更年期の女性の身体的特徴

更年期には、エストロゲンの急激な減少に加えて、加齢や長年の生活習慣によって様々な症状が出現しやすくなります。
また、一般的に女性の身体は男性に比べて脂肪が多く筋肉が少なく、更年期以降の女性はさらに体脂肪が蓄積しやすくなっています。実際に「国民健康・栄養調査」でも、40代女性のBMI25以上は17.4%、50代になると22.2%と増加しています1)。
それだけでなく、エストロゲンの減少によって心疾患、骨粗鬆症、メンタルヘルスの不調といったリスクが上昇する可能性があります。
更年期女性に対する運動の効果を報告した研究では、閉経前の女性のランニング程度の運動が骨密度を維持向上させることがわかっています。2)
また、日頃、座位中心の生活スタイルの女性がレジスタンス運動(スクワットやダンベルトレーニングなど筋肉に抵抗を与える運動)を行うと筋力の向上、血中脂質、骨密度の効果があることも報告されています2,3)。
さらに、更年期についての知識と運動の指導を組み合わせることで、しびれや感覚異常、イライラ感に効果があることなどが報告されています2)。
以下で詳しく解説していきます。
運動は更年期症状を緩和させる
更年期症状が、ウォーキングをすることによって緩和したというデータがあります4)。
気になる更年期症状があるようでしたら、自身の活動量を見直してみると良いかもしれません。
運動は体重のコントロールに重要である
更年期には脂質を代謝する作用を持つ、エストロゲンが減少するため、内臓脂肪が蓄積しやすくなります。
太ったなどの見た目の悩みも気になるところですが、内臓脂肪の蓄積や肥満は、糖尿病や脂質異常症、更年期のほてりのリスクをあげる原因となり、身体にも大きな影響を及ぼします。
運動はこうした肥満と、それに関連する疾患のリスクの低減に効果的であると言われています。
運動により骨の健康を保つ・骨折リスクを低減できる
骨は常に新しい骨をつくる骨芽細胞と古い骨を壊す破骨細胞により作り変えられています。骨の健康を保つためには、この代謝のバランスが重要です。
しかし、更年期になりエストロゲンの分泌量が減ると、骨を壊す破骨細胞の働きが盛んになり、骨を作り変えるバランスが崩れてしまいます。すると、骨粗鬆症や骨折などのリスクが高まります5)。
更年期の女性が骨の健康を保つためには、運動が有効だと言われています3)。実際に有酸素負荷運動や、ウォーキングなどにより腰椎や大腿骨周辺の骨密度が上昇したという報告があります5)。
また運動をすることにより、筋力も上がるため、転倒によるケガや、骨折のリスクを低減させられるかもしれません。
運動により心疾患リスクを防ぐ
更年期にはコレステロールの代謝に関わるエストロゲンの減少に伴って、コレステロール値が高くなる事が知られています。
また、コレステロールが高い状態が続くと、心疾患のリスクが増大します。 運動はコレステロール代謝を改善するため、心疾患の予防に好ましいと考えられています6)。
運動は心のケアにも有効
更年期には身体の不調に加え、ホルモンバランスの変動などから、心理的な不調も感じやすくなると言われています。 研究データによると、運動により更年期女性のメンタルヘルスが改善。生活の質が向上したと報告されています7)。
身体の不調だけでなく、心理的な不調も抱えている場合、不安の解消や予防に、運動が有効かもしれません。
更年期の女性が運動しても痩せない原因
更年期の女性が運動しても痩せない原因には、閉経が関係しています。
閉経により女性ホルモンが減少することで内蔵脂肪が増加し、筋肉量や筋力は減少します9)。筋肉が減ると運動による燃焼エネルギーも減るので、痩せにくくなるというわけです。筋肉が減るのを防ぐために、日常的に軽い筋トレをして筋肉量を維持しましょう。
また一般的に十分な運動をしていたとしても、脂質が多い食事を続けていたら痩せられません。特に更年期は脂質の代謝が落ちるので、油っぽい食事よりも、さっぱりとした和食のほうがおすすめです。
理想的な身体活動の基準

厚生労働省の健康づくりのための身体活動基準2013では、18~64歳の身体活動(生活活動・運動)の基準として、「息が弾み汗をかく程度の運動を毎週 60 分行う」とされています。
例えば、ウォーキングや自重で行う軽い筋力トレーニングなどがあります1)。
更年期の女性におすすめの運動|ダイエットにも
更年期障害におすすめの運動は、ウォーキングです4)。全身運動により、更年期で乱れた自律神経が整うため、更年期症状の緩和だけでなく悪化の予防にも役立ちます。ウォーキングなどの有酸素運動は脂肪を落とす運動としても適しているため、ダイエットにも効果的です。
また、スクワットや上体起こしなどの筋力トレーニングもおすすめです。ある研究では、レジスタンス運動(筋肉に負荷をかける運動)をすることで、運動をしない場合と比べてメタボリックシンドロームのリスクが低下するといわれています8)。
たまに激しい運動をするよりも、自分のペースでできる運動を毎日続けるほうが大切です。更年期にどんな運動から始めればいいかわからない方や、日頃の運動不足を解消したい方は、手軽に始められるウォーキングから取り入れましょう。
運動時の注意点
更年期の症状をかかえた方にとって、運動は不安な要素もあるのではないでしょうか?
