更年期では、女性ホルモンが大きくゆらぎながら低下することで、さまざまな心身の不調があらわれ、日常生活に支障が出る方もいます。 更年期症状の中でも、指を含む体のあちこちの関節の痛みを訴える方が多いです。ただ、関節痛は更年期による痛み以外にも、関節リウマチなどの他の病気による可能性もあるため、注意が必要です。 本記事では、指の関節痛が更年期によるものなのか気になる人に向けて、痛みの原因や改善方法を解説しています。指の関節痛で悩んでいる方はぜひ参考にしてください。 この記事でわかること
- 更年期とは
- 更年期に発症する更年期関節症
- 更年期による関節痛とリウマチとの違いとは?
- 更年期に指の関節が痛くなる原因
- 更年期の指の関節痛はどれくらいの期間で治る?
- 更年期関節症を改善する方法
- 通院をするタイミングや治療方法
更年期とは
更年期とは、閉経をはさんだ前後10年間です。 日本人女性における閉経の平均年齢は50歳のため、個人差もありますが45〜55歳頃が更年期にあたります。更年期に入ると卵巣機能が低下しはじめるため、原因となる病気がないにも関わらず、 月経不順や心身の不調があらわれることがあります。 例えば、月経が月に2回きたと思えば、次は2ヶ月期間が空く、といった場合もしばしば起こります。心身の不調としては、ほてりやのぼせ、いらいら、気分の落ち込み、めまい、動悸、肩こりなど、更年期症状は多岐にわたります。
更年期に発症する更年期関節症
更年期になると、指の関節を含む体のあちこちの関節が痛いと訴える女性が多いです。 とくに更年期女性では、手指の第一関節の痛み、しびれ、腫れが起こる「へバーテン結節 」、第二関節におこる「ブシャール結節」が見られることがあります。 骨と骨のつなぎ目になる関節があることで、私たちの体はさまざまな動きができるようになります。ただ、指の関節が一本だけでも痛むと「フタをあける」、「強く物を握る」などの日常のちょっとした動作に影響します。
更年期による関節痛とリウマチとの違いとは?
更年期による指の関節痛とリウマチの違いには、原因、関節の痛み方や関節痛以外の症状があります。ただ、更年期による関節痛もリウマチも中年期以降の女性で起こることが多く、専門家でないと識別判断は難しいです。更年期に入ってからみられるようになった関節痛でも、リウマチによる関節痛ではないか見逃さないことが大切です。
更年期による関節痛 | 関節リウマチ | |
原因 | 卵巣機能の低下による女性ホルモンの変動 | 免疫機能の異常による自己免疫の病気 |
症状の特徴 |
・手指の関節の痛み ・関節痛以外にも、心身の不調がある |
・関節の痛み、腫れ、朝のこわばりが見られ、進行すると関節の変形がおこる ・左右対称にでることが多い ・発熱やだるさ、筋肉痛などの全身症状がでることもある |
更年期に指の関節が痛くなる原因
更年期に指の関節が痛くなる原因は、少なからず女性ホルモンの変動の影響があると考えられています。 更年期で卵巣の働きが悪くなることで、女性ホルモンが揺らぎながら低下し、心や体の不調がでるようになります。閉経と関節痛の関連性はないといった報告があるものの、更年期の不調で関節痛を訴える女性は多いです1)。 また、実際には女性ホルモンを補充する治療で関節痛が改善する方もいるため、更年期における女性ホルモンの変動が関わってる可能性が考えられています。
更年期の指の関節痛はどれくらいの期間で治る?
更年期の指の関節痛は個人差はありますが、50歳代後半頃におさまる方が多いです。 更年期症状の原因は閉経に向かって女性ホルモンが大きく揺らぎながら低下することです。この女性ホルモンのゆらぎが体に慣れてくると、更年期の症状が徐々におさまってくる方が多いと考えられています。 いつ閉経するかは個人差が大きいため、更年期で起こる症状の治まり方にも個人差が出てきます。
更年期関節症を改善する方法
更年期でおきた関節の痛みを改善する方法には、適度な運動や食事の見直し、漢方薬があります。 食事と運動中心の生活習慣の改善は閉経後に増える心臓病や骨粗しょう症などの病気を予防するだけではなく、肥満の方への更年期症状の改善にも有用とされています2)。 ここでは、さらに更年期関節症を改善する方法を詳しく解説します。
適度な運動をする
更年期の指の関節痛には適度な運動がおすすめです。 関節痛があるときはあまり動かさない方がよいのでは?と悩む方もいると思います。ただ、関節を動かさずにいると筋力がおとろえてしまい、かえって動きが悪くなったり、関節が痛みやすくなることがあります。 とくに更年期では、生活習慣病の予防にもなるウォーキングやサイクリング、水泳など有酸素運動を取り入れてみてくださいね。
マッサージをする
自宅でより手軽にできる対処法の一つに手のマッサージがあります。 痛みがあると、その部位を動かすのを躊躇してしまいがちです。ただ、動かさないと血流が悪くなり痛みがよりひどくなってしまいます。そこで、簡単なマッサージで手をほぐしてみましょう。手のひらや甲をすり合わせるマッサージのほか、グーパーと手のひらを開いて握るといった体操もおすすめ。 運動をする時間がない、痛みであまり手を動かしたくないというときは、手軽にできるマッサージから試してみましょう。
カルシウムを摂る
