PMSの不快な症状を和らげる食べ物を紹介

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

月経前は、なんだか調子が悪い…多くの女性が何かしら不調を感じやすいこの時期。月経前の不快な症状はPMSと呼ばれています。PMSを少しでも和らげたい、月経前のイライラや食欲過多をコントロールしたいという方に、ぜひ振り返って欲しいことがあります。それは日々の食事についてです。

忙しいとおそろかになりがちな食事ですが、PMSに影響を与えることが報告されています。どのような食事がいいのか、おすすめの栄養素はどんなものか、をお伝えします。

この記事に書かれていることをひとつでも参考にしてPMSの軽減に役立ててみてください。

この記事でわかること

  • PMSを和らげる食事と悪化させやすい食事
  • おすすめの栄養素
  • PMSを和らげる食事以外の方法

PMSを和らげる食事

PMS(月経前症候群)を和らげるためには、健康的な食事、ナトリウムやカフェインの制限などが挙げられます1)。具体的な栄養素・栄養補助食品としては、ビタミン(A・E・B6)、カルシウム、マグネシウム、マルチビタミン・ミネラルサプリメント、月見草オイルなどがあると言われています1)。

しかし、ひとつを集中して摂ればいいものではなく、バランス良く摂取することが大事なのです。他にも、よく噛んで食べることや血糖値が急激に上がらないような食事を意識することも重要です。

こんな食事には注意が必要

健康的でバランスの良い食事を考えるために、注意すべき食事について触れます。ホルモンバランスが崩れることでPMSが悪化しやすい食事には、高カロリーで高脂肪な食事、甘いもの、塩分の多いものなどが挙げられます2)。

甘いものはPMSを悪化させやすいですが、果物はPMSを和らげるという報告があります2)。さらにジャガイモや米など主食となる炭水化物を減らしすぎると、PMSが悪化する傾向にあるので注意してください3)。

血糖値が急激に上がるような食事は、イライラや食欲増加の原因になると言われています。グラニュー糖や白米などの精製糖質は血糖値が急激に上がりやすいので注意が必要です。

PMSを和らげたい人におすすめの栄養素

バランスの良い食事といっても何を意識すればいいかわからない人も多いでしょう。ここではPMSを和らげたい人におすすめの栄養素を紹介します。栄養素の働きを理解した上で、日々の食事に少しずつでも取り入れてみてください。

カルシウム

栄養補助食品でPMSを和らげる研究において、唯一効果が示された栄養素はカルシウムです7)。様々なハーブやビタミン、ミネラルで検証したデータを見ても、カルシウムだけがPMSをサポートできると実証されています8)。カルシウムを食事で意識することがPMS緩和のために重要です。

タンパク質

タンパク質は、魚や肉、大豆などに含まれていますが、中でも大豆由来のタンパク質を検証した実験では、PMS症状のうち頭痛や乳房の圧痛に対して、乳由来のタンパク質よりも痛みを緩和する可能性が示唆されています。4)

マグネシウム

マグネシウムは、緑の濃い葉物野菜やナッツ類などに含まれているミネラルの一種です。PMSのある女性がマグネシウムを2ヶ月間服用したところ、痛みやむくみが和らいだという報告があります5)。

一方で、血液中のマグネシウム量とPMSの症状には関係がないという報告もあります6)。

ビタミンE

ビタミンEは、ナッツ類や植物油に含まれている抗酸化作用が特徴のビタミンです。ビタミンEがPMSの症状の中でうつ症状に効果があったという実験もありますが、検証期間が短いことや検証のデータの少なさが指摘されており、まだこれから多くの検証が必要です9)。

ビタミンB6

ビタミンB6は、すでに効果があるとされているビタミンでしたが、ミネラルやビタミンを微量でも広範囲に摂っていく方がPMSの症状が軽減したという報告があります10)。また別の検証では、マグネシウムと併用することでPMSが和らいだと報告されています5)。単独での効果については、研究段階です。

イソフラボン

ここでは大豆イソフラボンについて紹介します。大豆イソフラボンは、女性ホルモンと構造が似ているポリフェノールの一種です。大豆イソフラボンを含んだタンパク質と、乳由来のタンパク質とで比べたところ、頭痛や乳房痛が緩和したと報告されています4)。しかしながら、大豆イソフラボンが効果を示したのかは今後検討が必要です。

PMSに悩む女性におすすめの食事

PMSはこれだけを食べれば予防できる、というものではなくバランスの良い食事が重要です。さらに、血糖値を急激に上昇させない工夫が必要です。血糖値が急激に上がらない食事の秘訣は、昔からよく言われている「まごわやさしい」です。まめ、ごま、わかめ、やさい、さかな、しいたけ、いもを意識して取り入れると良いという教えです。大豆に含まれているタンパク質やイソフラボンは、頭痛や乳房痛を緩和する可能性があります4)。

またアスリートの女子大学生を対象に、魚や干物を摂取した影響を検証した結果では、PMSの軽減とそれに運動能力の向上が報告されています11)。唯一カルシウムは、PMSの症状を軽減する効果が実証されています8)。わかめや海藻、牛乳やチーズなどの乳製品を意識して摂るようにしてみてください。

食事以外に取り組めるPMS対策

PMSを緩和するために食事以外に日頃からできることを紹介します。食べ物が大事とはいえ、毎日きちんと作るのは大変ですし、付き合いで外食が続くこともあるでしょう。

こちらでは、有酸素運動やアロマテラピー、漢方薬についてお伝えします。

有酸素運動

PMSの対策として、効果的なのは有酸素運動です。1日20分、週3回の有酸素運動は、PMSの食欲増加やほてりなどを抑える効果が示されています12)。有酸素運動は、1回運動しただけで効果が出るものではなく常日頃行うものなので、続けやすいもの、自分に合っているものを選んでください

