月経不順でお悩みの方は多いのではないでしょうか? 月経不順にはさまざまな種類があり、原因によって治し方も違います。 この記事では、月経不順(生理不順)の原因や症状について、治し方や対策方法も含めて、ご紹介します。ぜひ最後まで読んでください。 この記事でわかること
- 月経不順(生理不順)とは
- 月経不順の原因と症状
- 月経不順の種類と治し方
- 漢方の使用
- 月経不順と病気の可能性
- まとめ
月経不順とは?
月経不順とは、規則正しい月経周期や出血期間が極端に異なることです。 以下のような場合は、月経不順である可能性があります。
- 妊娠していないけれど3か月以上月経がない
- 月経周期が「25日周期、36日周期、20日周期」のように月によって違う
- 出血期間が8日以上
- 出血期間が2日以下
月経周期は普通25〜38日、出血期間は普通3〜7日間です。しかし、月経周期は毎回同じではなく、普段の周期から1週間くらい短くなったり長くなったりすることがたまにあるというのなら問題はありません。 原因は、年齢、ストレス、病気など、個人によりさまざまですが、原因によって対処法が変わるので、自分に合った対処法を見つけることが大事です。
正常な月経と月経不順の定義
正常な月経とは「正常月経」の定義を満たす月経のことで、「月経周期が25〜38日の間にあり、その違いが約6日以内、出血期間が3〜7日くらい」の月経のことです。月経がこの範囲内なら、働きは正常であると言われています。 反対に、月経不順とはこの定義に当てはまらない場合のことをいいます。例をあげると、
- 3か月以上月経なし
- 出血日数が10日以上
- 周期が25日周期や38日周期のように不規則
このように正常月経にあてはまらない症状が続く場合は、月経不順であると言えます。
月経不順の原因と症状
妊娠も閉経もしていないのに月経が来ない場合は月経不順である可能性が高いです。月経不順の最も大きな原因としては、女性の身体や月経周期を調整している女性ホルモンのバランスの乱れが挙げられます。 ホルモンバランスの乱れを引き起こす要因は、ストレスや疲労、過度なダイエットなど様々な要因が考えられています。思春期や更年期も女性ホルモンの分泌が不安定になることが多いです。
妊娠
月経が定期的に来ない場合は、月経不順以外に妊娠している可能性もあります。妊娠の可能性がある場合、周期を過ぎても月経が来ない場合は妊娠検査をしましょう。 また、妊娠初期に出やすい不正出血を月経が来たと勘違いして妊娠に気付かない人もいます。 妊娠4週目頃に起こる出血は受精卵が子宮内膜に着床するときに起こり、病的なものでないことがあります。 月経予定日と同じ時期に出血があるため、月経出血と区別がつきにくいというのが特徴です。
着床したときの出血の血液の色は、人によって異なり個人差が大きく、おりものに血が混ざったようなピンク色、鮮血、茶色の出血など様々です。ただし、着床出血で血の塊が出ることは稀で、月経の出血に比べると量が少なく、期間も1~2日ほどから長くても3日程度と短いのが特徴です。しっかり1週間出血が続く場合、塊を伴う出血がある場合などは月経の可能性が高いです。
更年期
更年期に入ると月経周期が乱れることがあります。また、経血の量にも変化がおき、経血量が急に減ったり増えたり、だらだらと出血が続くこともあります。卵巣機能の衰えからホルモンの揺らぎが大きくなり、排卵の時期が不安定になる、月経が遅れて子宮内膜が厚くなり出血量が増える、子宮内膜の状態が不安定となり血管が表面に露出して大量出血や不正出血が起こることがあります。 また、月経がきても、排卵を伴わない無排卵月経であることも多くなります。
ストレスなどによるホルモンバランスの乱れ
通常、月経は卵巣ホルモン、黄体ホルモンといった女性ホルモンによってコントロールされています。これら女性ホルモンの分泌は、脳と卵巣が連携して行っており、正常に機能していれば、月経が起こります。 女性ホルモンを司る脳の部分はストレスの影響を受けやすいため、。家庭、職場、学校などでの精神的ストレスから視床下部の働きが乱され、ホルモンバランスが崩れて月経不順になることがあります。 また、疲労や激しい運動、無理なダイエットも女性ホルモンのバランスに影響します。
月経不順の種類と治し方
