ブライダルチェックをご存じですか。最近は雑誌などで取り上げられる機会が多くなり、耳にすることも増えました。
しかし、実際にブライダルチェックでは何をするのか知らない方や名前の印象から結婚前でないと受けられないと思っている方も多くいらっしゃいます。
ここでは、ブライダルチェックの検査項目や費用などについて解説します。パートナーがいるいないに関わらず、将来こどもが欲しいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事でわかること
- ブライダルチェックはどのような方におすすめ?
- ブライダルチェックの検査項目と費用
- ブライダルチェックを受ける流れと受けた後
ブライダルチェックとは
ブライダルチェックとは、結婚前後の女性を対象とした検診メニューのことです。
しかし、結婚するしないに関わらず、将来的にこどもを持ちたい場合には受けておいた方が良いでしょう。
ブライダルチェックでは、赤ちゃんに感染する病気を持っていないか、妊娠および出産に影響がある病気が隠れていないかなどの様々な検査が受けられます。全ての医療機関で行っているものではないですが、婦人科や人間ドック専門施設、不妊クリニック、泌尿器科などで受けられます。
ブライダルチェックはどんな方におすすめ?
ブライダルチェックでは将来の妊娠および出産に備え、赤ちゃんに感染する病気や不妊および流産のリスクを高める感染症がないかなどをチェックします。
そのため、次に挙げるような方におすすめします。
- 将来的に出産を希望している
- 女性特有の病気がないか早めに知りたい
- 妊娠しにくくなってしまう病気や胎児に影響が出てしまう病気のリスクを減らしたい
他にも今後治療が必要となることを考慮して、病院を探す目的で受ける方もいらっしゃいます。
ブライダルチェックを受ける流れ
まずはブライダルチェックを行っている施設を探して予約を取ります。当日は問診票を記入し、血液検査および超音波検査などの検査を受け、医師による問診を受けるのが一般的な流れです。
検査自体は1時間程度で終わることが多く、結果が出るまでに大体2週間程度かかります。
ブライダルチェックの検査項目によっては、生理期間中と生理期間以外とで2回の検査が必要になる場合もあります。予約の際やホームページなどで確認してください。
ブライダルチェックの内容
ブライダルチェックの内容や各検査項目についてお伝えします。施設によって基本の検査内容が異なります。
また、オプションという形で別途検査費用がかかる場合があります。
どのような検査が必要なのか、確認していきましょう。
子宮、卵巣の超音波検査
超音波検査は、腟の中にプローブという細長い器具を挿入して子宮や卵巣を超音波画像で確認する検査です。
不妊症につながる可能性のある子宮筋腫や子宮内膜症、先天的な形態異常、卵巣腫瘍・嚢腫、多嚢胞性卵巣症候群などの有無を確認します。
子宮頸がん検査
子宮頸がん検査は、子宮の入り口(子宮頸部)をこすって細胞を採取し、がん細胞やがんになる前の異形成の細胞を調べる検査です。
子宮頸がんのハイリスク者は、妊娠適齢期である20〜30歳代と言われています1)。妊娠中に子宮を健康に保てるかがわかる重要な検査といえます。
子宮内膜症検査
子宮内膜症は子宮内膜に似た組織が子宮内以外で増殖してしまう病気のことで、不妊症と関連があることがわかっています。
確定診断には腹腔鏡検査などが必要ですが、先に述べた超音波検査や内診、血液検査などで発見できることもあります。
性感染症の検査(クラミジアや淋菌、梅毒、HIVなど)
性感染症の多くは自覚症状がないまま進行していることが多く、気づかず妊娠することで流産や早産、母子感染などのリスクを高めます。クラミジアや淋菌は腟分泌物細菌(おりもの)検査で、梅毒やHIVは血液検査で発見できます。
肝炎ウイルスの検査
肝炎を起こすウイルスのうち、B型肝炎、C型肝炎ウイルスは出産時に赤ちゃんに感染することがあるため、妊娠前から感染しているかどうか調べることが重要です。
血液検査によって感染しているかどうか調べることができます。
肝・腎機能検査
妊娠中は肝臓・腎臓にかかる負担が増すことが知られています。妊娠中にこれらの臓器に異常が出ると、早産になるリスクが高まることがあるため、妊娠前から異常がないか確認することが必要です。
肝・腎機能は血液検査で調べることができます。