更年期に起こりがちな関節の痛みを和らげる食事として、カルシウムを積極的に摂ることを意識しましょう。 関節の痛みは関節を支える軟骨が衰えることでおこることもあります。更年期以降は女性ホルモンが大きく低下することで、骨の代謝に影響がでて骨粗しょう症のリスクがあがるとされています。カルシウムを不足させないことは、骨粗しょう症の予防と治療の基本です3)。 カルシウムが多く含まれる食材…牛乳、乳製品、小魚、小松菜
ビタミンDを摂取する
カルシウム以外にもビタミンDが不足しない食事を意識しましょう。 骨を丈夫にするにはカルシウムのイメージが強いと思いますが、ビタミンDにはカルシウムの吸収を助ける働きがあります。そのため、ビタミンDも骨粗しょう症の予防で摂りたい栄養素です。関節痛のある人はビタミンDの濃度が低かったという報告もあります3)。 カルシウムが多く含まれる食材…魚類、きのこ類
漢方薬
更年期で日常生活に支障が出ている関節痛には、桂枝加朮附湯(ケイシガクジュブトウ)、防已黄耆湯(ボウイオウギトウ)やなどの漢方薬が使われることがあります4)。 漢方薬にはさまざまな生薬が複数含まれているため、さまざまな症状を緩和する特徴があります。更年期における症状の出方には個人差もあり、症状も多彩なため、漢方薬での治療が相性がよいとされています。 ただ、漢方薬は症状だけではなく、その人の「証(しょう)」を見極めて選ぶことが大切です。証とは東洋医学の考えに基づく診断方法の一つで、体質や体力、症状の現れ方などを指します。同じ症状でも証があっていないと効果が期待できないこともあるため、自分にピッタリな漢方薬を選びたい場合は専門家に相談することがおすすめです。手軽に始めたい方は、自宅で購入できるオーダメイド漢方を利用する方法もあります。
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通院をするタイミングや治療方法
更年期で指の関節が痛いときの通院をするタイミングやどこの科を受診すればよいか悩む方も多いと思います。 ここでは、更年期で指の関節痛があるときの通院をするタイミングや治療方法について解説します。
通院を始めるタイミング
指の関節痛の症状が強い、もしくは悪化していく場合は通院を始めてみましょう。 更年期による関節痛であれば、日常生活に大きな影響を与える可能性は低いです。ただ、関節痛の原因がリウマチだった場合は、強い痛みを感じたり、今後悪化していくこともあります。リウマチは進行すると関節が変形することがあるため、専門家に相談しましょう。 通院に抵抗があったり、更年期の別の症状が気になる場合は自宅で手軽にホルモン検査キットを試してみてはいかがでしょうか?canvasのホルモン検査キットは、気になる症状が更年期に関連しているものなのか、他の要因によるものなのかをセルフチェックが可能です。
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何科を受診すればよい?
指の関節痛が気になるときは、まず整形外科やリウマチ科を受診してみましょう。とくに異常が見当たらなければ、婦人科への受診も検討をしてみてください。 リウマチや変形性関節炎など他の病気が原因ではないか確認するためにも、まずは整形外科やリウマチ科の受診がすすめられます。病気が見当たらない場合は、更年期症状の可能性もあるため、婦人科への受診も検討しましょう。 指の関節痛に限らず、更年期では似たような症状の別の病気を見逃さないことが大切です。
治療方法
更年期の症状による指の関節痛であればホルモン補充療法が行われることがあります。 ホルモン補充療法とは、女性ホルモンの下がり幅をゆるやかにして更年期症状を緩和する治療法です。女性ホルモン剤が使われますが、貼り薬や飲み薬のタイプなどがあります。 ホルモン補充療法はほてりやのぼせなどの症状の改善に有効です。更年期における関節痛でも、ホルモン補充療法によって症状が緩和される方もいます。
まとめ
本記事では指の関節痛の原因や改善方法を解説しました。ポイントは下記の通りです。
- 更年期では、指の関節を含む体のあちこちの関節が痛いと訴える女性が多い
- 更年期による関節痛もリウマチも中年期以降の女性で起こることが多く、専門家でないと識別判断は難しい
- 更年期に指の関節が痛くなる原因は、女性ホルモンの変動の影響が考えられている
- 痛みが強いもしくは悪化する場合は整形外科、リウマチ科、婦人科を受診する
参考文献
1)日本女性医学学会.女性医学ガイドブック更年期医療編2019年度版.2019https://www.kanehara-shuppan.co.jp/books/detail.html?isbn=9784307301411
2)日本産婦人科学会編集. 産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020. 2020https://www.jsog.or.jp/activity/pdf/gl_fujinka_2020.pdf
3)Chlebowski RT, et al. 25-hydroxyvitamin D concentration, vitamin D intake and joint symptoms in postmenopausal women. Maturitas. 2011https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3860096/