月経不順(生理不順)にはさまざまな種類があります。主な種類は以下の通りです。
- 頻発月経:周期が24日以下の短いサイクルになる月経
- 稀発月経:周期が延長し39日以上の長いサイクルになる月経
- 過長月経:月経期間が8日以上続く月経
- 過短月経:月経期間が2日以内の月経
こうした状態が3ヶ月程度続く場合を目安として異常と判断します。これ以外にも過小月経(量が極端に少ない月経)や、無月経(月経が3か月以上来ない)、更年期前の月経不順など様々な不順の種類があります。
1.頻発月経
「頻発月経」とは、月経周期が24日以下になる状態のことです。24日以下の周期となると、1か月に2回の月経が来る場合もあります。 頻発月経は、無排卵性のものと排卵性のものに分けられます。無排卵月経とは、排卵がないのに月経のような出血がある状態で、経血量が少ないまま、期間が長引くことが多いのが特徴です。初経(初めての月経)期や卵巣機能が低下する更年期前の女性によく見られます。
一方、性成熟期で排卵がある場合は「黄体機能不全」という、排卵後にでき妊娠するのに必要な黄体という器官の機能が不十分な病気の疑いがあります。黄体機能不全で短い周期になるのは、排卵から月経開始までの黄体期が短くなるからです。
頻発月経の治し方
妊娠を希望する場合は黄体ホルモン療法を行うことがあります1)。治療後自然に正常月経周期に回復することを期待し、月経周期を安定させるためです。黄体ホルモンは妊娠維持に必要で、不足していると不妊や流産の原因になります。 性成熟期でも妊娠の希望がない場合、初経頃や閉経前に起こる場合は、ほとんど治療の必要がありません1)。
漢方薬は体質そのものへ働きかけることで月経に伴う症状への効果が期待できるため、他の治療と併用されることも多いです。頻発月経では、加味逍遥散(かみしょうようさん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などが用いられることがあります。 月経不順が続き、病院医師への相談が必要と感じる場合は、婦人科を受診しましょう。
2.稀発月経
「稀発月経」とは、月経周期が39日以上と、月経がこない期間が長すぎる状態のことです。 例をあげると、
- 今までずっと28日周期だったが、最近は40日周期が続く
- 月経周期が「25日周期、28日周期、35日周期、38日周期、45日周期」と少しずつ長くなってきている
このような症状が続く場合は、稀発月経であると言えます。 原因には、多嚢胞性卵巣症候群や、高プロラクチン血症、甲状腺機能低下症などの病気があります。
- 多嚢胞性卵巣症候群:卵胞の成⻑が途中で止まり、たくさんの⼩さな卵胞(嚢胞:のうほう)が卵巣内にとどまってしまう病気。
- 高プロラクチン血症:本来であれば出産後に多く分泌されるプロラクチンというホルモンが、出産や授乳をしていないのに高値になってしまう病気。
- 甲状腺機能低下症:新陳代謝を促す甲状腺ホルモンの分泌が十分でない状態に陥る病気。
ただし、もともとの体質で卵胞の成長に時間がかかることもあるので、周期が大幅に違わなければ気にしなくてもよいこともあります。
稀発月経の治し方
稀発月経の治療法は、ホルモン療法や原因となる病気の治療です。原因特定のために血液検査などの検査を行い病気が見つかった場合は、それに対する治療を行います。また、自身で毎日体温を記録することも有効なので、基礎体温を測定しているのであれば、診察の際は結果を持参しましょう2)。
多嚢胞性卵巣症候群の場合低用量ピル、高プロラクチン血症である場合はプロラクチンを抑える薬、甲状腺機能低下症の場合は甲状腺ホルモン剤による治療を行います。
稀発月経でも排卵があれば、妊娠は可能です。 稀発月経で漢方薬を用いる場合のは、温経湯(うんけいとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などです。 月経不順が続き、病院医師への相談が必要と感じる場合は、婦人科を受診しましょう。
3.過長月経
「過長月経」とは、出血期間が8日以上続く月経のことです。原因は、ホルモンバランスの乱れのほか、出血量が多い過多月経のため経血排出に時間がかかってしまったり、子宮の病気で月経以外の不正出血が月経前後に起きている可能性もあります。 ホルモンバランスの乱れを引き起こす病気には多嚢胞性卵巣症候群、出血量を増やす子宮の病気には、子宮筋腫や子宮腺筋症などがあります3)。
