月経前はなんとなく調子が悪いと感じる女性は多いでしょう。これは「月経前症候群(PMS)」と呼ばれており、不調の症状は200種類以上あると言われています。個人差が大きく、ひとりで悩んでいる方も多いのです。
今回はPMSで起こりうる不調のうち、めまいを紹介します。めまいを感じることがよくあるけれど、振り返ったら毎回月経前にめまいを起こしていた、という場合はPMSが原因かもしれません。
また、医療機関を受診する場合は何科を受診すればいいかもお伝えしています。
この記事でわかること
- PMSでめまいが起こる原因
- めまいの対処方法
- PMSのめまいと更年期のめまいの違い
PMSで起こるめまいとは
PMSとは、月経前症候群のことを指し、「月経前3〜10日の黄体後期に発症する多種多様な精神的あるいは身体的症状で、月経発来とともに減弱あるいは消失するもの」と定義されています1)。
PMSに起こる不調は200種類以上あると言われています。今回紹介するめまいも、PMSの身体的症状のひとつです。
激しい運動もしていないのにふわふわする、といった症状が月経前にたびたび起こるようであれば、PMSで起こるめまいの可能性があります。
PMSの症状と原因
PMSの症状は、身体的症状と精神的症状に大きく分けられます。めまいは身体的症状に分類されます。PMSは、排卵後に起こる黄体ホルモンの上昇が原因として考えられていますが、他にも様々な要因が複雑に関与していると言われています2)。PMSによるめまいの原因と、更年期に起こるめまいとの違いも紹介します。
PMSでめまいと同時に起こりやすい症状
PMSでめまいと同時に起こりやすい症状には、耳鳴りや頭痛、動機、息切れなどが挙げられます。
また、ふわふわしていることに伴って、吐き気や倦怠感を感じる方も多く見られます。排卵後は、黄体ホルモンであるプロゲステロンが優位になり、体は水を溜め込みむくみやすくなります。
めまいの原因は様々ありますが、平衡をつかさどる内耳の一部に水がたまることが原因のひとつだと考えられています。内耳のむくみによって、めまいとともに耳鳴りや頭痛を起こしやすくなります。
PMSでめまいが起こる原因
なぜPMSが起こるのかは、まだはっきりとはわかっていません。ただ、女性ホルモンの変動が大きく関わっているのは事実です。排卵から月経までの黄体期では、プロゲステロンが多く分泌されます。
しかし、黄体期後半にはプロゲステロンが一気に減少します。また、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの分泌も減少し、自律神経が乱れます。
女性ホルモンが大きく変動することにより自律神経が乱れ、脳内のホルモンや神経伝達物質が影響を受けてしまうことがひとつの原因と考えられています。また、PMSとストレスも密接に関連しており、ストレスがPMSの症状悪化にもつながっています3)。
めまいの原因は更年期にもある?PMSと更年期の違い
めまいの原因は様々あります。原因のひとつに更年期が挙げられます。更年期にめまいを引き起こす主たる原因は卵巣機能の低下ですが、加えて体の変化や精神的な要因、社会的な環境因子などが複雑に絡み合っていると考えられています4)。
PMSによるめまいは月経前にのみ起こるのに対し、更年期のめまいは毎日続くという違いがあります。30歳過ぎてから初めてめまいを感じるようになった、または月経前でなくてもめまいが続くといった場合は、更年期によるめまいの可能性があります。
PMSによるめまいを和らげる対処・改善方法
ここでは、PMSによるめまいを和らげる対処方法や改善方法などを紹介します。生活習慣の見直しやストレスをコントロールする方法、また医療機関を受診する場合の注意点などをお伝えします。取り入れやすいものからやってみてください。
生活習慣を見直す
まず、生活習慣を見直しましょう。PMSを和らげるには、規則正しい生活と適度な運動が効果的です。
さらに、体を冷やさない、低脂肪食やビタミンB6の摂取、ミネラル豊富な食事なども改善につながるとされています2)。
また、カルシウムやマグネシウムを意識して摂るようにし、カフェインやアルコール、喫煙は控えましょう。PMSで不調を起こしそうな時期には、あらかじめ仕事や予定を詰め込まないことも必要です。
漢方薬を使う
