「顔や頭が熱くなって汗をかく」、「体や手足が熱い」などの「のぼせ」や「ほてり」の症状を感じている場合、それは更年期障害のホットフラッシュかもしれません。
更年期症状の現れ方には個人差がありますが、ほてり、のぼせを強く感じる人は「気」や「血」の巡り、「水」の異常を改善する方法で症状を解消できることがあります。ここでは漢方を中心にホットフラッシュを解消する方法をご紹介します。
この記事でわかること
- ホットフラッシュの原因
- ホットフラッシュに効果のある漢方薬
- 自分でできるホットフラッシュを和らげる方法
ホットフラッシュとは
ホットフラッシュとは、更年期障害のひとつで、ほてりやのぼせ、発汗などの症状のことをいいます。
周りの環境になく発症することが多く、多くの更年期を迎えた女性の悩みの一つです。「ほてり」とはからだの異常な熱感のことをいいます。そのほてりが頭や顔に生じた場合を「のぼせ」とよびます。この症状は更年期障害で経験する女性が多く、まとめてホットフラッシュと呼んでいます。
ホットフラッシュが起こる原因
更年期に起こるホットフラッシュの原因は、女性ホルモンのバランスの乱れ、自律神経の乱れと考えられています。
女性ホルモンのエストロゲンが減少し、ホルモンバランスが崩れ、体温調整を含む様々な身体の生理現象を司る自律神経の調節もうまくいかなくなることで起こると考えられています。
ホルモンや自律神経の乱れは、血管の収縮や拡張を引き起こすと考えられています。血管が拡張して血流が一気に増えると、ほてりが起こります。
ホットフラッシュに効果的な漢方薬
ホットフラッシュに効果的な漢方薬は、
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
- 黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
などを用います。
漢方の考え方では、特定の症状を改善するというよりも、身体全体の状態やバランスを正常な状態に戻すという方法で治療をおこないます。
漢方では、身体は、「気(き)」、「血(けつ)」、「水(すい)」の3つの柱で支えられていると考えられており、更年期障害の症状は年齢による3本柱の崩れからきていると考えています。
この3本柱のバランスを整えていくことで症状を解消していきます。漢方は個人によって効き目が様々なので、ご自身に合うものを見つけていくことが大切です。
以下でそれぞれの漢方について詳しく紹介していきます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
婦人科の三大漢方薬の一つで、主薬となる「桂皮(けいひ)」はシナモンでなじみのある植物由来の植物です。血の巡りを良くすることで、のぼせを取って頭をスッキリさせてくれる効果があります。
茯苓には気分を落ち着かせる作用や身体の水の流れを促す作用があります。桂枝茯苓丸が合うタイプの方は、比較的体格が良く頑丈なタイプの人や、赤ら顔、のぼせ、発汗症状が強い人となります。1)
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
婦人科の三大漢方薬の一つで、血行障害やうっ血などを表す「血(けつ)」の不足を補い、身体全体の血液の巡りをよくして、体を温める作用があります。
主に疲れやすく、下半身の冷え、貧血傾向で少しむくみ気味、めまい、頭痛、肩こりのある人に用いられます。 1)
加味逍遙散(かみしょうようさん)
婦人科の三大漢方薬の一つで、月経異常や更年期障害など女性特有の症状に効果が期待できます。「気」の流れを改善することで「血」と「水」の巡りを改善すると言われています。
気持ちが落ち込んだり、イライラなど、精神的な不安感を持つ人に適しています。体力がなく、肩こりやめまい、頭痛のある人に用いられます。
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
比較的体力がある方向けの漢方です。ほてりと不眠に効果があります。黄連解毒湯は、身体の上部にこもった熱を下に下ろす作用があり、身体の熱を冷ます作用がある漢方の代表的なものです。体力がある方やのぼせやイライラが強い方に向いています。
自分でできる|ホットフラッシュの解消方法
「ホットフラッシュかも?」と思ったら、腹式呼吸で深呼吸をしたり、アロマなどで心と身体をリラックスさせ自律神経を整え、心を落ち着かせる方法や、身に付けるものを通気性の良いものにしたり、涼しい部屋で休むなどして身体を冷ます方法で解消できます。
腹式呼吸や落ち着く体勢でリラックスする
意識的に深い呼吸をしてリラックスしてみましょう。毎日3回ほどで構いません。深呼吸は自律神経を通じて副交感神経を優位にして、ほてりを和らげます。
また、心を落ち着かせる効果があるアロマやハーブティーを取り入れることもおすすめです。
ペパーミント、レモン、サイプレス、ゼラニウム、ラベンダー、クラリセージなどはホットフラッシュを落ち着かせたり、予防する効果があるといわれています。
首筋や体を冷まして体温を下げる
身体のほてりや発汗を物理的に改善することも効果があります。
通気性のよい服を着て熱を身体にためない、部屋を換気して涼しくする、首筋を濡れタオルやウェットティッシュなどで冷やすなどで体をさます方法で解消していくこともできます。
首付近に通っている太い血管の熱を冷ませることで体全体の熱を冷まします。
