「月経前にイライラするようになった」 「生理の3日前になるとニキビができる」 「生理前になると頭痛が始まる」こんな症状10代の頃はなかったのに、何かの病気かな?と思う方もいるかもしれません。
実はPMSの症状は年齢が上がるにつれて変化するのです。20代の性成熟期になると月経周期も安定し生理痛も軽減してくると同時に、女性ホルモンが変動にさらされているということでもあるのでPMSが発生しやすくなります。
そこでこの記事では、年齢とともに変化するホルモンバランスとPMSの症状について解説していきます。
この記事でわかること
- PMSの原因
- PMS症状の年齢による変化
- PMSの症状を軽減する方法
PMSとは
PMSとは月経前症候群(Premenstrual syndrome)のことで、「月経前3〜10日の黄体後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもの」とされています1)。
イライラ、気分の落ち込み、不安感などの「精神症状」や下腹部および乳房の張り、頭痛、むくみなどの「身体症状」が代表的ですが、PMSの症状は個人差が大きく200種類以上あると言われています。また、年齢とともに症状が強くなっていく傾向にあります。
PMSの原因
PMSの原因はまだはっきりとわかっていませんが、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」の変動が大きく関わっていることが考えられています。
エストロゲンは月経から排卵の間(卵胞期)に分泌量が増加します。排卵が起こると今度はプロゲステロンが多く分泌されます。
その後、黄体後期になりエストロゲン、プロゲステロンともに急激に低下することで、様々な症状が現れてくるのです。他にも、妊娠および出産経験、子育て、仕事の有無もPMSの症状に影響を及ぼします。
年代と女性ホルモンの変化
女性の体は、女性ホルモンの中でも特に「エストロゲン」の影響を受けて変化していきます。10代になり思春期が近づくとエストロゲンの分泌が増加し、初潮を迎えます。20〜30代はエストロゲンの分泌が最も安定する性成熟期です。
閉経の前後5年間(合計10年)は更年期と呼ばれ、エストロゲンの分泌が急激に減少していく時期となります。
PMSが20代になってひどくなったと感じるのも、性成熟期に入って女性ホルモンが正常に変動している証拠なのです。
年齢によってPMSの症状に変化がある
年齢によって、PMSの症状にどのような変化があるのでしょうか。ここでは、各年代ごとに分けてPMSの症状について解説します。
20代でPMSがひどくなったと感じている方は、次の30代、40代ではどのような変化が訪れるのか、確認してみましょう。
10代までのPMS
あまり知られていませんが、10代でもPMSは起こります。高校生を対象にした調査では、成人のPMSと比較すると身体の症状において重症者の割合は低いですが、精神症状や社会生活への影響においては重症者の割合が多いことがわかっています2)。
PMSが原因により欠席や遅刻、早退が多くなれば、その分だけ教育活動に参加できなくなります。「体調不良の理由がPMSである」と認識しないまま成人を迎えることも多く、周囲の理解が得られないことも問題となっています。
20代からのPMS
10代で初経を迎え不安定だった月経周期が20代を過ぎる頃に安定してくると、生理前の乳房の張り、下腹部痛や頭痛、肌荒れなど身体に起こる様々なPMSの症状を強く感じるようになります。初めて症状を感じた人はPMSではない別の病気かなと勘違いをする人も少なくありません。
月経前に身体に変化が起こるのは、毎月の月経周期に合わせて分泌される2つの女性ホルモンが大きな変動にさらされることになるためです。
食生活等と生活習慣の乱れが起きやすいのもこの年代であり、過度なダイエットでの栄養不足や睡眠不足による体調不良でホルモンバランスが崩れてしまうと更にPMSが悪化することもあります。
30代からのPMS
30代になると、20代から続く頭痛や胸の張り等の身体的なPMSの症状に加えて精神的な不安定を感じることも多くなります。
30代は女性ホルモンの分泌量が徐々に減少し性成熟期の後期となります。30代では結婚、妊娠、出産、育児などのライフステージの変化によるストレスなども大きく影響し、イライラや情緒不安定、うつ、注意力散漫などの精神症状を発することがあります。
40代からのPMS
女性ホルモンの分泌が急激に減少する40代以降、PMSの症状は徐々に減っていき閉経を迎える頃にはすっかり無くなります。
一方女性ホルモンの減少や揺らぎが大きくなる更年期に入ることから、、自律神経の乱れからめまい、倦怠感、不眠などの更年期障害を発症する可能性があります。
更年期障害は、PMSのように毎月生理前だけに起こる症状ではなく、一定期間継続的に起こり、時期が来ると終わるといった特徴があります。
以下の記事も合わせて読む30代で更年期が訪れる女性も…プレ更年期障害とは?
