更年期になると、様々な症状に悩まされたり運動をしても痩せにくくなったりする女性は多いです。それは年齢を重ねるごとに女性ホルモンのエストロゲンが減少することが原因だと考えられています。エストロゲンが減少すると自律神経が乱れて様々な症状が出たり、内臓脂肪が落ちにくくなるといわれています。
今回は、更年期障害に効果的な運動や、運動するときの注意点などを解説します。更年期に悩んでいる人や痩せたいと思っている人は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- 更年期とは
- 更年期の身体的変化
- 更年期におすすめの運動
- 運動するときの注意点
更年期とは
更年期とは、閉経を挟んだ前後5年間のことをいいます。個人差がありますが50歳前後で閉経を迎える女性が多く、45歳~55歳に更年期になる女性がほとんどです。
更年期はホルモンバランスの崩れから様々な身体的・精神的症状に悩まされる女性が多く、人によっては日常生活に支障が出てしまう人がいます。ホルモンバランスだけではなくストレスによっても症状が悪化するため、症状に悩んでいる人は普段からストレスを溜めないことが大切です。
更年期の女性の身体に起こる変化
エストロゲンには内臓脂肪が溜まるのを防ぐ働きがあるので、更年期になってエストロゲンが減少すると痩せにくくなります。
また、エストロゲンの減少によって骨粗しょう症やメンタルヘルスの不調、心疾患のリスクが高まります。
運動が骨密度を維持向上させたり、筋力の向上やイライラに効果があることが報告されているので、定期的に運動するよう意識してみてください1)2)3)。
女性と男性の生活習慣の違い
年齢を重ねるごとに病気になるリスクが高まるのは、男性も女性も同じです。しかし、男性より女性の方がバランスの良い食事を心掛けたり、アルコールの摂取量が少なかったりする傾向があります。また、女性は月経があることから自身の健康を気にする習慣が付いている人が多いといわれています。
更年期の女性の身体には閉経がある
女性は50歳前後で閉経を迎えます。閉経とは、卵巣の活動が消失し、月経が永久に止まることです。閉経によって女性ホルモンが減少すると内臓脂肪が落ちにくくなり、筋肉量や筋力が低下します9)。
筋肉が減ると代謝が落ち、痩せにくくなる原因になります。筋肉量の低下を防ぐためには、普段から筋トレを行い筋肉量を維持することが大切です。また、脂質の代謝が落ちるため、脂っぽい食事はなるべく避けるようにしましょう。
女性ホルモンの変動で起こりやすくなる疾患
更年期の女性ホルモンの変動によって、以下の疾患が起こりやすくなります。
- ホットフラッシュ(ほてりやのぼせ)/
- めまい
- 頭痛
- イライラ
- 不眠 など
更年期になると別の病気が関係している可能性もあるので、気になる症状がある人は早めに医師に相談しましょう。
運動で更年期の症状が緩和される理由
日常的に運動をすることで、更年期の症状を緩和できます。なぜ運動によって更年期の症状を緩和できるのか、理由を解説します。更年期に運動が効果的な理由を知りたい人は、参考にしてみてください。
体重がコントロールできる
体重をコントロールするために、定期的な運動が重要です。
更年期になると内臓脂肪を溜まりにくくするエストロゲンが減少するため、お腹周りを中心に太りやすくなります。中高年以降の女性は、毎年0.5㎏ずつ体重が増えていくといわれており、体重をキープするためには定期的な運動が欠かせません。
内臓脂肪が増えると脂質異常症や糖尿病などの病気を引き起こす可能性もあるため、定期的に脂肪を落とす運動をして体重をコントロールしましょう。
骨の健康を保ち、骨折リスクを低らす
骨は常に新しい骨をつくる骨芽細胞と古い骨を壊す破骨細胞により作り変えられています。骨の健康を保つためには、この代謝のバランスが重要です。
しかし、更年期になりエストロゲンの分泌量が減ると、骨を壊す破骨細胞の働きが盛んになり、骨を作り変えるバランスが崩れてしまいます。すると、骨粗しょう症や骨折などのリスクが高まります5)。
更年期の女性が骨の健康を保つためには、運動が有効だと言われています3)。実際に有酸素負荷運動や、ウォーキングなどにより腰椎や大腿骨周辺の骨密度が上昇したという報告があります5)。
また運動をすることにより、筋力も上がるため、転倒によるケガや、骨折のリスクを低減させられるかもしれません。
運動により心疾患リスクを防ぐ
更年期にはコレステロールの代謝に関わるエストロゲンの減少に伴って、コレステロール値が高くなる事が知られています。
また、コレステロールが高い状態が続くと、心疾患のリスクが増大します。 運動はコレステロール代謝を改善するため、心疾患の予防に好ましいと考えられています6)。
運動は心のケアにも有効
更年期には身体の不調に加え、ホルモンバランスの変動などから、心理的な不調も感じやすくなると言われています。 研究データによると、運動により更年期女性のメンタルヘルスが改善。生活の質が向上したと報告されています7)。
身体の不調だけでなく、心理的な不調も抱えている場合、不安の解消や予防に、運動が有効かもしれません。
メンタルヘルスの向上
更年期には身体の不調に加え、ホルモンバランスの変動などから、心理的な不調も感じやすくなると言われています。研究データによると、運動により更年期女性のメンタルヘルスが改善。生活の質が向上したと報告されています7)。
身体の不調だけでなく、心理的な不調も抱えている場合、不安の解消や予防に、運動が有効かもしれません。
更年期におすすめの運動
運動は、基準として「息が弾み汗をかく程度の運動を毎週60分」行うのがいいとされています。更年期におすすめの運動を紹介するので、運動しても痩せないと悩んでいる人や更年期の症状を改善したい人は、参考にしてみてください。
ウォーキング
更年期を改善するには、ウォーキングがおすすめです4)。ウォーキングをすると自律神経が整うため、更年期の症状の改善はもちろんのこと予防の効果も期待できます。
ウォーキングをするときは、少し息が弾み会話がなんとかできる程度の速度で「1日トータル20分」を目標に行いましょう。
ウォーキングは健康促進や生活習慣病の予防、ダイエットとしても効果が期待できるため、定期的に実施してみてください。
軽い有酸素運動
ジョギングやサイクリング、水泳などの軽い有酸素運動も更年期の改善におすすめです。特にサイクリングは景色を楽しみながらできるので、リフレッシュやストレス発散効果も期待できます。
また、水泳は身体への負担を抑えながら運動できるというメリットがあります。水圧によって血行促進の効果が期待でき、さらに水中を歩くだけでも全身を鍛えられるため、更年期世代の人におすすめの運動です。
筋力トレーニング
スクワットや上体起こしといった筋力トレーニングも、更年期の女性におすすめの運動です。
年を重ねるごとに、筋肉量や筋力が落ちます。筋肉量が少なくなると代謝が落ちるため、カロリーを消費しにくくなり太りやすくなります。
また、筋力トレーニングによって、メタボリックシンドロームのリスクが低下することが研究でも分かっているので、生活習慣病の対策にも効果的です8)。
