妊娠しやすい季節はある?妊娠確率がアップする時期や方法を解説

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

自然界では、多くの動物の繁殖期はだいたい決まっており、生存に適した時期に妊娠するようになっています。人間も、妊娠に適した時期、妊娠しやすい季節はあるのでしょうか?

厚生労働省の統計によれば、戦前は1月から3月の出産、つまり4月から6月に妊娠していた数字が多かったようです。その理由として、春先は気候がよく妊活に適していたのではないかと言われています。

ただし現在は季節に適応できる生活習慣となったためか、季節による出生数の違いは特にみられないようですが、実際どうなのでしょうか?

この記事でわかること

  • 妊娠しやすい季節は春と秋と言われる理由
  • 妊娠しやすくする方法は生活習慣の改善
  • 妊娠確率がアップするタイミング

妊娠しやすい季節とは

一般的に春や秋に妊娠しやすいと言われることが多いようですが、裏付けるような確実なデータは今のところなく、妊娠のしやすさと季節は関係ないと考えられています

妊娠のしやすさと季節の関連について、北アメリカとデンマークにおける自然妊娠の研究報告によれば、秋は妊娠しやすく、春は妊娠しにくいという結果も出ていますので、一概に春と秋が妊娠しやすいとは言えないようですが、一般的に春や秋が妊娠しやすいと言われるのは、地域、文化、環境の影響を受けている可能性も考えられます1)。

春や秋が妊娠しやすいと言われる理由

では、春や秋が妊娠しやすいと言われるのはなぜでしょうか?エアコンや冷たい飲み物で内臓が冷えやすい夏、外気温が低く身体全体が冷えやすい冬と違い、春や秋は身体が冷えにくい季節と言われています。

そのため、体感に大きく関係する季節が影響しているとも考えられますが、それ以外にも理由があるのでしょうか?詳しく見ていきます。

春が妊娠しやすいと言われる理由

春になり日照時間が長くなり、日光を浴びる時間が長くなると、女性ホルモンの分泌量が増えてきます

また、太陽の光を浴びることで増えるセロトニンというホルモンは、心と身体をリラックスさせ自律神経を整え、冷え性の人は冷えにくくなり、その結果、妊娠しやすくなると言われています。

さらに、寒かった冬が終わると、寒さで縮んでいた身体全体が解放され、骨盤が開き、生殖器の働きも活発になるといわれています。

秋が妊娠しやすいと言われる理由

身体の冷え、ストレス、自律神経の乱れは妊娠しにくくなると言われています。暑すぎず、寒すぎないという秋の気温は身体が冷えにくく、自律神経が安定し、さらに気温が安定していると趣味や運動をしやすいためストレスもたまりにくい季節です。

また、実りの秋と言われる秋は、旬の食材が多く、栄養価の高いバランスが摂れた食事が取りやすいということも妊娠しやすいことに関係しているといわれています。

総務省統計局のデータの1900年から2000年までの5年ごとの月別出産数を見ると、1975年頃から夏生まれ(7月8月生まれ)が増えているという結果が出ています。夏生まれということは秋の10月11月に授かっているということになります。

また10月11月の妊娠は流産率が低いというデータもあります。

ただし、春や秋に妊娠しやすいという確実なデータはないようで、気候のよい春と秋に妊活しやすいということもあるようです。

一年中「妊娠しやすい体」を目指そう!

春と秋は気候がよいため、妊活をしやすい気候ではありますが、春や秋になっていざ妊活を始めてもすぐに妊娠するわけではありません。

一年中妊娠しやすい体を目指し、普段の生活から妊娠しやすい身体をつくることを意識して生活をしましょう

季節によらずできることは、ストレスにならない程度に毎日行うようにしましょう。

例えば、毎朝目覚めたら太陽を浴びる、ストレッチなど軽い運動をする、ビタミンB群を積極的に摂取するなど、簡単にできることから始めましょう。

妊娠しやすい体になるためには

妊娠しやすい身体でいるためには、バランスの良い食生活、適度な運動、十分な睡眠、そしてストレスのない安定した心も大切です。

疲労とストレスを溜め込まないように趣味やリラックスできることをしながら妊娠に備えましょう。

健康的な生活習慣を身につけておこう

妊娠しやすい体になるために、健康的な生活習慣を身に着けることが重要です。生活習慣が乱れると、卵巣や子宮といった生殖器の機能が弱まったり、生殖機能を司る女性ホルモンの分泌が妨げられたりして、「妊娠しにくい体」へと変化してしまうこともあります。妊娠しやすい体を作るためには