過長月経の治し方
過長月経の治療法は、ホルモン療法や原因となる病気の治療です。 例えば、
- 過多月経の場合:低用量ピル
- 何らかの病気:病気の治療
月経不順が続き、病院医師への相談が必要と感じる場合は、婦人科を受診しましょう。
4.過短月経・過少月経
「過短月経」とは、出血期間が2日以内で終わる月経のことです。「過少月経」という経血量が異常に少ない状態を併発している場合がよくあります。 原因には、黄体機能不全などで女性ホルモンの分泌量が不十分であること、ホルモンバランスが悪いことなどが考えられます。月経困難症や子宮内膜症などへの治療として低用量ピルを使用している場合、その治療への反応として過短月経が現れる場合がありますが、この場合は治療を中止すれば、戻るので心配いりません1)。
過短月経の治し方
過短月経の治療法は、ホルモン療法や原因となる病気の治療です。どの治療法を行うのか決めるために、血液検査などを行い病気が見つかった場合は、その病気に対する治療を行います。
- 女性ホルモンの分泌量が不十分、ホルモンバランスが悪い→ホルモン療法
- 何らかの病気→病気の治療
月経不順が続き、病院医師への相談が必要と感じる場合は、婦人科を受診しましょう。
月経不順の対処法
月経不順を起こす要因は様々で、年齢、環境、引き起こしている原因によって改善方法や対処法が変わるため自分に合った改善策を見つけることが大切です。薬や漢方で治療できる場合もあれば、ストレスや過労を減らし規則正しい生活をするなどで生活習慣を改善するだけで治る場合もあります。
薬の使用
月経不順は薬やピルで治療することが可能です。 妊娠を希望する場合は排卵誘発剤を用います。排卵誘発剤には飲み薬や注射などがあります。妊娠を希望しない場合は、LEP(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)、いわゆるピルで定期的に月経を起こします。毎月月経がくるタイプの薬に加え、最近では3ヶ月に1度月経を起こすタイプのピルもあります。
漢方の使用
漢方薬は女性ホルモンを直接整える作用があるというよりは、体質全体を整えるタイプのお薬であり、月経不順を整える作用は比較的弱く、漢方薬だけで月経が整うことは稀です。
一方で、月経不順に伴う症状の改善には有効なことも多く、他の治療と併用されることが多くなります。月経不順のタイプ別に効用の異なる漢方があるので代表的なものを紹介します。
<月経周期が長くなる場合>
- 温経湯(うんけいとう)
冷え性で体力があまりなく、皮膚や唇がかさつく人に用いられます。具体的には、月経不順や月経痛、足腰の冷えや痛み、冷えのぼせ、しもやけを改善します。月経不順の原因となる多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)で排卵機能改善に効果があったという報告があります。
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷え症、貧血気味、月経時の経血の量が少なく長引くといった症状に有効な漢方です。貧血や冷えを防ぐために、バランスのよい食事を心がけるほか、睡眠をよくとることも大切です。
- 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血行不良による冷えや月経痛、頭痛やめまいの症状を改善します。冷えを防ぐためにも冷たい飲み物を控えるなどの生活環境も変えてみるとよいでしょう。
<月経周期が短くなる場合>
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
体が虚弱で疲れやすい、風邪をひきやすい、汗をかきやすいといった症状や、イライラや不安感等の精神症状にも有効です。具体的には、手足の冷え、のぼせ、月経痛、頭痛、肩こり、けん怠感、不眠、神経症などに適応します。また、更年期障害や自律神経失調、月経前緊張症などにも用いられます。 、過労にならないように休養をとり、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