ツボを押す
ホットフラッシュには、「太衝(たいしょう)」「百会(ひゃくえ)」「合谷(ごうこく)」「照海(しょうかい)」のツボがおすすめです。
息を吐きながら、5秒間押します。それを1つのツボに対して3回繰り返します。ちょっと痛いけど気持ちいいと感じる程度の力加減がツボ押しの強さの目安です。
- 太衝(たいしょう)
イライラを改善したり、のぼせにも効果があります。
足の甲の親指と人差し指の骨が交わるところのすぐ前のへこんだ場所です。
- 百会(ひゃくえ)
太衝同様、イライラやのぼせに効果があります。
頭頂部の真ん中、少しへこんでいる場所です。
- 合谷(ごうこく)
大量の発汗や手足の冷えに効果があります。
手の甲の親指と人差し指の骨が交わるところから、人差し指の方に向かって押していき、痛みを感じる場所です。 - 照海(しょうかい)
女性ホルモンの分泌を手助けしてくれます。
内くるぶしの骨の一番高い部分から自分の親指一つ分下がった場所です。
食生活の改善
食生活が不規則になると、自律神経のバランスを崩し、ホルモンバランスが乱れてしまいます。
食生活を見直し、規則正しくバランスの良い食事を摂ることが自律神経を整えることにつながります。
ホットフラッシュに効く食べ物
- 大豆製品
大豆イソフラボンには「エクオール」という女性ホルモンの働きを助ける成分が含まれており、ホットフラッシュを軽減させる効果があると言われています。
- 発酵食品や食物繊維の豊富な食事
エクオールとして女性ホルモンの働きを助けるには、摂取した大豆イソフラボンを腸内細菌で分解しなくてはいけません。そのためには腸内環境を整えることも重要です。
- オメガ3系脂肪酸
ほてりに効果があります。鯖などの青魚や亜麻仁油などに多く含まれています。
ホットフラッシュに効く飲み物
食べ物同様に、大豆製品の飲み物がおすすめです。大豆製品の飲み物には、豆乳があります。
カフェインは自律神経を乱す作用があります。
いつものカフェラテをノンカフェインのソイラテに変えてみることで、大豆製品を手軽に摂取し、カフェインの摂取量も減らすことができるのでおすすめです。
ノンカフェインのインスタントコーヒーは、スーパーなどで売られていて簡単に手に入ります。
コーヒーを飲むときに、ミルクの代わりに豆乳を入れることで、自宅でも簡単にソイラテを作ることができます。 また、リラックス効果のあるハーブティは、自律神経を整える作用があります。
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漢方を使ってホットフラッシュを改善しよう
様々な改善方法をご紹介しましたが、一時的な症状緩和ではなく、根本的に身体のバランスを改善していくという考えの漢方が自然な解決法としておすすめです。
漢方は、正しく服用しないと効果が得られない場合があります。過剰に摂取してしまったり、複数の漢方薬を同時に服用することで、それぞれの漢方薬に含まれる生薬のバランスが乱れ、効果が薄れることもあります。
相性や、効果が相反する作用を持つものもありますので、正しい知識を持った医師や薬剤師などの専門家のアドバイスに従って服用することをおすすめします。
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まとめ
更年期に感じやすい症状のほてりやのぼせについて、症状を軽減、改善する方法をご紹介しました。
まずは自身で手軽に行うことができる方法を取り入れながら、原因の一つであるストレスを減らして心身のバランスを整えていくことが大切です。
それでもなかなか改善しない場合や身体に感じられる効果がない場合は、漢方を取り入れるのをおすすめします。
自分の身体にあったものをストレスなく続けられるよう、漢方の専門医や薬剤師さんにしっかり相談し、自分に合った漢方ライフをスタートさせましょう。
参考文献
1)寺内公一.更年期女性への漢方診療の実際. 2018
2)Barnard, Neal D. MD.The Women's Study for the Alleviation of Vasomotor Symptoms (WAVS): a randomized, controlled trial of a plant-based diet and whole soybeans for postmenopausal women.2021 https://journals.lww.com/menopausejournal/Fulltext/2021/10000/The_Women_s_Study_for_the_Alleviation_of_Vasomotor.12.aspx
3) Atsushi Takahashi.Association of equol with obesity in postmenopausal women.2021 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33739312/
4) Saman Mohsenian. Carbohydrate quality index: Its relationship to menopausal symptoms in postmenopausal women .2021 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34274075/