月経前になるとちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んだ気分が続いたり、集中力がなくなったりしませんか?月経が始まる1〜2週間前に起こる、体と心の不調をPMS (月経前症候群)といいます。
PMSの症状には個人差があり、まったく気にならない人もいれば、日常生活に支障が出て病院を受診する人もいたりとさまざまです。病院でPMSの治療をする場合は薬を処方されますが、副作用が気になったり、体質に合わなかったりして、治療を断念しなければならないケースもあります。
また、病院に行く時間がなかったり、このくらいの症状はしかたがない…と我慢している人もいるのではないでしょうか。そんな方におすすめなのが、アロマテラピーです。
アロマって効果があるの?どんな種類があるの?使い方がわからない!そんな疑問を解決できるように記事にまとめました。
この記事でわかること
- アロマがPMSに及ぼす効果
- PMSにおすすめのアロマオイルの種類
- アロマの主な使い方
アロマがPMSに及ぼす影響
PMSに対するアロマの効果は、実験で証明されています。平均年齢20.6歳の日本人女性17人を2つのグループに分け、片方のグループに月経開始予定日の1週間前からラベンダーの香りを10分間嗅いでもらうという内容の実験を行いました。
その結果、ラベンダーの香りを嗅いだグループは、香りを嗅いでいないグループと比較して、PMSによる神経症状(気分の落ち込みや混乱など)が改善されたことが報告されています。この時、副交感神経のはたらきにより心拍数が低下していたことから、実際にリラックスしていることが示唆されました。
つまり、アロマの効果によってリラックスを促し、PMSのつらい神経症状を改善できたのです。
アロマがPMSにおすすめな理由
PMSの症状をやわらげるために重要なのが、アロマオイルの香りです。
わたしたちの感覚には、ものを見る『視覚』、音を聞く『聴覚』、肌で感じる『触覚』、味わう『味覚』、そしてにおいを感じる 『嗅覚』があります。嗅覚以外の感覚は理性をつかさどる『大脳新皮質』を経由して情報が伝えられますが、嗅覚だけは本能と感情をつかさどる『大脳辺縁系』に直接伝わります。
そして大脳辺縁系の近くには、ホルモンを分泌する脳下垂体や自律神経をコントロールする視床下部があるため、すぐにはたらきかけることができるのです。畳のにおいを嗅いで懐かしい気持ちになったり、お茶の香りでホッとした経験はありませんか?この懐かしい気持ちになったり、香りでホッとする現象は、香りの情報が脳へと伝わり、瞬時にホルモンや自律神経にはたらきかけて起こるものです。
つまり、嗅覚によってアロマオイルの香りが脳へ伝えられると、ホルモンや感情、自律神経にはたらきかけるため、PMS症状がスピーディーに緩和されることが期待できます。
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PMSにおすすめのアロマオイルの種類
それではどんな種類のアロマオイルがあって、どのようなPMSの症状に効果が期待できるのかをご紹介していきます。
精神的な神経症状や身体的な症状、またはその両方をあわせ持つアロマオイルなど、その効果はアロマオイルによってさまざまです。無印良品やニトリなど、身近な店舗でも種類が豊富にあるので、自分にあったアロマオイルを探してみましょう。
ラベンダー
抗不安作用と鎮静作用によるリラックス効果が期待できます。
ちょっとしたことでイライラしたり、月経痛がつらい、夜なかなか寝付けなくて困っている方におすすめです。
ラベンダーは、自律神経を整えることでリラックスを促せるため、医療現場でも患者さんの不安を和らげるために推奨されています1)。
イランイラン
抗炎症作用と鎮静作用、リラックス効果が期待できます。
月経痛があってイライラする方、気分が落ち込みやる気がでない方におすすめです。イランイランは、香りを吸収したあとに血圧や心拍数が低下し、鎮静効果があることが証明されました。
鎮静効果により気持ちが穏やかになるので、うつ病やストレスの緩和が期待できます2)。
ベルガモット
イライラした気持ちや情緒不安定など、気分障害の改善に効果が期待できます。落ち込んでメソメソしてしまう方や、気分を高めたい方におすすめです。
ベルガモットの主成分には、ラベンダーの主成分でもあるリナロールが含まれているため、自律神経を整える作用がはたらいて気持ちを落ち着けてくれます。
うつ病の改善にも効果が期待され、研究が進められています3)。
レモングラス
抗不安作用や全身のむくみの緩和に効果が期待できます。
気持ちが沈んで何も手につかない方や、手足や顔などがむくみやすい方におすすめです。