のぼせて便秘がちな方の頭痛、便秘、めまい、肩こり、月経不順の改善に用いられます。便秘を防ぐためにも水分をしっかりとり、乾燥したもの・辛いものを控えて、ストレスをためないことが大切です。
医師監修の問診をLINEで無料で受けられます
オーダーメイド漢方Kampo by canvasでは、医師監修の薬剤師による問診をLINEで無料で受けられます。漢方薬はその人の体質や症状に合うものでないと、十分な効果が得られません。そのために必要なのは、漢方に詳しい医師などによる漢方特有の"ものさし"での問診などです。 月経不順には漢方が有効であると言われています。Kampo by canvasは「体質」と「女性特有の悩み」に合った漢方を知り、自宅から購入できるサービスです。 ホルモンケアサービスも行うcanvasでは、自宅で検査できる「ホルモン検査キット」サービスも行っています。ホルモン分泌の不安がある方はこの機会に検査されることをおすすめします。
ピルの使用
低用量ピルは女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンを配合したお薬で、体の外から女性ホルモンを取り入れることで人工的に月経周期を作り出します。 薬により、1週間ほど休薬するタイプと、偽薬を飲み続けるタイプがありますが、どちらのお薬でも1ヶ月に1回程度月経と同じように出血が出ることになります。
昨今では3ヶ月に1度出血を起こすタイプのピルもあり、ライフスタイルに合わせた利用が可能となっています。 ピルの副作用には、頭痛や吐き気、不正出血、むくみなどの症状が起きる場合があります。徐々に慣れていき1〜3クール飲み終える頃には副作用が消失する場合が多いです。 また、頻度は少ないですが血栓症の副作用も報告されていますので、血栓症になりやすい体質の方は注意が必要でしょう。
月経不順と病気の可能性
月経不順はホルモン分泌の異常で起こりますが、ホルモン分泌の異常を生じる病気には以下のようなものが挙げられます。月経不順を放置してしまうとこれらの病気が悪化することがあります。
- ストレスによる月経不順
ストレスによって脳の視床下部に負担がかかり、女性ホルモンの分泌がうまくいかず月経不順になることがあります。一時的な異常のこともありますが、無月経が続くこともあり3ヶ月以上続くと戻りが悪くなる可能性もあります。
- 黄体機能不全
排卵後にできる黄体から十分なホルモン分泌がされず、早めに月経がきてしまう、経血量が少なくなる状態です。不妊症や流産、不正出血の原因になることもあります。
- 多嚢胞性卵巣症候群
卵巣に小さな卵胞が多く作られるものの、大きな卵胞に育ちにくく、かえって排卵が起こりにくくなっている状態です。排卵障害を生じることが多く、月経周期が長くなるのが特徴です。排卵しにくくなる不妊の原因となり、また男性ホルモンも増加するためニキビが増えるなどの症状が起きやすくなります。
これらの病態はあくまで原因の一部であり、実際にどんな病態が考えられるかによっても対処法が異なるため詳しくは婦人科に受診して相談してみましょう。
病気を疑う場合は婦人科へ
月経不順は、日常のストレスやダイエットなど不適切な生活習慣、思春期や更年期など特定の時期に起こるホルモンバランスの揺らぎによって起こることが多いですが、多嚢胞性卵巣症候群や黄体機能不全のように一時的なものではなく、体質的に起こることもあります。 後者の場合、不妊症につながる可能性もあるため、月経不順が長引く場合は早めに婦人科を受診しましょう。その際に、基礎体温表は排卵の有無や黄体の機能を把握するために重要な情報になるので、日頃から基礎体温を管理しておくとよいでしょう。
まとめ
この記事では、月経不順の原因、症状、治し方を紹介してきました。 月経不順は、原因になる病気やトラブルがある場合は治療を行います。ストレスなどが原因の場合は規則正しい生活を送るだけで治ることもありますが、ホルモン異常の場合はホルモン状態を整える必要があります。
漢方薬は体質に働きかけるので月経不順への効果は時間がかかりますが、月経に伴う症状への効果は期待できるため、他の治療法と併用することで、より良い効果が得られるでしょう。 月経は健康状態を知る目安です。月経周期、月経期間はしっかり把握し、健康管理に役立てましょう。
参考文献
1)冬城 高久.妊娠希望のない方の頻発月経の対応. 2021