「月経不順気味だし、なかなか妊娠できない。何か病気が潜んでいるのかも」と不安を感じていませんか?
実は、その症状はPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)かもしれません。
PCOSは、妊娠可能な女性にとって珍しい病気ではなく、不妊の原因の1つです。放置すると不妊だけでなく、重大な病気につながることもあるため、症状に合わせて治療を受けることが大切です。
本記事では、PCOSの症状や原因、治療法について解説します。症状に心当たりがある人は、ぜひこの記事を参考にしてください。
この記事でわかること
- PCOSの症状、原因
- PCOSの治療方法
- PCOSかもと思ったときにどうしたらよいか
PCOSとは
PCOSとは、多嚢胞性卵巣症候群(たのうほうせいらんそうしょうこうぐん)の略称で、卵子のもとの卵胞が成長せずに卵巣内にとどまる病気です。
正常な月経では、複数の卵胞が成長したもののうち1つが排卵され、それ以外の卵胞は体内に吸収されます。
一方、PCOSでは、卵胞の成長が途中で止まったまま卵巣に残ってしまうため、排卵しにくくなる傾向が高いです。このように、PCOSは排卵が起こりづらくなる病気のため、不妊の原因になります。
PCOSは妊娠可能な年代の女性の約20人に1人が発症するような病気で、珍しくありません。
不妊以外にも子宮体がんなどの重大な病気につながることもあるため、放置せずに適切な治療をすることが大切です。
PCOSによる主な症状
PCOSによる主な症状は、以下のようなものがあります。
- 月経不順
- 不正出血
- 無月経
- にきび
- 多毛
- 肥満
卵胞が育たず排卵が起こらないため、月経不順や不正出血、無月経など月経の異常があらわれます。PCOSの人は初経から月経が異常なことがありますが、異常に気付かずに発見が遅れることも多いです。
また、男性ホルモンの値が高くなることで、にきびや体毛の増加、肥満などが起こります。治療しないまま放置すると、メタボリックシンドロームなどの他の病気のリスクも高まります。
PCOSになる原因
PCOSになる原因は明確になっていませんが、ホルモンのバランスの乱れが影響していると考えられています。また、遺伝による影響が約80%あるともいわれています。
排卵を調節するホルモンは、卵胞刺激ホルモンと黄体ホルモンの2種類です。PCOSでは、黄体ホルモンの過剰な分泌によって排卵が起こりづらくなります。
また、PCOSの人の中には血糖値を調節するインスリンが効きづらい人がいます。インスリンが効きづらいと、卵胞の成長を抑制する作用がある男性ホルモンが増えて、排卵しづらくなるのが特徴です。
このように、ホルモンのバランスが乱れることがPCOSの原因になる可能性があります。
PCOSは不妊症を引き起こす可能性がある
PCOSは、不妊症を引き起こす可能性があります。
不妊症とは、避妊なしで性交をしているにも関わらず、なぜか一定期間妊娠しないことを指します。10%程度のカップルが不妊といわれていますが、原因はさまざまです。
妊娠するためには、排卵が必須です。PCOSは排卵されにくい病気のため、自然に妊娠することが難しくなります。そのため、PCOSは不妊症の原因の1つと考えられています。
月経不順などの症状がありなかなか妊娠に至らない場合は、一度病院で診察してもらうようにしましょう。
PCOSの治療方法
PCOSの治療方法は大きく分けて3種類で、体重管理や薬物治療、手術があります。
治療をするために、症状や年齢、妊娠希望の有無など、それぞれの状態を確認することが必要です。
PCOSの治療方法について、以下で解説します。
減量や体重管理による治療
減量や体重管理によってPCOSの治療を行う方法があります。
PCOSの症状の1つとして肥満があげられます。肥満は、PCOSをさらに悪化させるため、まずは肥満を改善しなければなりません。
