めまいに効果的な漢方薬|めまいの原因・症状別にご紹介。

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

めまいがひどくて寝込んでしまったり、出先で起こるめまいが心配で外出できないなど、めまいで悩んでいませんか。

めまいの原因は様々で、耳や脳に異常がある場合もあれば、ストレスや冷えなど思いがけない原因で発症することもあります。

また、体質や気候でめまいの感じ方が変わることがあるため原因の特定が難しく、なかなか治らないと悩んでいる方が多いのです。

今回は、めまいの症状と原因、症状に合う漢方薬を紹介します。めまいに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

この記事でわかること

  • めまいのタイプと症状
  • めまいの種類と原因
  • めまいの種類ごとにおすすめの漢方薬
  • オンラインで漢方薬について相談ができるサービスの紹介

めまいとは

めまいとは、回転性眩暈(かいてんせいめまい)に伴う異常な感覚のことを言い、静かに座っているにも関わらず周囲が回って見えるといった症状が現れます4)。

めまいの急性期には、「めまい発作」という難聴や耳鳴りを伴う激しい症状を引き起こす場合もあり、「重たい病気にかかったのではないか」と不安に感じることもあります。

めまいには、耳からくるものや脳からくるものが多いとされていますが、ほかにも生活習慣病やストレス、気候など様々な要因が絡んで起こることがあります。

めまいのタイプと症状

めまいには、以下のような自覚症状があります。

  • ぐるぐるするめまい(回転する感じ)
  • フラフラするめまい(左右に揺れる感じ)
  • ふわふわするめまい(上下に浮く感じ)
  • クラッとするめまい(目の前が暗くなる)
  • 動いていないものが揺れて見えるめまい など

前触れもなく突然起こり、吐き気や耳鳴りを伴う場合もあります。

めまいが起こる原因とは?

めまいには本当に様々な原因が考えられます。生活リズムの乱れが最も大きな要因ですが、貧血や自律神経失調症、高血圧がめまいの原因となることも

めまいの原因を知りたい場合や症状が辛く漢方薬などで治療をしたい場合は医療機関を受診してみましょう。

ストレス、自律神経の乱れで起こるめまい

めまいとともに吐き気が生じる場合は、ストレスによるめまいである可能性があります。

忙しい現代人は、多少のストレスは日常茶飯事かもしれません。しかし、ストレスが過度にかかっている場合、自律神経の乱れや消化機能の低下、内耳機能の異常をきたし、めまいとともに吐き気を生じやすくなります

体のバランスを保つために重要な三半規管は、特にストレスに弱いと言われています。ぐるぐる回るめまいの代表であるメニエール病は、ストレス過多や睡眠不足の人がなりやすい傾向にあります。

血液が不足している

血液が不足している状態、いわゆる貧血の時にもめまいが起こることがあります。

赤血球中のヘモグロビンが減少すると、体内のすみずみまで酸素を運搬する役割に支障をきたします。それを補うために心臓が普段より活発に働くため息切れや動悸が現れます。

さらに貧血が悪化すると顔色の悪さや足のむくみの他、めまいの症状が出てきます。特に女性の場合は、毎月の月経により知らず知らずのうちに貧血になっていることが多いのです。

加齢や更年期によるめまい

加齢や更年期以降のめまいの原因として最も多いのが良性発作性頭位めまい症で、男女比は1:3で女性に多くみられます1)

良性発作性頭位めまい症は、なんらかの衝撃により耳の中の前庭の耳石器から剥がれた耳石が、三半規管に入り込むことで起こります。

頭の位置を変えた時に一時的に起こるめまいが特徴で、通常は2〜3週間で自然治癒しますが、高齢者の場合は症状が長引くこともあります1)。ぐるぐる回るようなめまいや左右にフラフラするめまいを起こすことが多いです。

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冷え性によるめまい

体が冷えていることは、漢方の世界では「水(すい)」が滞った状態(水滞:すいたい)です。

めまいの主な原因も水滞と言われており、冷え性とめまいは密接に関わっています。

水滞が原因のめまいでは、めまいの他に「むくみや頭がだる重い」症状を伴うことがあります

また、病気やストレスなどで抵抗力が下がると、代謝が低下して体が冷えてきます。

その他にも、パソコンなどで常に同じ姿勢を取り続けていることも、冷えからのめまいを引き起こす可能性があります。

原因・症状別|「めまい」におすすめの漢方薬とは?