PMSは個人差が大きく、多彩な症状が起こるため漢方薬で治療を進めることがあります。
東洋医学では、排卵の前後で体の中の「気」「血」「水」のバランスが大きく変わるとされています。バランスを整えるために漢方薬が用いられます。
めまいの症状に処方される漢方薬には、以下のようなものがあります。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう) など
しかし、漢方薬はそれぞれの体質によって決める必要があるので、一度医療機関を受診して処方してもらうのが良いでしょう2)。
ストレスや疲れを癒してリラックスする
PMSを引き起こすメカニズムは、まだ十分に解明されていないものの、脳内のホルモンや神経伝達物質はストレスの影響を受けやすいと言われています。そのため、PMSによるめまいを和らげるためには、ストレスをためず、リラックスできる環境を整えましょう。
足の内くるぶしの1番高いところから指4本分上に、三陰交(さんいんこう)というツボがあります。三陰交は生理痛や婦人科系トラブルを緩和すると言われているので、お風呂上がりや寝る前などにゆっくり押してみるのもおすすめです。
婦人科やクリニックを受診する
生活習慣を変え、ストレスを減らしても効果が実感できない場合や、日常生活に差し支えるめまいがある場合は、医療機関を受診しましょう。
まずは耳鼻科を受診してください。かかりつけ医に相談して紹介してもらうのも良いでしょう。現在使用している薬との併用に関するアドバイスをもらえるかもしれません。
また、ぐるぐるまわるようなめまいが30分以上続いたり、耳鳴りや難聴を伴う場合は、耳鼻科が専門になります。
耳鼻科で何も異常が見つからなかった場合は、婦人科やレディースクリニックを受診するようにしましょう。
このめまいはPMS?更年期?その違いは?
更年期にめまいの症状を訴える方もいます。更年期のめまいは、エストロゲンの急激な減少による自律神経の乱れと、加齢による感覚器官の老化が原因と言われています。
30歳を超えてから初めてめまいを感じたり、月経前以外にも常日頃からめまいを感じるような場合は、更年期によるめまいの可能性もあります。
逆に、月経前だけにめまいを感じるような場合はPMSによるめまいであると考えられます。ただ、PMSによるめまいでも、更年期によるめまいでも、自律神経の乱れが原因のひとつとされているので、ストレスをためないなどの対処方法は同じように捉えると良いでしょう。
まとめ
PMSには個人差があり、起こる不調もその時の体調によって変わります。めまいを頻繁に感じるようなら、まず症状がいつ起こるか把握してみましょう。それが毎月でなくても、起こるのが月経前だけであれば、PMSによるめまいの可能性が高いです。
生活習慣の見直しやストレスを減らすことで改善することも多いので、まずはできることからやってみてください。ただ、日常生活に差し支えるほどめまいがひどい場合は、迷わず医療機関を受診するようにしましょう。
参考文献
1) 日本産婦人科学会:「[産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020」,2020 https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2020.pdf
2) 白土なほ子:「PMS, PMDDの診断と治療-他科疾患との鑑別」, 昭和学士会誌, 第77巻, 第4号, 360-366, 2017 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/77/4/77_360/_pdf/-char/ja
3) 鈴木友美子ら:「月経サイクルを通し、認知機能とイライラの原因ホルモンは、 関連しているのだろうか。」日本認知科学会,2021 https://www.jcss.gr.jp/meetings/jcss2021/proceedings/pdf/JCSS2021_P2-42F.pdf
4) 宮本景子ら:「最近の更年期障害の管理」,昭和学士会誌, 第77巻 , 第4号, 367-373, 2017 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshowaunivsoc/77/4/77_367/_pdf/-char/ja