水泳も、不安やうつ、気分の変調などのPMS症状に効果があると言われています13)。また、有酸素運動の中でも特にヨガは、背骨の柔軟性を維持することで、PMSだけでなく月経痛の緩和にも効果的です14)。

運動は、初めは短い時間でも構わないので定期的に続けるようにしましょう。

アロマテラピー

アロマテラピーは、不安感やうつ症状などの精神的症状や、倦怠感などの身体的症状を緩和させる可能性があると報告されています15)。柑橘系の香りの主成分であるリモネンは、交感神経を刺激し注意力を高める働きがあり、ラベンダーなどに含まれるリナロールは鎮静作用があると言われています15)。

倦怠感が強い時は柑橘系のアロマ、イライラしている時はラベンダーのアロマといったようにその時の体調によって使い分けるとより効果的です。

漢方

PMSの治療というと、真っ先に漢方を思い浮かべる方もいるでしょう。漢方は様々な生薬を組み合わせてできたものです。PMSのような多彩な不調には、体全体の不調にアプローチできる漢方が適しているのです。

バランスの良い食事や運動に気をつけていても効果が感じられない方や、PMSが辛く日常生活に差し支えるような症状がある場合は、医療機関を受診して漢方を処方してもらうと良いでしょう。

また、ドラッグストアで販売している漢方もあるので、医療機関を受診できない場合は薬剤師に相談するのもひとつの手です。

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PMSとダイエットとの向き合い方

月経前は、食欲がコントロールできなくて暴飲暴食してしまうことがあります。また、日頃からダイエットに取り組んでいる人は、月経前のむくみにより効果が出ず、ストレスを感じることもあるでしょう。過度のダイエットは、PMSを悪化させる可能性があるため注意が必要です。

PMSの症状が辛い月経前は、バランスの良い食事に気をつけ、十分な睡眠を取ることが大事です。また、ウォーキングなどの有酸素運動は、PMSの軽減だけでなくダイエットにもおすすめです。

まとめ

PMSは月経のある女性なら誰でも起こる不調ですが、周囲から理解を得られないことも多く我慢している女性も多くいるでしょう。ここでは、バランスの取れた食事や、PMSの不調を緩和する可能性がある栄養素について触れました。他にも有酸素運動やアロマテラピー、漢方なども紹介しています。

運動なら1日のうち10分、また食事であれば1食でもいいので、小さなことから始めてみてください。すぐに効果が出るようなものではないですが、細く長く続けてストレスなく習慣にしていくことが重要です。

参考文献

1) LORI M. DICKERSON et al. Premenstrual Syndrome. 2003 https://www.aafp.org/afp/2003/0415/p1743.html#afp20030415p1743-b44

2) Hashim MS, t al. Premenstrual Syndrome Is Associated with Dietary and Lifestyle Behaviors among University Students: A Cross-Sectional Study from Sharjah, UAE. 2019 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31426498/

3) C. Nagase et al. Soy, fat and other dietary factors in relation to premenstrual symptoms in Japanese women. 2004 https://obgyn.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1471-0528.2004.00130.x

4) M. Bryant et al. Effect of consumption of soy isoflavones on behavioural, somatic and affective symptoms in women with premenstrual syndrome. 2007 https://www.cambridge.org/core/journals/british-journal-of-nutrition/article/effect-of-consumption-of-soy-isoflavones-on-behavioural-somatic-and-affective-symptoms-in-women-with-premenstrual-syndrome/EF4E6707C4C16FC1176E51EA50292354

5) Nahid Fathizadeh et al. Evaluating the effect of magnesium and magnesium plus vitamin B6 supplement on the severity of premenstrual syndrome. 2010 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3208934/

6) Moslehi M, et al. The Association Between Serum Magnesium and Premenstrual Syndrome: a Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies. 2019 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30880352/

7) Adrianne Bendich, The Potential for Dietary Supplements to Reduce Premenstrual Syndrome (PMS) Symptoms 2000 https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/07315724.2000.10718907?needAccess=true&journalCode=uacn20

8) Anne Marie Whelan et al. Herbs, vitamins and minerals in the treatment of premenstrual syndrome: a systematic review 2009 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19923637/

9) Hajar Dadkhah et al. Evaluating the effects of vitamin D and vitamin E supplement on premenstrual syndrome: A randomized, double-blind, controlled trial. 2016 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4815371/

10) Retallick-Brown H, t al. A Pilot Randomized Treatment-Controlled Trial Comparing Vitamin B6 with Broad-Spectrum Micronutrients for Premenstrual Syndrome. 2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31928364/

11) T. Takeda et al. Fish Consumption and Premenstrual Syndrome and Dysphoric Disorder in Japanese Collegiate Athletes. 2016 https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1083318816001492

12) Mohebbi Dehnavi Z, t al. The effect of 8 weeks aerobic exercise on severity of physical symptoms of premenstrual syndrome: a clinical trial study. 2018 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29855308/

13) Maged AM, t al. Effect of swimming exercise on premenstrual syndrome. Arch Gynecol Obstet. 2018 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29350276/

14) Nirav Vaghela et al. To compare the effects of aerobic exercise and yoga on Premenstrual syndrome 2019 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6852652/

15) Somayeh Es-haghee et at. The Effects of Aromatherapy on Premenstrual Syndrome Symptoms: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Clinical Trials 2020 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7769645///

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