家庭や仕事が落ち着いて、子どもをと考えているカップルは多いです。しかし、なかなか望んだスケジュールで妊娠することは、健康なカップルでも容易ではありません。
しかし、日々の生活状況によって妊娠の確率を上げたり、妊娠しやすい体づくりをすることは可能です。
そこで今回はすぐにでも妊娠したい方へ向けて、より妊娠しやすい体や環境づくりのコツについて解説します。今妊娠をご希望の方はもちろん、今後状況をみて希望する方も、日々の生活の参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 自然妊娠の確率
- 妊娠しやすい体づくりの方法
- 妊娠しやすい環境づくり方法
妊活とは
妊活とは「妊娠するための活動」のことで、妊娠できるように体や環境を整えたり、妊娠に関するさまざまな知識を自ら取り入れていくことです。
妊活中にすべき行動をステップ順に並べます。
- 情報収集:妊娠について専門医に話を聞いたり、信頼できるサイトや本などから情報を集めます。
- 生活習慣・環境の見直し:健康な体を維持するため、食事・睡眠・運動などの生活習慣の見直しを行います。また、同時に基礎体温の測定を習慣づけましょう。
- 排卵日を予測して、タイミングを合わせて性交渉する:最も妊娠しやすい時期である排卵日にタイミングを合わせます。また排卵日を予測するためには、基礎体温の測定が大切です。
- ブライダルチェックを受ける:ブライダルチェックとは妊娠に影響する病気の有無を調べる検査のことで、結婚前に行うこともあります。
- クリニックに相談して、不妊治療を検討する:避妊せず性交渉をしても1年以上妊娠しない場合は、何か原因があるかもしれません。一度、クリニックに相談してみましょう。
上記のようなステップで妊活を進めます。始めからがんばりすぎず、二人のペースでまずは情報の収集や生活環境の見直しから始めてみましょう。
自然妊娠の確率
健康な男女が避妊せずにタイミングを合わせて性行為をした場合、妊娠する確率は20~30%程度といわれています。想像より確率が低いと感じる方も少なくありません。
また妊娠の確率は女性の年齢にも関係があるとされ、20代をピークに年齢を重ねるごとに妊娠する力は低下していきます。
健康な男女でさえ、自然妊娠の確率はそこまで高くありません。そのため自然妊娠ができる確率を上げるために、妊娠しやすい体づくりと正しい知識が必要になるのです。
自分でできる妊娠率を上げる方法
具体的に妊娠率を上げるため、妊娠しやすい体をつくる5つの方法についてご説明します。妊娠するためには健康な体がとても大切です。今日から誰でもすぐにできる内容も多いため、妊娠をご希望の方はぜひ取り組んでみてください。
食生活を整える
妊娠しやすい体づくりにはバランスの良い食生活が必要不可欠です。基本的には栄養価が高く、体を冷やさない食材がおすすめです。逆に体を冷やす食材もあるため、注意しましょう。
体を温める食材 | 体を冷やす食材 |
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体を冷やす食材を食べてはいけない、ということではありません。ただ、食べすぎには注意したり、温野菜など工夫したりすることで体を冷やさずにおいしく食べられます。
また「質の悪い油」といわれるトランス脂肪酸は生殖能力を低下させるという報告があります1)。マーガリンや古くなった油などにはトランス脂肪酸が比較的多く含まれているため、摂りすぎや調理の際は気をつけましょう。逆に魚に含まれるDHA・EPAといったω3脂肪酸の摂取は推奨されています2)。
さらに水溶性ビタミン(ビタミンB群・C・葉酸)は妊娠するための体づくりだけでなく、妊娠した後、胎児の成長にも欠かせない栄養素です。水に溶ける水溶性ビタミンは摂取しても尿として排出されやすいため、不足しやすい栄養素です。
妊娠を望む女性は積極的に水溶性ビタミンを取り入れましょう。食事だけでなく、サプリメントなどで栄養素を補うのも効率的です。
妊娠に適した体重を目指す
妊娠しやすい体づくりの一環として、妊娠に適している体重を維持することも重要です。体重なんて関係しているの?とお考えの方もいるかもしれません。実は女性の不妊原因の1割以上が肥満または低体重が関係しているといわれているのです。
体重の増減は女性ホルモンの分泌に影響し、ときにバランスを崩す場合もあります。その結果、生理が不規則になったり、排卵が起こらなくなったりと、妊娠がしづらくなってしまいます。
妊娠に適した体重はBMI(身長から割り出した標準体重の指標)が20~24が理想的です。以下にBMIの算出方法を記載しますので、ぜひご自身のBMIを計算してみましょう。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)=少数第二位まで
例)身長160cm、体重55kgの場合
BMI=55(kg)÷1.6(m)÷1.6(m)=21.48
もしBMIが高いあるいは低い方は、ご自身の身長から逆算して標準体重を計算し、その体重の範囲を目指して体調を整えましょう。
体を温める
妊娠しやすい体づくりには体を冷やさないことも大切です。「冷えは万病のもと」といわれるように、体を冷やすことはあまり良いことではありません。
体が冷えることで血行が悪くなり、免疫力が低下したり、体全体に酸素や栄養が十分に行き渡らなくなったりします。体が冷えることで、卵巣や子宮へ新鮮な酸素や栄養を届けることができなくなってしまうのです。
シャワーで済ませずに湯舟に浸り、温野菜など体を温める食事を心がけ、冷たい飲み物はできるだけ避けるようにしましょう。
それでも冷えが気になる場合は足首までの靴下をはくことをおすすめします。足には妊娠に関連したツボも多く存在します。できるだけ日常的に足を温めるよう意識しましょう。
妊娠に効くツボ押しやお灸をする
妊娠に効くツボ押しやお灸をすえる方法も、かんたんでおすすめです。妊娠に効果的とされるツボは複数ありますが、その場所を指圧またはお灸をすえてみましょう。