めまいは、同じような症状に見えても、原因やその人それぞれの体質によって全く異なる漢方薬が使われます。

ここでは、めまいに効果的な漢方薬を症状別に紹介します。

どんなめまいにも効果的「沢瀉湯(タクシャトウ)」

「天井グルグル沢瀉湯」という言葉がめまい診療時に使われることがあります。

沢瀉湯はめまいのファーストチョイスとして、回転性のめまいや立ちくらみなどにも用いられます

沢瀉湯がどうしてめまいに効くのか詳細は不明であるものの、利尿作用により耳の中における水分バランス調整作用が働いていると考えられています2)。吐き気を伴う場合や耳鳴りめまいにもたびたび使用されます。また、横になって安静にしていても治らないめまいにも効果的です。

ストレスには「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」

ストレスからくるめまいには「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」が使われます。月経異常や、更年期障害など女性特有の症状によく用いられる「産婦人科三大処方」のひとつです。

肩こりやめまい、頭痛のほか、のぼせや発汗、イライラなどの多様な心身の不調を和らげます。

加味逍遙散は、神経の高ぶっている場合は抑える方向へ、落ち込んでいる時は気持ちを上げる方向へと働きかけます。そのため、多種多様なストレスからくる不快なめまいに使えるのです。

血液不足には「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」

血液不足が原因のめまいに効果的なのは当帰芍薬散です。ツムラやクラシエなど多くの会社からエキス剤として市販されており、番号は23番です。

当帰芍薬散は、当帰や芍薬など6種類の生薬から構成されており、女性に不足しがちな「血(けつ)」を補います。

以下のような症状がある方は、血(けつ)が不足している可能性があります。

  • 月経が遅れがち
  • 冷え性
  • 貧血

当帰芍薬散で血(けつ)を補うことで、貧血や冷え性を改善し、血液不足によるめまいに効果があると考えられています。

更年期には「苓桂朮甘湯(リョウケイジュツカントウ)」

更年期の症状のひとつとしてめまいが出ることがあります。のぼせや発汗などが一般的に更年期に起こる症状だと考えられがちですが、めまいも更年期に悩む多くの方に出る症状です。

このような更年期によって起こるめまいに効果的なのは、苓桂朮甘湯です。

比較的体力が低下した方のめまいや立ちくらみ、ふらつきに用いられる漢方薬で、番号は39番です。

また、婦人科三大処方のひとつである「当帰芍薬散」も、更年期における頭痛や肩こり、めまいに処方されることがあります3)。

冷え性には「五苓散(ゴレイサン)・真武湯(シンブトウ)」

冷え性が引き起こすめまいは、体の「水(すい)」が滞った状態で起こります。

そのため、冷えからくるめまいには、体の余分な水分を汗や尿として体外へ排出するような、以下の漢方薬が用いられます

  • 五苓散(ゴレイサン)番号:17番 代表的な利尿剤で、冷えからくるめまいの他、天候の変化によるめまいにも使われます

  • 真武湯(シンブトウ)番号:30番 水滞を改善する薬で、めまいの他むくみや腹痛、下痢などにも使用します。浮動感があるめまいに効果的です。

医師監修の無料問診がLINEで受けられます

めまいは、症状や原因が様々あり、また体質や気象変化に左右されることもあり、原因の特定が難しい病気です。

そのため、「きっと更年期だろう」や「ストレスが原因に違いない」と安易に判断するのは危険な場合もあります。

めまいがひどい、日常に差し支える場合は我慢せずに専門医を受診しましょう

また、医師が監修し、薬剤師が体質や症状に合う漢方薬を処方してくれるオーダーメイド漢方のサービスもあります。

LINEで医師の無料問診が受けられ、紹介された漢方薬は定期購入もできます。

オーダーメイド漢方定期便

まとめ

めまいの原因の多くは、日常生活の乱れと言われています。ストレスや冷え、貧血などは普段の食生活を見直したり、睡眠などの休息をしっかり確保することなどで改善が期待できます。

しかし、それでもなかなか治らないめまいは、自律神経が大きく乱れていたり、他に大きな病気が隠れている可能性があります。

一度専門医を受診して、耳や脳、心臓などに異常がないか確認する必要があります。原因不明な場合は、漢方薬を使い分けながら体質改善をはかることが重要です。

参考文献

1) 五島史行,「加齢によるめまい・ふらつきは自分で治そう!原因の解説と自分でできる治療法の紹介」,杏林医会誌,49巻,4号,2018 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyorinmed/49/4/49_291/_pdf

2) 及川哲郎ら,「めまいに対して沢瀉湯が奏功した3症例」,日東日誌,Vol.61,No.3,2010 https://www.jstage.jst.go.jp/article/kampomed/61/3/61_3_331/_pdf/-char/ja

3) 日本産科婦人科学会,「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020」,2020 https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2020.pdf

4) 日本神経治療学会,「神経治療学」,28巻,2号,2011 https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/memai.pdf

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