  • ストレスを発散すること
  • 質の良い睡眠をとること
  • 禁煙すること
  • アルコールを控えること
  • 冷えを解消すること
  • 適度に運動すること
  • 栄養バランスのとれた食事

をすることなどが大切です。

食事

妊娠を希望するなら食事が大切です。健康な赤ちゃんを産むためには、鉄分や葉酸などの栄養素を十分に摂取することが必要です。

鉄分は血液の材料で、葉酸は胎児の神経管閉鎖障害の予防に重要な役割を果たします。レバーや赤身肉、ほうれん草や小松菜などに多く含まれています。

また、細胞や生殖能力を高める良質なたんぱく質やオメガ3脂肪酸も摂ることがおすすめです3)。たんぱく質は卵や大豆製品、オメガ3脂肪酸は青魚やナッツ類に多く含まれています。

さらに、体内の酸化を防ぐビタミンEや亜鉛も大切です。ビタミンEは緑黄色野菜や海苔、亜鉛は牡蠣やピーナッツなどに多く含まれています。

以下に摂取をおすすめする食品について、表にします。

食品名 栄養素 100g中の含有量
枝豆(ゆで) 葉酸 260µg
ライチ 葉酸 100µg
鶏レバー(生) 葉酸 1300µg
ホタテ 葉酸 87µg
鶏胸肉皮付き たんぱく質 19.5g
銀鮭 たんぱく質 19.6g
さば たんぱく質 20.6g
カツオ 鉄分 1.0mg(生50g)
調整豆乳 鉄分 2.4mg

避けるべき食品

妊活中は、栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。血糖値やホルモンバランスに悪影響を与える可能性がある糖分や脂肪分の多い食品は控えるようにしましょう。

そして、食事内容だけでなく、食事回数や時間も重要です。毎日3回、規則正しくバランスの良い食事を摂ることが大切です。

また、飲み物にも注意が必要です。水分は体内の血液や細胞の働きに欠かせません。妊活中は1~2Lの水分を摂取することを目安にしましょう。

ただし、カフェインやアルコールは過剰摂取すると妊娠率や赤ちゃんの成長に悪影響を与える可能性があります。カフェインはコーヒーや紅茶・緑茶・エナジードリンクなどに含まれています。

妊活中に避けるべき食品とその理由を表にまとめてみました。

食品名 理由
生卵 サルモネラ菌による食中毒のリスクがあり、流産の原因になる可能性がある
生肉 トキソプラズマという寄生虫に感染するリスクがあり、赤ちゃんに重篤な障害を引き起こす可能性がある
トランス脂肪酸の多い食事 排卵障害や肥満・動脈硬化などのリスク因子で、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群を発症する可能性が高くなる2)

体を冷やさない対策を

妊活中は、体を温めることが大切です。体を温めることで、妊娠に必要な子宮や卵巣の機能が正常に働きやすくなります

反対に、体を冷やすことは妊活に悪影響を及ぼします。体を冷やすことで、低体温や免疫力の低下などの不調が生じやすくなります。低体温になると代謝が落ちて熱を作り出す力が弱まるからです。

また、免疫力が低下するとウイルスや細菌に感染しやすくなり、病気のリスクが高まります。

では、具体的にどのようにして体を温められるのでしょうか?ここからは、体を冷やさない対策をご紹介します。

お風呂にゆっくり浸かる

妊活中は、お風呂に浸かることで、体を温めて血行を良くします。しかし、お風呂の温度や時間、入浴剤の使い方などにも注意が必要です。

温度は39~40℃、時間は20~30分が適切です。お風呂の温度は、熱すぎると交感神経が興奮して血管が収縮し、血流が悪くなります。また、長時間入浴すると体力が消耗して疲れてしまうのです。

妊活中は、39~40℃のぬるめのお湯に20~30分くらい浸かることで、体を芯から温めて血行を促進し、副交感神経を優位にしてリラックス効果も得られます。

また、入浴剤でリラックス効果を高める 入浴剤を入れることで、入浴の効果を高められます。
炭酸ガス系の入浴剤は毛細血管を拡げて血流をよくしてくれ、好みの香りの入浴剤ならより一層リラックスするのに効果的です。保温効果のある入浴剤であれば入浴後でも体がポカポカして温かく、質のよい睡眠をとることにもつながります。