まだ動物実験のレベルではありますが、レモングラスの成分をマウスに経口投与したところ、抗不安薬を使用したときと同じ効果をもたらしたことが報告されています4)。
ゼラニウム
ストレスの緩和や全身のむくみの緩和に効果が期待できます。イライラした気持ちが抑えられなかったり、手足や顔などがむくみやすい方におすすめです。
ゼラニウムを使ったアロママッサージの臨床試験では、うつ状態の改善や代謝のバランスの回復、そして頭痛、胸痛、腹部膨満、手足のむくみなどの身体症状が改善したことが報告されています5)。
クラリセージ
鎮静作用や自律神経のコントロール、ストレスの緩和に効果が期待できます。月経痛がつらい方や、気持ちが落ち込みやすく何をするにも億劫な方におすすめです。むくみ・疲れ・強い眠気などの身体的症状や、イライラ・不安・落ち込みなどの精神的症状が改善されたという報告があります6)。
ジュニパー
抗不安作用と全身のむくみの緩和に効果が期待できます。不安や緊張を和らげたい方、手足や顔などのむくみが気になる方におすすめです。まだ動物実験のレベルではありますが、マウスの腹腔内投与にて抗不安作用が認められています7)。
アロマをブレンドするのも良い
アロマオイルのブレンドには、効果に着目してブレンドする方法や、自分だけの特別な香りを作るためにブレンドする方法があります。
【効果をブレンドする例】
月経痛がつらくてむくみが気になる時は、
- イランイランとレモングラス
- ラベンダーとジュニパー
【香りをブレンドする例】
- 柑橘系が好き:ベルガモットとレモングラス
- フローラル系が好き:ラベンダーとゼラニウム
ブレンドの組み合わせは自由自在です。
しかし、ブレンドする時に注意しなければいけないこともあります。
【ブレンドする時の注意点】
- 遮光性のある瓶に保存する
- 保管は直射日光の当たらない涼しい場所に
- 瓶の蓋はしっかり閉めてお子さんやペットの届かないところへ
- 香りの強いものはバランスをみてブレンド
アロマオイルは、防腐剤無添加なので、柑橘類は開封から半年から1年、その他は1年から2年程度を目安に使用しましょう。
アロマの主な使い方
お気に入りのアロマオイルを見つけたり、自分の好みに合わせてアロマオイルをブレンドできたら、さっそく香りを楽しんでみましょう。アロマテラピーの初心者でも手軽に楽しめる、おすすめのアロマオイルの使い方をご紹介します。
そもそもアロマテラピーとは
アロマテラピーとは、植物の香り成分を抽出し濃縮した精油(エッセンシャルオイル)を使って、健康や美容に役立てていく自然療法です。
リラックスを促すことで、健康の増進や本来持っている人間の治癒力を高めることが期待されると、病院やクリニック、スポーツ、予防医学など、さまざまなところでアロマテラピーが取り入れられるようになりました。
気分をリフレッシュしたい、心や体のバランスを整えたい、健康管理を充実させたい方におすすめです。
アロマバス
アロマバスは、オイルを3〜5滴ほどバスタブに落とし、よくかき混ぜてから入浴する方法です。湯気と一緒にアロマの香りが立ちのぼり、鼻や口、皮膚からも香り成分を吸収することができます。
入浴によるリラックス効果と、お湯で揮発したアロマオイルのはたらきにより、效果の高いアロマテラピーを体験できるので、バスタイムを豊かにしたい方におすすめです。
ディフューザー
アロマディフーザーには、超音波式のものや加熱式のものなどがあります。
- 超音波式とは、電気を使い超音波によってオイルをミスト化するもの。
- 加熱式とは、キャンドルなどで加熱しオイルを気化するもの。
超音波式も加熱式も、水に数滴のオイルを垂らして使います。空気の流れによって部屋全体に香りを広げることができるので、自分好みの空間を作りたい方におすすめです。
アロマストーン
アロマストーンは、素焼きの陶器や石膏で作られたストーンに、オイルを染み込ませて香りを楽しむものです。電気や火を使わないので置く場所を選ばず、インテリアとしても注目を集めています。
アロマテラピーに興味はあるけど面倒くさそう、ペットや小さい子どもがいて今まで挑戦できなかったという方におすすめです。
アロマスプレー
アロマスプレーとは、植物から抽出したオイルに精製水や無水エタノールを加えて作るスプレーです。枕やクッション、衣類やマスクなどにシュッと吹きかけるだけで、簡単に香りを楽しむことができます。
アロマスプレーの魅力は、なんといっても持ち運びができる便利さです。外出先でもアロマの香りを楽しみたい方、手軽にアロマの香りに包まれたい方におすすめです。
漢方薬で体内環境を改善
PMSの症状の改善や予防として、漢方薬を処方されることがあります。漢方薬は体内の不調を緩やかに改善してくれるます。そのため、即効性はあまりなく、体内環境が整うまでに時間がかかります。その一方で、決まったタイミングで漢方薬を飲むだけで効果が出ますので、日常生活に取り入れやすいのもいいところです。PMSの症状別におすすめの漢方薬をご紹介します。