指圧するときは、ツボを親指で5秒間ほど強く押し、数えたらパッと離します。そしてまた同じツボを同様に5秒間ほど指圧します。5秒間隔で押して離すを繰り返し、これを3分間行います。
妊娠に効果があるツボ
- 湧泉(ゆうせん):足の指をぎゅっと握ったときにできるくぼんだ部分。
- 合谷(ごうこく):親指と人差し指を合わせたときにできるシワ先端の横(人差指側)の部分。
- 三陰交(さんいんこう):内くるぶしから膝の方へ指幅4本分上の部分。
- 労宮(ろうきゅう):手を握ったとき、手のひらの中指と薬指の間の部分。
湧泉と合谷が健康アップのツボ、三陰交と労宮は子宝ツボと呼ばれ、男女ともに効果があるとされるツボです。ツボ押しはいつでもどこでも手軽に行うことができるため、ぜひ試してみてください。
漢方を利用する
妊娠しやすい体をつくるための体質改善として、漢方を用いるのも効果的です。漢方薬は一般的な西洋薬と異なり、体質からゆっくりと良い方向へ改善していく働きがあります。
妊娠しやすい体をつくるために有効とされる代表的な漢方薬
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん):むくみやすい、体が疲れやすい、冷えやすい方
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん):手足は冷えやすく、顔はほてりやすい、経血がドロッとした塊をしている方
- 加味逍遙散(かみしょうようさん):イライラやPMS(月経前症候群)がある、日頃からストレスを感じている方
- 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)・四物湯(しもつとう):胃腸が弱く、冷えに弱い、胃がもたれやすい方
今回ご紹介した漢方以外にも体調に合わせて、さらに多くの漢方薬が存在します。
妊娠しやすい体づくりとは、体の調子を改善させることはもちろん、ホルモンや自律神経のバランスを整えたり、精神的なストレスを軽減させたりすることも含まれます。
ご自身の悩みや気になる状態に合わせて、漢方を取り入れてみることをおすすめします。
知っておきたい妊娠の確率を上げる方法
妊娠の確率をより上げるため、試していただきたい方法をご紹介します。さきほどは主に体づくりに焦点を当てましたが、ここでお伝えするのは主に妊娠するための環境づくりについてです。より妊娠しやすくするため、体も環境もベストなコンディションを整えましょう。
正しい基礎体温の測り方
基礎体温は起床時に舌の下で測ります。そして測定が終わるまで口を閉じて静かに待ちます。
体温を測るときは起き上がらず、目が覚めたら横になったまま測定しましょう。そのため、体温計は枕元など手を伸ばしてすぐに取れる位置に置くのがベストです。
またできるだけ同じ時間帯に起床し、測定するのが望ましいです。毎日同じ時間帯に寝て・起きることは生活習慣の見直しにもなります。もし生活が不規則な方は、この機会にぜひ改善しておきましょう。
タイミング法
女性の体は月経周期によって、妊娠しやすい時期と妊娠しにくい時期があります。そのため、より妊娠しやすいタイミングを見計らって性交渉することで妊娠の確率が上がります。これを「タイミング法」といいます。
具体的には排卵日の前後3日くらいを目安に性交渉をするのが望ましいです。ただ、排卵日は月経と異なり、目に見えた変化がなく、いつ排卵したかは自分ではわかりません。
ある程度の日にちは月経周期と基礎体温で予測することが可能なため、妊娠を望む方は毎日の基礎体温の測定は欠かさず行いましょう。
ただし基礎体温の計測だけでは排卵日の予測が難しい場合があります。より正確な排卵日予測のためには婦人科で卵の育ち具合を超音波で見ていく方法が有効ですので、ご自身で基礎体温を元にタイミングをとってもなかなか妊娠しない場合はぜひ婦人科にかかってみてください。
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パートナーとの性交渉を増やして確率を上げる
妊娠する確率を上げるために、パートナーとの性交渉の機会を増やすというのも有効です。
さきほど、「排卵日前後の性交渉で妊娠の確率が上がる」とお伝えしましたが、基礎体温の記録をしていなかったり、生理が不規則だと、なかなか排卵日の予測は難しいです。
卵子の寿命は約1日、精子の寿命は約3日といわれていますが、妊娠するためには排卵した卵子と精子が生きた状態で出会わなければなりません。どちらか片方が存在していても妊娠はしません。
普段から性交渉の機会自体を増やすことで、卵子と精子が出会えるチャンスがアップするため、結果として妊娠の確率も上がるのです。
まとめ
今回は「妊活」についてということで、妊娠しやすい体や環境づくりのポイントについて解説しました。
妊娠しやすい体づくりの方法
- 生活習慣の改善(食事・体重管理など)
- 体を冷やさない
- ツボ押しやお灸
- 漢方薬で体質改善
妊娠率をアップさせる環境づくり
- 基礎体温の測定
- タイミング法の実践
- 性交渉の機会を増やす
最初にお伝えしたように、健康な男女でも自然妊娠の確率は20~30%とそこまで高くありません。
そのため、少しでも妊娠の確率を高めるためにできることに取り組んでみましょう。今回ご紹介した方法は、比較的どれも取り組みやすい内容となっています。
パートナーとよく話し合いながら、お二人のペースで妊活に励んでくださいね。
参考文献
1) Wise LA, et al. 2018 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5860620/
2) Chiu YH, et al. 2018 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S001502821830428X?via%3Dihub