出産経験もPMSの症状に影響を及ぼす
一般的に出産経験のある女性の方が、イライラしたり怒りっぽくなったり、自己否定感が強くなる等の精神的な不調に悩まされることが多いようです。育児や多忙のストレスも少なからず影響しているようです。
また、PMSの症状の度合いが出産後に出産前よりも重くなった人、逆に軽くなったという人もいて出産を機に変化する人も少なくありません。
これは原因がはっきりとはわかっていませんが、出産前後で環境 (ストレスや生活習慣など)や精神状態などが大きく変わることが関係していると言われています。
PMSの症状を改善するためにできること
PMSの症状を和らげるためには、いくつかの方法があります。
生活習慣やストレスを改善
PMSの予防として、生活習慣を改善したり、精神的・肉体的に負担をかけすぎないことなどがあげられます。 適度な運動と栄養のある食事、そしてリラックスできる時間などが設けられるとより良いでしょう。 とはいえ、働き盛りで生活リズムが乱れがちな20代の場合、生活そのものを変えようと思ってもなかなかすぐに変えることは難しいかもしれません。 少しずつでも改善できるよう、心がけましょう。
漢方薬で体内環境を改善
PMSの症状の改善や予防として、漢方薬を処方されることがあります。漢方薬は体内の不調を緩やかに改善してくれます。そのため、即効性はあまりなく、体内環境が整うまでに時間がかかります。
その一方で、決まったタイミングで漢方薬を飲むだけで効果が出ますので、日常生活に取り入れやすいのもいいところです。PMSの症状別におすすめの漢方薬をご紹介します。
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):体や頭が重く感じる方
- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):肩こり、腹痛、のぼせがある
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン):イライラ、憂鬱さを感じる
漢方薬はあなたの体質や症状に合ったものを処方してもらいましょう。漢方薬のことがわからない、気になるけれど病院に行く暇がないといった方は、ネットで薬剤師に相談して購入できるショップもあるので、相談してみるのもおすすめです。
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まとめ
年代による女性ホルモンの分泌量の変化や月経周期に合わせた女性ホルモンの変動を知ると、PMSの症状の年代による変化はごく自然なことだとわかります。年代別に変わっていく症状を把握しながら上手に付き合っていくことが大切です。
いつ、どのように、どのくらいの強さで症状が出るかを記録し、毎月の不調を自覚するだけで軽くなることもあります。
また、出産経験を含め自身のライフステージの変化によりPMSの症状も大きく変化することがあることも自覚しておくと適応しやすいでしょう。
症状がひどく辛い時は、我慢せずご家族に相談したり、お薬に助けてもらうことも可能です。
また、PMS症状だと思い込んで別の病気がひそんでいることもあるので身体の不調が長引いたり気になることがあればかかりつけ医に相談しましょう。自身の心と身体を労わりながら上手に症状と付き合っていきましょう。
参考文献
1) 日本産婦人科学会,「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020」,2020 https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2020.pdf
2) 山口悠ら,「高校生におけるPMS・PMDDの実態および学校生活へ与える影響-保健室来室回数、保健調査有症項目数、欠席日数、遅刻・早退日数との関連-」,千葉大学教育学部研究紀要,第70巻,2022 https://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900120448/S13482084-70-P099.pdf