身体を温める食品を摂取する

妊活中に身体を温める食品を摂取することには、様々なメリットがあります。

例えば、体温が上がることで免疫力が上がり、ウイルスなどに対する抵抗力が高まるとされています。

また、温活は妊娠しやすい体作りにおすすめです。冷えがなくなると、月経不順やホルモンバランスの乱れなどの解消につながります

以下に身体を温める食べ物を表にまとめました。

食品名 栄養素 1日の摂取量
生姜 食物繊維、カリウム、マグネシウム 5〜10g
長ネギ ビタミンC、βーカロテン、カリウム 70g
納豆 ビタミンK 1パック
味噌 炭水化物、脂質、灰分、ビタミン、カリウム、マグネシウム、繊維質 大さじ1/2杯

薄着しすぎない

妊活中に薄着をすると、以下のようなデメリットがあります。

  • 体温が下がる
  • 血行が悪くなる
  • 卵巣や子宮の働きが低下する
  • 排卵や着床に影響が出る
  • 薄着は冷え性や免疫力の低下など、健康全般に悪影響を及ぼします。

妊活中は、体温を36.5℃以上に保つことが望ましいでしょう。

体温が低いと、ホルモンの分泌が乱れ、卵巣や子宮の働きが低下します。卵巣や子宮の働きの低下は、排卵や着床に悪影響を及ぼし、妊娠の確率を下げる可能性があるのです。

また、薄着をすると、体温の低下だけでなく、血行の悪化も起こります。

血行が悪くなると、卵巣や子宮に十分な栄養や酸素が届かず、機能が低下するのです。さらに、血行が悪いと、冷え性や免疫力の低下など、健康全般にも悪影響を及ぼし、妊娠に必要な体力や抵抗力を低下させることになります。

妊活中は体を冷やさないように注意することが推奨されています。

例えば、冷房の効いた部屋にいる場合は、カーディガンを羽織るなどの対策が必要です。

夏でも靴下を履いたり、着圧ソックス・着圧ストッキングを使用することで、血流の改善やむくみの緩和・予防、冷えの緩和・予防などのメリットがあります。ただし、長時間の使用は避け、体がリラックスできる時間を長めに設けるようにしましょう。

ストレス対策をする

妊活中にストレスをためると、ホルモンバランスが乱れて、排卵障害や着床障害などの不妊の原因になる可能性があります。そのため、妊活中はストレスをうまく発散させることが大切です。ストレス対策法としては、以下のようなものがあります。

<美味しいものを食べる>

セロトニンという心の安定を司るホルモンは、炭水化物やトリプトファン、ビタミンB6などから合成されます。

そのため、卵や大豆、乳製品、にんにくやバジル、白米やイモ類などをバランスよく食事に取り入れることで、セロトニンの分泌を促しましょう。また、美味しいものを食べること自体も気分転換になります。

<アロママッサージで気分を変える>

アロママッサージは、体の疲れを癒してくれるだけでなく、香りによって心もリラックスさせてくれます。

カモミール、ラベンダー、ローズ、イランイラン、レモングラスの香りはストレスに効くといわれています。

<パートナーに感謝の言葉を伝える>

パートナーの行動一つひとつにイライラしてしまうこともあるかもしれませんが、「いつもありがとう」という気持ちを伝えてみましょう。

パートナーの態度が徐々に変わることもありますし、感謝の言葉を伝えたこちらの気持ちも軽くなることがあります。

妊活中にストレスをためると不妊の原因になる可能性があるので、ストレスをうまく発散させることが大切です。

ストレス対策法は人それぞれですが、自分に合った方法を見つけて、妊活を楽しく続けていきましょう。

適度な運動

妊活をする際には、適度な運動と適正な体重の維持が非常に重要です。適正体重は、妊娠しやすい体の目安となるものであり、食事や運動の内容などは、今日から始められるものばかりです。

妊活中の運動では、有酸素運動を「20分以上」行うことが望ましいとされています。これは、脂肪の燃焼には20分以上の時間がかかるため、妊活中の過度な肥満を抑えるためにはこの時間が必要です。