ストレッチ
更年期障害の症状緩和には、寝る前のストレッチも効果的です。更年期女性を対象とした研究で、寝る直前にストレッチを行うチームと通常の生活を送るチームに分けて調査したところ、ストレッチをしたチームの方が更年期症状の平均値が正常レベルまで軽減されるという結果が報告されました10)。
ヨガなどのストレッチは、「寝る前に10分程度」行うのがおすすめです。ヨガの壁に足を上げるポーズや仰向けになって身体をねじるストレッチなどをして、更年期の改善を目指しましょう。
運動するときの注意点
運動をするときは、以下のことに注意してください。
- 腰や膝に負担が大きい運動は避ける
- 激しい運動は避ける
更年期になると腰や膝に痛みを抱える人もいるため、大きな負荷がかかる運動は避けましょう。
また、激しい運動は疲労骨折や怪我につながる可能性があるので注意が必要です。無理に運動をすると逆に体調を崩したり身体を痛めたりする可能性があるため、自分の体調や身体と相談しながら無理のない範囲で行いましょう。
更年期には食事にも注目
更年期の症状を改善、予防するためには、運動療法はもちろんのこと食事も重要です。栄養が偏った食事はホルモンバランスが乱れる原因となるので、更年期の症状を悪化させる可能性があります。
更年期になると太りやすくなるため、食事量を抑えたり食事を抜いたりする人がいますが、1日3食しっかり食べることが大切です。脂質の多い食事は避け、バランスのよい食事と定期的な運動を心がけ健康的な身体を目指しましょう。
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漢方薬を取り入れることで諸症状の緩和に繋がることも
つらい更年期症状には漢方薬の服用も有効です。漢方薬は、その人の体質や生活習慣など様々なことを総合的に見直し、体の内側から緩やかに症状を改善していくものです。漢方薬には様々なものがありますが、更年期症状に有効な漢方薬は以下のとおりです。
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン):抑うつやイライラ、ほてり、のぼせなど
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):冷えや貧血の傾向がある
- 桂枝茯苓丸(キエシブクリョウガン):のぼせや頭痛、下腹部痛などがある
更年期の症状には個人差があり、症状にあった漢方薬の服用が必要です。漢方薬はゆっくり症状を改善してくれるので、生活に取り入れやすいため、すこしずつでも症状を軽くしたいといった方はぜひ医師や薬剤師に相談してみてください。
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まとめ
更年期の症状は、運動によって改善・予防ができます。更年期症状に悩んでいる人は、ウォーキングや筋力トレーニングなど定期的に運動をしてみましょう。運動は更年期障害以外にも、生活習慣病の予防やストレス発散、運動不足解消にも効果が期待できるのでおすすめです。
また、更年期の症状を改善するためには運動療法だけではなく、1日3回バランスの良い食事を摂ることも大切です。バランスの良い食事と定期的な運動を取り入れ、健康的な生活を送りましょう。
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参考文献
1) 厚生労働省.国民健康・栄養調査.2017 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html
2) 宮内清子.更年期女性に対する健康教育に関する過去10年間の文献検討.2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/17/1/17_1_3/_pdf
3) Natalia M Grindler.Menopause and exercise.2015 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26382311/
4) Beate C Sydora.Can walking exercise programs improve health for women in menopause transition and postmenopausal? Findings from a scoping review.2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32404793/
5) 折茂肇.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン.2015 http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf
6) I Coll-Risco.Effects of concurrent exercise on cardiometabolic status during perimenopause: the FLAMENCO Project.2018 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30392388/
7) Jolanta Dąbrowska.Twelve-week exercise training and the quality of life in menopausal women - clinical trial.2016 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27095954/
8) Miguel Soares Conceição.Sixteen weeks of resistance training can decrease the risk of metabolic syndrome in healthy postmenopausal women.2013 ResultsMetabolic syndrome Z-score 1224 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24072967/
9) M L Maltais.Changes in muscle mass and strength after menopause.2009 Abstruct https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19949277/
10) Kai Y et al., Menopause, 2016 https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/introduce/detail.php?id=c3b41ea2c8e0023043386d9dfbc4c097&tmp=1546896998