肥満がある人に対して、ダイエットで減量することで自然な排卵を促すはたらきが期待できます。また、体重管理によって薬物治療の効果を高められるケースもあるため、PCOSの治療につながるでしょう。
ただし、正常体重の人にとっては、体重管理は治療の効果が薄い可能性があります。病院に相談して、適切な治療方針を検討するようにしてください。
薬物治療
PCOSの薬物治療では、以下のような薬を使用します。
- ホルモン剤
- 漢方
- メトフォルミン
ホルモン剤で月経を起こして、自然な排卵を促す方法があります。また、月経不順を整える漢方を併用することで、ホルモン剤の効果を高めることが期待できます。
さらに、糖尿病薬のメトフォルミンを用いて肥満を改善する方法も治療の1つです。ホルモン剤で効果が不十分な人に、排卵を促すことを目的にメトフォルミンを使うケースもあります。
ただし、副作用には注意が必要です。医師と相談しつつ治療を進めていくようにしましょう。
妊娠を「希望する」場合の薬物治療
妊娠を希望する場合、ホルモン剤の排卵誘発剤を用いて治療を行います。まずは飲み薬からはじめ、数種類試すこともあります。それでも排卵しない場合は、注射薬へステップアップすることが多いです。
妊娠を「希望しない」場合の薬物治療
妊娠を希望しない場合、女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを含む薬を使って自然な排卵を促します。また、ホルモン剤での効果に応じて、漢方やメトフォルミンなどを活用します。
手術により卵巣に小さな孔をあけ排卵しやすくする
薬物治療で十分な効果が得られない場合、手術で卵巣に穴をあける方法が選択肢にあがります。
腹腔鏡下卵巣多孔術といい、レーザーなどで卵巣に小さな穴をあける方法です。自然な排卵を促したり、ホルモン剤の効果を高めたりするなど、PCOSを治療するのに有効とされています。
デメリットは、日程調整や費用の面を考慮する必要があることです。また、腹腔鏡を使うため傷は小さいものの、手術のため身体的ダメージがあることを理解する必要があります。妊娠希望の有無や体の状態に合わせて、治療を選択するのがよいでしょう。
PCOSかも?と思ったらどうしたらよい?
婦人科を迷わず受診しましょう
月経不順や妊娠しづらいなどの悩みがあり、PCOSかもしれないと感じる人は、まず病院に行きましょう。
PCOSの診断、治療を受けるために、婦人科に行くのがおすすめです。
診断基準には、以下のようなものがあります。
- 月経の異常がある
- 卵巣に卵胞が多数見られる
- ホルモンの乱れがある
婦人科では、問診で月経の異常を聞き取り、超音波検査で卵巣の状態をチェックします。また、採血をして男性ホルモンなどの数値を確認します。
自宅でできるホルモン検査もあります
婦人科へ行く時間がなかなか取れない、受診をどうしても躊躇してしまうという人は、自宅でまずホルモンだけセルフチェックするという方法もあります。
自宅でできるホルモン検査 canvasの「ブライダルチェック」は、ホルモンの値からPCOSの可能性があるかどうかを気軽に見ることができるサービスです。医師がレビューし、コメントを付けた結果がオンラインで届き、質問も無料ですることができます。連携先医療機関の紹介もあり、PCOS改善に向けた漢方の処方もしてくれます。受診のきっかけに、まず試してみるのはいかがでしょうか。
まとめ
月経の異常や不妊で悩んでいる女性は多く、PCOSという病気が潜んでいることもあります。
PCOSは、卵胞が卵巣内にとどまり排卵しづらくなる病気で、不妊症の原因の1つです。放置すると不妊症や子宮体がん、メタボリックシンドロームなどの病気につながる可能性があるため、適切な治療が重要です。
PCOSであらわれる症状は月経の異常やにきびや多毛などで、原因はホルモンバランスの乱れと考えられています。体重管理や薬物治療、手術などで治療を行うことができます。
妊娠希望の有無や年齢、体の状態によって治療方法が異なるため、PCOSかもしれないと思ったときには婦人科に行くようにしましょう。