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):体や頭が重く感じる方
- 桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン):肩こり、腹痛、のぼせがある
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン):イライラ、憂鬱さを感じる
漢方薬はあなたの体質や症状に合ったものを処方してもらいましょう。漢方薬のことがわからない、気になるけれど病院に行く暇がないといった方は、ネットで薬剤師に相談して購入できるショップもあるので、相談してみるのもおすすめです。
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まとめ
PMSの症状には個人差がありますが、毎月あるものと考えたら、身体的にも精神的にもつらいものです。それでも薬に頼ることに抵抗があったり、病院に行くのをためらったりすることもあるかもしれません。
アロマテラピーは植物由来の自然療法です。ホルモンの分泌や自律神経をコントロールすることで、PMSの改善が期待されます。
アロマテラピーによってPMSの症状が緩和されたという研究結果がいくつもあり、健康の増進や本来の治癒力を高めるために医療現場などでも取り入れられています。つらい症状は我慢せず、自分に合ったアロマの種類や使い方でケアしていきましょう。
参考文献
1) Kang HJ, et al. :How Strong is the Evidence for the Anxiolytic Efficacy of Lavender?: Systematic Review and Meta-analysis of Randomized Controlled Trials, 2019 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31743795/
2) Tan LT, et al. :Traditional Uses, Phytochemistry, and Bioactivities of Cananga odorata (Ylang-Ylang),2015 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4534619/
3) Lv XN,et al Aromatherapy and the central nerve system (CNS): therapeutic mechanism and its associated genes. 2013 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23531112/
4) Umukoro S, t al. :Evaluation of the anticonvulsant and anxiolytic-like activities of aqueous leaf extract of Cymbopogon citratus in mice,2019 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31730523/
5) Seyede Maryam Lotfipur-Rafsanjani et al. :Effects of Geranium Aromatherapy Massage on Premenstrual Syndrome: A Clinical Trial,2018 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6238350//
6) 松田 香, 白石 三恵:月経前症候群の症状を有する女性へのアロマテラピーの効果に関する系統的レビュー ―精神症状・身体症状・自律神経活動に着目して―,2021 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjam/advpub/0/advpub_JJAM-2021-0019/_article/-char/ja/
7) Zhang K, et al. :The anxiolytic effect of Juniperus virginiana L. essential oil and determination of its active constituents,2018 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031938418300106?via%3Dihub