女性の薄毛は治る?治らない時の対処法は?改善・予防方法もご紹介。

この記事の監修者

前田 裕斗

産婦人科専門医

経歴

2013年3月 東京大学医学部医学科卒業
2015年3月 川崎市立川崎病院にて初期臨床研修修了
2015年4月 神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科専攻医
2018年4月 国立成育医療研究センター産科フェロー
2018年10月 日本産科婦人科学会産婦人科専門医取得
2021年4月 東京医科歯科大学国際健康推進医学分野博士課程在学

「髪の毛が細くなった」「抜け毛が増えた」「分け目が目立つようになった」など薄毛にまつわる悩みを抱えていませんか?女性の薄毛は症状の特徴によって4つのタイプに分けられ、男性型脱毛症(AGA)を引き起こす原因とは全く異なります。 

女性の薄毛は治る可能性が高く、早めに対処することが大切です。そのまま放っておいたり、誤ったセルフケアを続けていると薄毛が進行してしまうかもしれません。薄毛にお悩みの女性はぜひご一読ください。 この記事でわかること

  • 女性が薄毛になる原因
  • 女性の薄毛が治らない場合の理由と対処法
  • 女性の薄毛を改善・予防する方法

女性の薄毛とは

女性の薄毛とは、髪の毛が細くなったり、発毛しなくなったりすることで、髪の密度が減ってしまった状態をあらわします。 2021年に株式会社リクルートは20〜69歳の男女を対象に、薄毛に関する意識調査を行いました。

調査結果によると、20〜69歳の女性のうち8%の人が「薄毛である」と回答しています。 さらに「薄毛ではない」と回答した人のうち、約半数は薄毛に関して「不安がある」と答えており、多くの女性が薄毛に関する悩みや不安を抱えているということが分かります。

女性の薄毛の原因

女性の薄毛の原因は、男性の薄毛の原因とは異なります。男性の薄毛を引き起こす主な原因は、ジヒドロテストステロンという男性ホルモンの一種です。

ジヒドロテストステロンは髪の成長サイクルに悪影響を及ぼし、AGA(男性型脱毛症)を発症させます。 一方、女性の薄毛の場合は、女性ホルモンの変化、過度なダイエット、生活習慣など、いくつもの要因が重なっていることが多く「これが薄毛の原因だ!」と特定できないことも珍しくありません。

女性の薄毛の症状

女性の薄毛は症状の特徴によって、びまん性脱毛症、分娩後脱毛症、円形脱毛症、牽引性脱毛症の4つのタイプに分けられます。

びまん性脱毛症

  • 髪の毛が細くなる
  • 髪の毛のハリやコシがなくなる
  • 抜け毛が増える
  • 全体の髪のボリュームが減る
  • 分け目が目立つ
  • 頭皮が透けて見える

分娩後脱毛症

  • 出産後に抜け毛が増える
  • 抜け毛のピークは出産後2〜3か月
  • 出産後6〜12か月で回復する

円形脱毛症

  • 円形や楕円形に髪が抜ける
  • 一気に髪が抜ける
  • 脱毛部分と生えている部分の境目がはっきりしている
  • 髪だけでなく体毛も抜ける

牽引性脱毛症

  • 分け目が目立つ
  • 生え際が薄くなる
  • 抜け毛が増える
  • 切れ毛や枝毛が増える
  • いつも結んでいる部分が薄くなる

女性の薄毛が治らない場合の理由と対処法

男性のAGA(男性型脱毛症)は完治しない病気ですが、女性の薄毛は治る可能性が高く、適切な対処を早期に行うことが大切です。 「薄毛がなかなか治らない」という場合は、なにか理由があるのかもしれません。女性の薄毛が治らない時に考えられる理由とその対処法についてご紹介します。

治療期間が短い

同じ治療を行っていても、年齢、体質、生活習慣などが異なるため、治療の効果が現れる期間には個人差があります。3か月で効果を感じ始める人もいれば、12か月治療を継続してやっと効果を感じる人もおり、治療期間はさまざまです。

まずは、6か月を目標に治療を継続しましょう。見た目に変化がなかったとしても、体内では改善の方向に進んでいるかもしれません。せっかく受けた治療が無駄にならないように、途中で治療をやめないようにしましょう。

薄毛の原因と治療方法が合っていない

行っている治療が薄毛の原因に有効でないと、薄毛が改善されないことがあります。 たとえば、牽引性脱毛症の場合、長期的に髪の毛を引っ張り頭皮にダメージを与えることが原因です。しかし、髪の毛を引っ張る行為をやめずに、いくら育毛シャンプーや育毛剤を使用しても改善するのは難しいでしょう。

