PMSとは?月経前症候群の症状や治療方法について解説

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

そろそろ月経かな?という時期になると、ちょっとしたことで怒りっぽくなったり、夜しっかり寝ているはずなのに昼間に眠くなったり、体がだるく感じてしまったり…そういう悩みを抱えていませんか?原因は、PMS(月経前症候群)かもしれません。PMSの症状は不思議なことに月経が始まるとだんだん落ち着くという特徴があります。

PMSってなに?どうして起こるの?つらいPMS症状をなんとかしたい!という方に向けて記事をまとめました。

この記事でわかること

  • PMSとは
  • PMSの起こる原因
  • PMSの主な症状
  • PMSを改善する方法

PMSとは

PMS(月経前症候群)とは、月経が始まる前にみられる身体的な不調や精神的な不調のことです。PMSの症状が出るタイミングは人それぞれで、早い人では月経が始まる10日前から、ゆっくりな人では3日前からあらわれ始めます。 PMSは月経が始まると症状がおさまるのが特徴です。

そして、次の月経が近づくとまた同じように身体的な不調や精神的な不調をくりかえします。なんとなく不調を感じていても気のせいだと思い、月経がきたことで「だから調子が悪かったのか」とあとから納得する方もいることでしょう。

PMSの診断は、胸の張りや痛み、頭痛やむくみなどの身体的な症状や、不安やイライラ、気分の落ち込みや混乱などの精神的な症状が、

  • 3カ月連続で月経前にあらわれたか
  • 月経が始まると症状がおさまるか
  • 日常生活に支障をきたすほどの症状か
  • 薬やお酒、他の病気による症状ではないか などが基準になります。

PMSの原因

PMSの原因には、女性ホルモンのバランスや自律神経の乱れ、悪い生活習慣やストレスの影響などが考えられます。しかし、どれかひとつだけに限られるものではありません。

女性ホルモンのひとつであるプロゲステロンは、不安や緊張を和らげる時にはたらくセロトニンという神経伝達物質と深く関わっており、プロゲステロンの分泌量が減るとセロトニンのはたらきが悪くなることが分かっています。

また、心と体の緊張やリラックスは自律神経でもコントロールされており、睡眠不足や過度のストレスの影響を受けると、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、正常に機能できなくなります。 いくつもの要因が重なって、身体症状が強めにあらわれたり、精神症状が強めにあらわれたりと、PMSは引き起こされるのです。

PMSの諸症状

PMSの症状には個人差があり、年齢によってもあらわれる症状に変化がみられます。月経が始まったばかりの思春期の頃と比べると、年齢を重ねているほうが症状が重く出る傾向があるようです。

また、まじめで几帳面な方ほどPMSになりやすく、「このくらい大丈夫」と我慢してしまうケースも少なくありません。ではPMSにはどのような症状があるのでしょうか。

身体症状

身体症状でよくあるのは、痛みに関する悩みです。お腹が痛い、頭が痛い、腰が痛いなどの症状があります。胸の張りやお腹の張りを痛みとして感じる方もいるかもしれません。

食欲が変化することもあります。食欲がなくなったり、反対に食べすぎてしまったり、甘いものが無性に食べたくなったりします。 肌荒れが気になったり、むくみがとれないという方もいるのではないでしょうか。

精神症状

精神症状でよくあるのは、感情に関する悩みです。ついイライラしてしまう、すぐ泣けてくるなど、感情のコントロールがきかなくなることがあります。

睡眠に変化を感じる方もいるのではないでしょうか。夜ちゃんと寝ているのに熟睡感がなかったり、昼間に眠気を感じたりします。 集中力が続かずにボーッとしてしまい、仕事や家事がはかどらない…なんてこともあるかもしれません。

精神症状が多い場合はPMDDの可能性も?

精神的な症状がつらくて日常生活に支障が出る場合は、PMDD(月経前不快気分障害)かもしれません。PMDDとはPMSの中でも精神的な症状がより強く出るタイプで、普段はうつ症状がないのに、月経前になると自己否定感が抑えきれず、絶望したり、傷つきやすくなったり、イライラした気持ちから周りの人に攻撃的になったりします。

PMDDの原因は明らかになっていませんが、PMSと同じように女性ホルモンのバランスが深く関わっていると考えられています。

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PMSとPMDDの違いを詳しく読みたい

PMSの改善につながるセルフケア

PMSにはいろいろな症状がありますが、自分で対策をとったり備えておくことで、上手に付き合っていくことは可能です。「このくらい何てことない…」と我慢してしまうことは良い方法ではありません。それではどんなセルフケアがあるのか見ていきましょう。

過食のセルフケア

ジャンクフードが食べたくなったり、甘いものが食べたくなったりと、とにかくお腹いっぱいになりたい!という方は、食欲旺盛な自分を受け入れてあげましょう。食欲ある自分を否定してしまうと、罪悪感がストレスとなり、さらにイライラして食べてしまう…そんな悪循環に陥る可能性があります。

食事回数を増やしたり、果物やナッツ類など食べる食品を選んだりすることで、食欲を抑えることもできますが、低用量ピルによってホルモンバランスを整えるのも対策のひとつです。

便秘のセルフケア

便秘を解消するためには、こまめに水分を摂りましょう。医薬品に頼らなくても発酵食品は腸内環境をよくしてくれるので、ヨーグルトや納豆、味噌汁などを食事に取り入れるのがおすすめです。

月経前はプロゲステロンのはたらきにより体に水分をため込もうとするため、便が固くなったり、腸の動きが悪くなったりします。手のひらをおなかに当て、時計回りにマッサージして腸の動きを促進するのも良いでしょう。

むくみ、だるさのセルフケア

むくみやだるさを改善するには、体にたまった余分な水分を排出しましょう。お風呂にゆっくり浸かったり、ストレッチなどで体を動かすのがおすすめです。全身の血液循環が改善され代謝も良くなります。

足のむくみを改善するための医療機器もありますが、身近にあるリンゴやバナナ、トマトやきゅうりなどカリウムを含む食品でも、むくみの改善に効果が期待できます。

漢方薬を取り入れることで諸症状の緩和に繋がることも

つらいPMSやPMDDの症状には漢方薬の服用も有効です。漢方薬は、その人の体質や生活習慣など様々なことを総合的に見直し、体の内側から緩やかに症状を改善していくものです。漢方薬には様々なものがありますが、PMSやPMDDの症状に有効な漢方薬は以下のとおりです。

  • 加味逍遙散(カミショウヨウサン):抑うつやイライラ、ほてり、のぼせなど
  • 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):冷えや貧血の傾向がある
  • 桂枝茯苓丸(キエシブクリョウガン):のぼせや頭痛、下腹部痛などがある

PMSやPMDDの症状には個人差があり、症状にあった漢方薬の服用が必要です。漢方薬はゆっくり症状を改善してくれるので、生活に取り入れやすいため、すこしずつでも症状を軽くしたいといった方はぜひ医師や薬剤師に相談してみてください。

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まとめ

PMSの症状には個人差があり、年齢によって症状が重くなることも考えられます。精神的な症状がつらくて日常生活に支障が出る場合、PMSよりも重症なPMDDかもしれません。

毎月訪れる月経ですから、なるべく悩みは減らしたいですよね。「この時期さえ乗り切れば…」と我慢してやり過ごすのは良い方法ではありません。

不調を感じたときは、セルフケアを試してみたり、医療機関を受診して薬の力を借りながら、快適に過ごせるように自分を労ってあげてください。

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