当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、月経不順や月経異常に悩む女性によく使われる漢方薬ですが、他にも妊娠中や更年期障害の女性にも用いられることがあります。
「当帰芍薬散はどんな症状に効くの?」、「効果が出るまでどのくらい飲み続ける?」、「服用する時なにに気をつけたらいい?」と疑問を抱えている人もいるのではないでしょうか?
これまでに当帰芍薬散を飲んだことがない人やこれから飲んでみたいという人にもわかるように、ていねいに解説いたします。
この記事でわかること
- 当帰芍薬散の効能と効果
- 当帰芍薬散の効果がでるまでの期間
- 当帰芍薬散の服用時の注意点
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)とは?
当帰芍薬散とは、月経不順や月経異常、更年期障害に悩む女性によく使われる漢方薬です。漢方医学では、「血」「気」「水」のバランスによって体の健康が保たれており、3つのバランスが崩れると病気や不調をきたすと考えられています。
月経不順や月経異常、更年期障害によるつらい症状があらわれるのも「血」「気」「水」のバランスが原因です。当帰芍薬散は「気」と「血」にはたらきかけ、血行を促進したり、栄養素の循環や水分の代謝を促し、症状を改善します。
効能と効果
当帰芍薬散は、若い女性の月経不順や月経異常、妊娠にともなう不調から、中年女性の更年期障害による不調まで、幅広く活用されます。
では、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか?妊婦、更年期、思春期〜性成熟期の対象ごとに、得られる効果をみていきましょう。
妊婦の方への効果
妊娠中に起こりやすい症状には、つわり、倦怠感、貧血、むくみ、頭痛などがあり、当帰芍薬散の服用によってこれらの症状の改善が期待されます。
特に、つわりがひどい場合、水分不足や急激な体重減少が見られることもあり、病院での点滴治療が必要です。つわりのひどい妊婦に当帰芍薬散を服用させたところ、妊娠悪阻による予定外の入院が削減できました1)。また、何度も流産を繰り返してしまう再発性流産患者の出生率を改善する可能性もあります2)。
更年期障害の方への効果
更年期障害で見られやすい症状には、ほてりやのぼせなどの熱感、頭痛や頭重感、高血圧や動悸、抑うつやイライラなどの精神症状などがあり、当帰芍薬散の服用によってこれらの症状の改善が期待されます。
閉経前後で睡眠障害のある女性に当帰芍薬散を服用させたところ、睡眠障害が軽減し、拡張期血圧の低下を認めました3)。また、頭痛とうつ病の両方をもつ女性にとって効果的な治療法になる可能性があるという研究データもあります4)。
思春期~性成熟期の方への効果
思春期〜性成熟期の月経不順や排卵異常は、当帰芍薬散の服用によって改善が期待されます。月経が正常に起こるためにはホルモンバランスが重要です。
思春期はホルモンバランスが安定しないこともあり、月経不順や月経痛が起こりやすくなります。また、性成熟期は過度なストレスによりホルモンバランスが乱れがちになり、月経不順や月経異常を引き起こすことがあります。
当帰芍薬散は、卵巣の機能にはたらきかけ、卵胞の発育、排卵を促し、妊娠しやすい体へと導きます。また、冷えを伴う月経痛の緩和にも効果的です。
効果がでるまでの期間
漢方薬の効果が出るまでの期間は、一般的に1〜2週間といわれています。漢方薬は、種類によって即効性のあるものや、数時間〜数日かかるものもあり、効果が出るまでの期間はさまざまです。
当帰芍薬散を服用し始めてから2週間ほど様子を見て、薬の効果があらわれているか、副作用の症状は出ていないかを確認するようにしましょう。もし、効き目が感じられなかったり、体に異常が出ている場合は、医師や薬剤師に相談してください。
成分・分量
当帰芍薬散に含まれる成分や分量は、取り扱うメーカーによって異なります。クラシエ当帰芍薬散錠を例にご紹介しましょう。
クラシエ当帰芍薬散錠に含まれる成分は、トウキ、センキュウ、シャクヤク、ブクリョウ、ソウジツ、タクシャ、それから添加物のヒドロキシプロピルセルロース、ケイ酸AI、ステアリン酸Mg、セルロースです。
成人が1日に服用する有効成分の分量は、トウキ409mg、センキュウ409mg、シャクヤク546mg、ブクリョウ546mg、ソウジツ546mg、タクシャ546mgとなっています。
用法・用量
当帰芍薬散の用法用量は、取り扱うメーカーによって異なります。
- クラシエ当帰芍薬散錠の場合、1日3回、食前や食間に4錠ずつ服用。
- ツムラ漢方23当帰芍薬散料エキス顆粒の場合、1日2回、食前や食間に1包ずつ服用。
食前とは、食事をとる1時間から30分前までの間のことをいいます。胃の中が空っぽの状態です。
食間とは、食事と食事の間の時間のことをいいます。食事をとってから、おおよそ2〜3時間後の状態です。
注意点・副作用
当帰芍薬散を服用するときに注意が必要なのは、他の病気を治療中の人、胃腸の弱い人、今までに薬の影響で発疹・発赤、かゆみなどの症状があらわれたことがある人です。生後3か月未満の乳児には禁忌となっておりますので、注意しましょう。