また、ストレスによる薄毛の場合も同様で、原因であるストレスを解消しなければ一時的に回復に向かったとしても、また繰り返されることが予測されます。 薄毛の原因と対処法が合っていなければ、薄毛の根本的な解決には至りません。

体質に合うヘア用品を選んでいない

使っている育毛シャンプーや育毛剤があなたの体質に合っておらず、薄毛が改善しない可能性があります。 体質や薄毛の症状に合った育毛ケア用品を自分で探すことは大変難しく、一般的に市販されている育毛ケア用品は、クリニックなどで処方される治療薬より効果が弱めです。

専門のクリニックを受診すると、あなたの体質や薄毛の症状に合った治療方法を専門家が提案してくれます。専門家に相談することも一つの選択肢として、頭に入れておきましょう。

薄毛の原因が疾患である場合

何かの疾患や治療が影響し、脱毛が起こっていることも考えられます。たとえば甲状腺の機能異常や抗がん剤治療などの影響です。 甲状腺の機能異常は女性に多くみられ、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などが有名です。

甲状腺ホルモンの過度な分泌が新陳代謝を過剰にし、抜け毛が増えることがあります。 また抗がん剤治療では、副作用によって髪の毛だけではなく体毛まで抜けることがあります。脱毛を引き起こしている疾患の治療が終わらなければ、薄毛の改善は厳しいかもしれません。

女性の薄毛治療・対策はいつから始めたらいい?

薄毛の治療や対策は「髪のボリュームが減ってきた」「抜け毛が増えた気がする」など、薄毛が気になり出した時に、すぐ始めるのがおすすめです。

鏡を見た時にふと気になり、40歳を超えてから薄毛を意識する女性が増加しています。放っておくと薄毛が進行してしまうかもしれません。 症状が悪化してから治療を始めると、薄毛の改善に時間がかかったり、改善することが難しくなることもあります。早い段階からできることに取り組んでいきましょう。

女性の薄毛|改善・予防方法

薄毛対策を始める時期が早いほど、女性の薄毛は治る可能性が高くなります。始めるのが早すぎるということはありません。 女性の薄毛を改善・予防をするには、「自分で行う方法」と「薄毛専門の医療機関に頼る方法」の2つがあります。具体的な方法をご紹介しましょう。

食生活・生活習慣を見直す

髪と体の栄養状態には密接な関係があります。特に鉄分と亜鉛は不足すると脱毛を引き起こすことが分かっており、積極的に摂取したい栄養素です1)2)。

その他にも、必須脂肪酸であるオメガ3と6は、脱毛の減少や毛髪の密度の改善に効果があります3)。 また、閉経を迎える50歳前後はホルモンバランスの変化によって抜け毛が増えやすくなるため、栄養バランスのよい食事を摂るように心がけましょう4)。

    【髪の成長に関わる栄養素】
  • タンパク質
  • 脂肪
  • 炭水化物
  • ビタミンA
  • ビタミンB
  • ビタミンC
  • ビタミンD
  • ビタミンE
  • ナイアシン
  • ミネラル
  • ポリフェノール
  • 亜鉛
  • セレン
  • ケイ素
  • マグネシウム
  • カルシウム

さらに、ストレスを受けた際に分泌されるコルチゾールは、発毛サイクルに影響を与えることが分かっています5)。食生活以外にもストレスの解消や十分な休息、睡眠など、普段の生活習慣を見直してみると良いでしょう。

ヘアケアを見直す

髪にダメージを与えていませんか?普段のヘアケアが髪を痛める要因になっているかもしれません。 濡れている状態の髪は摩擦によるダメージを受けやすく、ドライヤーで乾かす人は多くいます。

しかし、長時間ドライヤーを使用していると、乾燥によって毛髪の表面がザラザラしたり、髪色が変色してしまう原因になります。ドライヤーを使用する時は、同じ場所に熱風が長く当たらないように注意しましょう6)。 他にも、縮毛矯正、パーマ、ブリーチ、カラーリング、紫外線、ヘアアイロンは髪を痛める可能性がありますので、髪に負担をかけないように気をつけましょう7)。

マッサージ

頭皮のマッサージは薄毛の予防や改善に効果的です。マッサージによって頭皮をほぐすことで血流が増加し、髪を太くしたり、髪の成長サイクルを促進することにつながります8)。