妊娠前より適度な運動を習慣とし、妊娠初期から妊娠後期まで体調を考慮した軽い運動を続けることが、母体と赤ちゃんの健康に必要といえるでしょう。

サプリメントなどで体内環境を整えよう

活中に積極的に摂取したい栄養素として覚えておきたいのは、鉄、カルシウム、亜鉛、ビタミンB群、葉酸、ビタミンD。食事で摂取するのが望ましいですが、効率よくサプリで摂るのも一つの方法です

サプリはあくまで健康補助食品ですので、飲んですぐに変化が見られるわけではありません。一定期間飲み続けることが必要になりますので、飲みやすさや匂い、味などストレスなく続けやすいものを見つけましょう。

毎月の妊娠しやすい日(排卵日)を狙うのもおすすめ

妊娠の確率が高くなるのは、排卵の1~2日前と言われています。

また、排卵4日前から排卵日前日の間に1~2日おきに性行為をすると、妊娠の確率が高くなるといわれています。

妊娠しやすい体づくりを目指すと同時に、妊娠しやすい日を基礎体温やおりものの変化などで把握しておくことが大切です。

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妊活の基本!排卵日を予測するタイミング法とは?

妊娠を希望するなら今の自分の身体について知ろう

妊娠するためには、自分のホルモンバランスや卵巣機能などを把握することが大切です。

しかし、病院に行く時間がなかったり、検査を受けるのが恥ずかしかったりと、なかなか検査を受けられない人もいるのではないでしょうか。

そんな人におすすめなのが、ホルモン検査キットです。ホルモン検査キットとは、自宅にいながら採血をして、ホルモンの分泌を調べることができる検査キットです。

ホルモン検査キットを使うと、排卵の状況や卵子の残数、甲状腺機能、卵巣年齢などがわかります。

ホルモン検査キットの使い方は簡単です。まずはインターネットで注文して、自宅に届いたら自己採血をします。

自己採血は、小さな針のついた器具を使って指先から採取します。採血したらポストに投函して終了です。検査結果は登録したサイトから閲覧できます。

ホルモン検査キットにはいくつか種類があります。

妊娠を望んでいる人や妊娠に向けて自分の体の状態を知りたい人におすすめなのが、Women’s Fertility Check(ブライダルチェック)です。

この検査キットでは、排卵機能、卵巣予備能(卵子の残り数)、甲状腺機能に関わる7つのホルモンのうち、気になる悩みに合わせて必要なホルモンを測定します。

ホルモンの数値を知ることで、自分の妊娠力や妊活のタイミングを見極められます。また、検査結果に異常があった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

ホルモン検査キットは、自分の体について知ることで、妊娠に向けてより効果的なアクションを取れるツールです。

妊娠を希望するなら、今の自分の身体について知っておくことが大切です。ぜひホルモン検査キットを使ってみてください。

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まとめ

妊活中の季節については確固たるデータはなく、春や秋が妊娠しやすいとされる理由もはっきりとはわかっていません。

そのため、一年中妊娠しやすい体を作ることが重要であり、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠、ストレスのない心の安定が必要です。

また、体を温めることも妊活に効果的です。食事では鉄分や葉酸の摂取が重要で、糖分や脂肪分を控えることも大切です。体を冷やさないようにするためにも、適度な運動やストレッチを取り入れましょう。

妊活は一年中行うことをおすすめします。常日頃の生活習慣や食事、ストレスのケアなどが大切です。

妊娠しやすい体を作るために、健康的な生活を心掛けましょう。皆さんの妊活が成功し、健やかな赤ちゃんが産まれることを願っています。

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参考文献

1)Wesselink, A. K., et al. (2020). “Seasonal patterns in fecundability in North America and Denmark: a preconception cohort study.” Hum Reprod. https://academic.oup.com/humrep/article/35/3/565/5717667

2) Wise LA, et al.Dietary Fat Intake and Fecundability in 2 Preconception Cohort Studies. 2018 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5860620/

3) Vujkovic M, et al. The preconception Mediterranean dietary pattern in couples undergoing in vitro fertilization/intracytoplasmic sperm injection treatment increases the chance of pregnancy. 2010 https://www.fertstert.org/article/S0015-0282(09)04338-6/fulltext

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