また、当帰芍薬散の副作用は、発疹・発赤・かゆみなどの皮膚症状や、食欲不振・胃部不快感などの消化器症状です。このような症状がみられた場合は、服用をやめて医師や薬剤師に相談してください。
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保管方法
当帰芍薬散は、小児の手が届かず、直射日光が当たらない、涼しい場所で保管してください。使用期限が過ぎたものは服用してはいけません。
錠剤で瓶に入っているタイプの場合は、きちんと蓋を閉めたのを確認してから保管しましょう。錠剤に水分がつくと変色や色むらの原因になります。瓶の中に詰め物が入っていることがありますが、輸送中の破損を防ぐためのものなので、開封後に取り除いても問題ありません。
個包装してある顆粒を分割して飲む場合は、袋の口を2回折り曲げて保管し、2日以内に服用してください。
漢方薬「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」を手に入れるには
月経不順や月経異常、妊娠中や更年期障害にみられる症状の改善などに効果が期待できる当帰芍薬散ですが、手に入れるにはどうしたらよいのでしょうか?当帰芍薬散を手に入れる方法は、病院を受診して処方を受ける方法と、ネットで注文する方法があります。どのような流れで入手するのかご紹介いたします。
病院で受診して処方を受ける
まず一つ目の当帰芍薬散を手に入れる方法は、病院を受診して処方を受ける方法です。当帰芍薬散は、産婦人科や心療内科でよく取り扱われています。
病院で診察を受け、医師に書いてもらった処方箋を薬局に持っていくと、薬をもらうことができます。病院で薬を処方する際は、診断された病気に対して適切な治療目的で、厚生労働大臣が承認している用法用量に従って扱われなければなりません。
病院を受診する方法は一般的な入手方法ですが、わざわざ病院に足を運んだり、処方箋を薬局に持って行ったりと手間がかかるのが難点です。
ネットで漢方薬を注文するには
二つ目の当帰芍薬散を入手する方法は、ネットで漢方薬を注文する方法です。病院に行く手間が省け、家にいながら購入できる手軽さから利用する人が増えています。
例えば、canvasというサービスの場合、自宅にいながら医師監修の問診(無料)をLINEで受け、悩みに合わせた漢方薬を提案してもらえます。
問診はLINE上で行います。問診にかかる時間は約3分です。医師監修の無料の問診に答えると、一人一人の症状に合った漢方薬を婦人科医師、薬剤師が提案します。内容に納得できたら購入という流れになっており、購入後に気になることや体調の悩みがある場合は、医療専門チームによるアフターフォローも無料で受けられます。
まとめ
当帰芍薬散は、月経不順や月経異常に悩む若い女性から、妊娠中の女性や更年期障害に悩む中年の女性まで、幅広く効果が期待できる漢方薬です。当帰芍薬散に含まれる成分や分量、用法や用量は、取り扱うメーカーによって異なるため、服用する前に確かめておきましょう。
体質によっては期待通りの効果があらわれなかったり、副作用症状が見られる場合もありますが、2週間を目安に服用を継続し、薬の効果を確認してください。異常が見られた場合は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
参考文献
1) Michihata N, et al. Safety and effectiveness of Japanese herbal Kampo medicines for treatment of hyperemesis gravidarum. 2019 https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijgo.12781
2) Shigemi D et al. Effect of Japanese herbal Kampo medicines on live birth rate in women with recurrent pregnancy loss. 2021 https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijgo.13477
3) Shigemi D et al. Effect of Japanese herbal Kampo medicines on live birth rate in women with recurrent pregnancy loss. 2021 https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijgo.13477
4) M. Terauchi et al. Menopausal Symptoms and the Kampo Medicine: Tokishakuyakusan, Kamishoyosan, and Keishibukuryogan. 2016 https://link.springer.com/protocol/10.1007/978-1-4939-4002-8_7