) 10年ほど前から流通している薬で、週1回の注射です。少し太めの針で指すこともあるからか、メディカルダイエットでの利用は減少しているかもしれません。

メリット:

  • 食欲抑制が強力
  • 持続的な体重減少が期待できる
  • 2型糖尿病の管理に役立つ

デメリット:

  • 吐き気、嘔吐、消化不良などの副作用がある場合がある
  • 長期間使用する必要があり、高価である
  • 保険適用外のケースも多い

オルリスタット(脂肪吸収抑制薬)

オルリスタットは、膵リパーゼという酵素を阻害し、腸での脂肪分解と吸収を抑える薬です。これにより、摂取した脂肪の約30%が未消化のまま体外に排出され、カロリー吸収を減少させる効果があります。

メリット:

  • 高脂肪食を摂取している人に特に効果的
  • カロリー制限の補助として働く
  • 生活習慣病のリスクが低下する

デメリット:

  • 油状便や下痢、腹痛といった消化器系の副作用が起こりやすい
  • 脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)の吸収が減少するため、栄養不足になる可能性がある
  • 長期的な使用には不向き

漢方薬

漢方薬は、漢方薬は代謝を上げ、ホルモンバランスを整え、体全体の調和を図ることで、自然で持続的な体重減少を促進します。特に体質改善を重視する方にとっては、漢方は非常に有効なダイエット方法です。漢方薬の中でも、特にダイエットに有効とされるものには下記が挙げられます

薬の例:

防風通聖散

防風通聖散は、体内の余分な水分や脂肪の代謝を促進することで、むくみや肥満を改善します。便秘解消にも効果があり、代謝を促進して体重減少をサポートします。

大柴胡湯

大柴胡湯は、脂肪の燃焼を助ける効果があり、特にお腹周りの脂肪減少に効果的です。また、肝臓や消化器系の働きを促進し、消化不良を改善する作用もあります。

加味逍遥散

加味逍遥散は、特に女性のホルモンバランスを整え、ストレスや更年期症状に伴う肥満の改善に効果的です。自律神経の乱れを整え、心身のバランスをサポートします。

六君子湯

六君子湯は、消化不良や胃腸の働きを改善し、食欲不振や過食を防ぎ、ダイエットをサポートします。体内の代謝を整える効果もあり、持続的な体重管理に役立ちます。

メリット:

  • 自然由来の成分を使用し、副作用が少ない
  • 体質に合った漢方薬を選べば効果が実感しやすく、体質改善が期待できる
  • 長期的に使用できる
  • GLP-1作動薬よりも価格が手頃

デメリット:

  • 即効性はないため、急速な体重減少を求める人には不向き
  • 個々の体質によって効果にばらつきがある

3. 薬を使ったダイエットの注意点

薬は強力なツールですが、服用にあたっては注意が必要です。GLP-1作動薬は特に短期間で効果を実感しやすいですが、使用を中止した際にリバウンドが生じる可能性があります。

一方、漢方薬は西洋薬に比べて副作用が少なく、体質の改善に重点を置いているため、長期的な使用に適しています。自然なダイエット方法を探している方や、体質改善を一緒に行いたい方には、漢方薬が適した選択肢となるでしょう。

いずれの場合も、薬はあくまで食事療法や運動を補完するものです。薬だけでは長期的な成果を得られないので、生活習慣の改善も併せて行っていきましょう。

4. まとめ

薬を使ったダイエットには、短期的に効果をもたらすGLP-1から、、長期的に体質改善をしていく漢方薬まで色々な種類があります。最も重要なのは、自分の体質やライフスタイルに合った方法を選び、無理のない形で続けていくことことです。また、薬だけに頼らず、食事や運動の改善も一緒に行っていきましょう。

参考文献

1) Sattar N, McGuire DK. "Pharmacotherapy for obesity and diabetes: Rational treatments." The Lancet. 2015;386(9997):1467-1476.

2) Wadden TA, Berkowitz RI, Womble LG, et al. "Randomized trial of lifestyle modification and pharmacotherapy for obesity." The New England Journal of Medicine. 2005;353(20):2111-2120.

3) Tanihata T, "漢方薬の効果と肥満治療." 日本東洋医学会雑誌. 2019;70(5):350-360.

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