特に以下のことに注意しなくてはなりません。
- 腰やひざに負担がかかる運動
- はげしい運動
更年期になると、腰や膝に痛みを抱える方も多いでしょう。負荷が大きい運動は、腰や膝の痛みにつながるので注意しましょう。また激しい運動をしすぎると、動悸や疲労骨折を引き起こす可能性があるので注意が必要です。
寝る前のストレッチも大切
寝る直前にストレッチを行うと、「顔がほてる、疲れやすい」などの更年期症状が良くなることがわかっています。
更年期女性40名を対象にしたある研究では、20名に、ヨガを取り入れたストレッチを毎日寝る直前に10分間行ってもらい、残りの20名には普段と同じ生活を3週間してもらいました。その結果、ストレッチをしたチームでは、更年期症状の平均値がストレッチをしなかったチームと比べて正常レベルまで軽減することがわかりました10)。
ヨガなどの手軽にはじめられるストレッチを、寝る直前に10分間程度行うことがおすすめです。ヨガのポーズの1つである英雄のポーズや、子供のポーズなど、無理ない範囲でのストレッチをしてみましょう。
更年期には食事にも注目
更年期症状の改善には、運動療法だけでなく食事も重要です。食生活がかたよると、自律神経が乱れる原因になります。
更年期の女性は、豆腐や納豆などの大豆製品を食事に取り入れることがおすすめです。
大豆には、更年期で減少する女性ホルモンのエストロゲンと似た成分が入っています。そのため、大豆を摂取することで更年期症状の緩和が期待できます。
魚や乳製品などから、カルシウムも積極的に摂りましょう。骨折しやすくなる閉経後に向けて、女性の骨を強くしてくれます。
また、一般的に閉経後はLDLコレステロール値が上昇するため、更年期の頃から肉の脂身や生クリームなど、脂質の多い食事を摂りすぎない習慣をつけることも大切です。LDLコレステロールの上昇は、動脈硬化などを引き起こす可能性があります。
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漢方薬を取り入れることで諸症状の緩和に繋がることも
つらい更年期症状には漢方薬の服用も有効です。漢方薬は、その人の体質や生活習慣など様々なことを総合的に見直し、体の内側から緩やかに症状を改善していくものです。漢方薬には様々なものがありますが、更年期症状に有効な漢方薬は以下のとおりです。
- 加味逍遙散(カミショウヨウサン):抑うつやイライラ、ほてり、のぼせなど
- 当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン):冷えや貧血の傾向がある
- 桂枝茯苓丸(キエシブクリョウガン):のぼせや頭痛、下腹部痛などがある
更年期の症状には個人差があり、症状にあった漢方薬の服用が必要です。漢方薬はゆっくり症状を改善してくれるので、生活に取り入れやすいため、すこしずつでも症状を軽くしたいといった方はぜひ医師や薬剤師に相談してみてください。
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まとめ
以上、更年期女性に運動が重要な5つの理由でした。
辛い更年期の不調や、あらゆる疾患のリスクを下げるため、日々の生活に運動を取り入れてみると良いかもしれません。
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参考文献
1) 厚生労働省.国民健康・栄養調査.2017 https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189_00001.html
2) 宮内清子.更年期女性に対する健康教育に関する過去10年間の文献検討.2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kenkokyoiku/17/1/17_1_3/_pdf
3) Natalia M Grindler.Menopause and exercise.2015 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26382311/
4) Beate C Sydora.Can walking exercise programs improve health for women in menopause transition and postmenopausal? Findings from a scoping review.2020 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32404793/
5) 折茂肇.骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン.2015 http://www.josteo.com/ja/guideline/doc/15_1.pdf
6) I Coll-Risco.Effects of concurrent exercise on cardiometabolic status during perimenopause: the FLAMENCO Project.2018 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30392388/
7) Jolanta Dąbrowska.Twelve-week exercise training and the quality of life in menopausal women - clinical trial.2016 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27095954/
8) Miguel Soares Conceição.Sixteen weeks of resistance training can decrease the risk of metabolic syndrome in healthy postmenopausal women.2013 ResultsMetabolic syndrome Z-score 1224 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24072967/
9) M L Maltais.Changes in muscle mass and strength after menopause.2009 Abstruct https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19949277/
10) Kai Y et al., Menopause, 2016 https://www.my-zaidan.or.jp/tai-ken/introduce/detail.php?id=c3b41ea2c8e0023043386d9dfbc4c097&tmp=1546896998