月経前に何かしら不調を感じる、月経前症候群(PMS)の女性は多くいます。不眠・下腹部痛・倦怠感・胸の張り・便秘といった身体的な症状から、イライラ・気持ちが沈むなどの精神的な症状まで、さまざまなものがあります。
今回はその中でPMSによる不眠に焦点を当てて、その特徴や対処方法について解説していきます。十分な睡眠がとれないと、日中の生活にも影響が出てくる上に、それがストレスとなってさらに眠れないという悪循環を引き起こします。 月経前に寝つきの悪い方や眠りが浅い方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
この記事でわかること
- PMSの基礎知識
- PMSと不眠の関係
- PMSによる不眠の対処方法
PMS(月経前症候群)とは
PMS(月経前症候群)とはPremenstrual Syndromeと呼ばれる、月経前3~10日前から現れる不調のことです1)。この不調は月経の開始に合わせて軽快または消失して行くのが特徴で、女性の7割以上が何かしらの症状を感じているといわれています2)。
その症状は肌荒れ・腰痛・便秘といった身体的な症状と、怒りっぽくなる・泣きたくなるなどの精神的な症状など多岐に渡ります。また症状の程度も人それぞれで、ほとんどPMSを感じていない方もいれば、生活に支障をきたしてしまう程に症状が重い方もいらっしゃいます。
PMSは月経がある限り、避けられないものです。しかし、適切な対処や心構えをすることで、PMSと上手に付き合っていくことは可能なのです。
PMSに伴う不眠の症状
またPMSによる不眠の場合、他のPMS症状と同様に月経前3~10日前から症状が現れ、月経の開始とともに症状が和らいでいくのが一般的です。もし、月経後~排卵前後の卵胞期(女性が月経周期の中で最も体調がよいとされる時期)にも変わらず症状がある場合、他の原因も考えられます。
考えられる原因
PMSに伴う不眠症状の原因について、実はまだはっきりとは解明されていません。しかし考えられる原因がいくつかあり、その因子として体温・女性ホルモン・メラトニン・ビタミンやカルシウムなどが挙げられます3)。 一説にはPMSが生じる高温期と呼ばれる時期は基礎体温が高くなるため、体温のメリハリが失われることで眠りが浅くなったり、寝つきが悪くなったりするといわれています。
また女性ホルモンの変化が交感神経と副交感神経のバランスや、脳内物質の分泌に影響を及ぼしていることが原因ともいわれています3)。 特にPMSの中でも精神症状が強く現れるPMDD(月経前不快気分障害)がある方では、睡眠スイッチを入れる物質であるメラトニンの分泌が変化するという報告もあります4)。
PMSに伴う不眠の対処法
PMSに伴う不眠は原因が未だ解明されておらず、これといった特攻薬もありません。しかし症状の程度差はあれど、周期ごとに毎回眠れなくなってしまうのでは、肉体的にも精神的にも負担が大きいです。そこで続いては、症状を和らげる対処法についてご紹介します。
生活習慣の改善
誰もがすぐにでも行える対処方法としては、まず生活習慣の改善です。ある程度同じ時間に寝起きして、バランスの良い食事を3食しっかりと摂り、適度に体を動かす、というのがとても大切です。
人間は月経周期はもちろん、睡眠や食事にも体内リズムがあります。このリズムを大きく乱すことなく、安定した状態を保つことが調子を整える上で重要なのです。 もちろん人それぞれ異なった体内リズムがあるため、一概に何時間睡眠が必要だと限定することはできません。しかし、必ずご自身にあったリズムがあります。 食事を抜いたり、夜更かししたりすることで、そのリズムを崩してしまわないよう、まずは生活習慣の改善から行ってみましょう。
アロマセラピー
寝る前に枕元でアロマを焚いたり、お風呂に入れたりして眠気を促すというのも効果的です7)。アロマセラピーにはイライラを抑えたり、気分を安定させたりといったリラックス効果が期待できます。特に人間は体の内部(深部)の温度が上がって、逆に表皮温度が下がり始めるタイミングが最もスムーズに眠りに入れるといわれています。
気分転換にはオレンジやグレープフルーツといった柑橘系の香り、ゆったり落ち着きたいときにはラベンダーの香りがおすすめです。 さらにローズ・ゼラニウム・クラリセージ(オニサルビア)には女性ホルモンのバランスを整える効果もあるとされています7)。ご自身の好みのアロマでゆったり眠りについてみましょう。
漢方薬
症状の改善に漢方薬も有効です。特に漢方はPMSといった女性の不調に対する改善をとても得意としています。症状によって用いる漢方薬も異なりますが、不眠が主な悩みの場合は「柴胡加竜骨牡蛎等(さいこかりゅうこつぼれいとう)」や「加味帰脾湯(かみきひとう)」がおすすめです6)。
どちらも自律神経のバランスを整えて、不眠の症状を改善する漢方薬です。特に柴胡加竜骨牡蛎湯はイライラの強い方や神経が過敏になっているような精神症状が強い方向けで、加味帰脾湯は少し体が疲れてしまっているような身体症状がある方に用います。
その他にもPMSに用いる漢方薬にはさまざまな種類があるため、興味のある方は医師や薬剤師に相談してみてください。
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低用量ピル
不眠の症状に対して低用量ピルを用いる方法もあります。今回お話している不眠の根本的な原因は「PMS」によるものです。そのため、PMSの治療薬である低用量ピルを服用すると、症状が軽減されることがあります。
ピルはもともと避妊薬として使用されていますが、今日では低用量のピルを用いることで、ホルモンのバランスを保つ働きがあることから、PMSなどの治療目的で使用されます。ただし、ピルはご存知の通り避妊の効果もあるため、妊娠を望む方の対処法としては使用できませんのでご注意ください7)。
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睡眠薬
薬を使う対処法としてピルの他に、睡眠薬があります。睡眠薬と聞くと少し身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。確かに間違った使い方をすると、薬に依存してしまったり、副作用が現れたり、大量に服用すると最悪命に関わることもあります。
しかし、睡眠薬は用法用量を守って正しく服用していれば、安全かつ睡眠の質を向上させるのに大変効果的です。目的の効果を出すためにも、医師や薬剤師から説明された使用方法をしっかりと守り、服用するようにしましょう。
まとめ
今回はPMSと不眠の関係性と特徴、そしてその対象方法についてご紹介してきました。 実際のところPMSによって不眠が起こる原因は、さまざまな可能性が考えられている一方で、まだ不明な点が多いのです。
PMSによる不眠の対処法
- 生活習慣の改善
- アロマセラピー
- 漢方薬
- 低用量ピル
- 睡眠薬
月経は周期ごとに毎回あるものです。そしてその度にPMSが生じる可能性があります。 PMSと上手に付き合っていくためにも、ご自身の体とよく相談しながら適切な対処法をとっていくようにしましょう。