貧血検査
貧血は赤血球の中にあるヘモグロビンの濃度が少なくなった状態のことで、血液検査でわかります。妊娠すると胎児の成長のために多くの血液が必要となるため、貧血が進行しやすくなります。
また妊娠中の貧血は、低体重児出産や死産のリスクを高めるので早めの対策が重要です。
糖尿病検査
糖尿病は、血液検査によりわかります。
妊娠中に血糖が高い状態が続くと、糖尿病性巨大児や母体の糖尿病合併症を背景として発症する重症妊娠高血圧腎症、さらに早産や先天性形態異常のリスクを高めることがわかっています2)。
甲状腺機能検査
甲状腺機能は血液検査をすることでわかります。甲状腺ホルモンの病気は20歳代から見つかる場合があり、多すぎても少なすぎても月経不順や不妊、流産の原因となります。
胎児の発育にも甲状腺ホルモンが関わっているので、妊娠を考えている方には必要な検査です。
そのほかホルモン検査など
そのほかのホルモン検査としては、プロラクチンやAMH(抗ミュラー管ホルモン)などの検査があります。
プロラクチンは、乳汁分泌を促す以外に性腺刺激ホルモンや性腺機能に関与するホルモンです。
プロラクチンの数値を見ることで、排卵障害を伴う不妊の可能性がわかります。AMHは年齢を重ねるごとに分泌量が低下することから卵巣年齢の指標と言われています。今後発育する卵子の数を推測できる検査です。
どちらも血液検査により確認できます。
男性が受ける検査
男性が受けるブライダルチェックは感染症検査と精液検査が一般的です。女性が受ける感染症の検査項目とほぼ同じです。
HIVやB型肝炎、C型肝炎、梅毒などを血液検査で、クラミジアや淋菌などを尿検査等で調べます。精液検査では、精液量や精子濃度、精子の運動率、正常形態率などを測定します。
妊娠初期の女性が風しんにかかると、耳が聞こえないなどの障害を持つこどもが産まれるリスクが高まります。
女性にうつさないように男性も風しん抗体検査を受けておくと安心です。
ブライダルチェックの費用はおいくら?
ブライダルチェックの費用は、基本的な検査がセットになって1〜3万円が一般的です。
そのほかに別途受けたい検査がある場合は、追加検査ごとに2,000〜5,000円程度かかります。男女が同日にブライダルチェックを受けることでペア割が適用される施設もあります。
また、市町村や年齢によっては、がん検診の受診券や風しん抗体価検査助成が利用できることもあるので確認しましょう。
ブライダルチェックは自費診療ですが、すでに症状がある場合やチェックの結果治療が必要な場合などは保険適応になることがあります。
ブライダルチェックを受けた後の流れ
ブライダルチェックを受けた結果、将来赤ちゃんに影響を及ぼすような疾患が見つかった場合は、医師と相談して早めに治療を始めましょう。
早期に発見できれば治療期間が短く済みますし、金銭的負担や精神的負担も少なく済みます。
ブライダルチェックは妊娠できるかを判断するものではありませんが、女性は妊娠可能期間に限りがあるのも事実です。より良い状態で赤ちゃんを迎えることができるように、ご自身の体と向き合ってみましょう。
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まとめ
ブライダルチェックは一般的な婦人科検診とは異なり、将来の妊娠に備えた検査です。検査の結果、性感染症が発覚したり、大きな病気が見つかることもあるでしょう。
結果が出るのが怖い、検査=痛いのでは?と不安に感じる方も多くいらっしゃいます。
しかし、何か異常が見つかるのであれば早期に見つけ、早期から治療を開始するに越したことはありません。将来こどもが欲しいと考えている方は、ぜひ早めにブライダルチェックを受けてみてください。
参考文献
1) 梅澤敬ら,「30歳未満女性の子宮頸がんに対する意識とがん検診受診要因に関する研究」,厚生の指標,第59巻,第2号,2012 https://www.hws-kyokai.or.jp/images/ronbun/all/201202-03.pdf
2) 安日一郎,「糖代謝異常合併妊娠の今日的課題:周産期管理からプレコンセプション・ケアまで」,日本周産期・新生児医学会雑誌,第58巻,第1号,2022 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspnm/58/1/58_9/_pdf