    【頭皮マッサージの手順】
  1. 手のひらを使って頭全体を押したり離したりする。
  2. 指先で頭全体をトントンと軽く叩く。
  3. 両手の指をこめかみから耳の上にかけて置き、頭皮を揉み上げる。
  4. 指のはらを使って頭頂部から首の後ろにかけて刺激する。

頭皮マッサージの方法に決まりはありません。気持ち良いと思う方法を試してみましょう。

育毛剤・育毛シャンプーを使用する

薄毛の改善や予防において、頭皮環境を整えることはとても大切です。頭皮環境を整えるためのケアアイテムには、育毛剤や育毛シャンプーなどがあります。 「育毛剤」は髪が育ちやすい環境を作り、「育毛シャンプー」は頭皮を清潔に保つ効果が期待できます。 育毛剤や育毛シャンプーを使用する際は、必ず女性用のものを選び、有効成分が配合されているかをチェックしましょう。

    【有効成分】
  • ミノキシジル
  • キャピキシル
  • アデノシン
  • t-フラバノン
  • サイトプリン
  • ケトコナゾール
  • ホホバオイル
  • グリチルリチン酸
  • ノコギリヤシエキス など

頭皮にも使える美顔器を使用する

血行促進のために頭皮にも使える美顔器を使用するのもおすすめです。美顔器といえばスキンケアのイメージがありますが、頭皮も肌の一部であり、マッサージによって良い効果をもたらします。 

テレビやSNSで話題のデンキバリブラシは、低周波の振動で毛根を刺激し、新陳代謝の活性化を促します。 デンキバリブラシはプロのメイクアップアーティストも使う有能な美顔器です。頭皮の血行促進や抜け毛の予防が期待できることから、デンキバリブラシを取り扱うヘアサロンもあります。

薄毛専門の医療機関を受診する

薄毛の症状を早く改善したい!という方は、専門の医療機関での治療がおすすめです。皮膚科や薄毛専門のクリニックでは、内服薬治療、外用薬治療、注入療法などによる治療を行います。

治療方法 作用
内服薬治療 薬を飲むことで体の中から薄毛に働きかける
外用薬治療 頭皮に薬を塗ることで体の外から薄毛に働きかける
注入療法 注射などを使用して頭皮に薬を注入し薄毛に働きかける

自分でできる対処法には限界があり、誤ったケアを続けると薄毛が進行してしまうことがあります。専門の医療機関ではあなたの体質や症状に合わせた治療法を専門家が提案してくれるので安心です。

まとめ

女性の薄毛を引き起こす原因は、女性ホルモンの変化、過度なダイエット、生活習慣など、いくつもの要因が重なっていることがよくあります。 女性の薄毛は症状の特徴によって、びまん性脱毛症、分娩後脱毛症、円形脱毛症、牽引性脱毛症の4つのタイプに分けられます。 薄毛の改善や予防には、次のような方法が効果的です。

  • 食生活・生活習慣を見直す
  • ヘアケアを見直す
  • マッサージをする
  • 育毛剤・育毛シャンプーを使用する
  • 頭皮にも使える美顔器を使用する
  • 薄毛専門の医療機関を受診する

女性の薄毛は治る可能性が高いため、早めの対処を心がけましょう。

参考文献

1)西日本皮膚科:58巻5号「脱毛症(2)」,1996https://www.jstage.jst.go.jp/article/nishinihonhifu/58/5/58_5_820/_article/-char/ja/

2)微量栄養素研究:第10集「亜鉛欠乏による免疫不全と脱毛」,1993http://157.205.23.154/sym10/10_039.pdf

3)Le Floc'h C, et al. :Effect of a nutritional supplement on hair loss in women,2015https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jocd.12127

4)Zuzanna Sabina Goluch-Koniuszy:Nutrition of women with hair loss problem during the period of menopause,2016https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4828511/

5)Erling Thom.Stress and the Hair Growth Cycle:Cortisol-Induced Hair Growth Disruption,2016https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27538002/

6)Yoonhee Lee:Hair Shaft Damage from Heat and Drying Time of Hair Dryer,2011https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3229938/

7)Ram H Malkani:Hair Styling Procedures and Hair Morphology: A Clinico-Microscopic Comparison Study,2020https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32832441/

8)Taro Koyama:Standardized Scalp Massage Results in Increased Hair Thickness by Inducing Stretching Forces to Dermal Papilla Cells in the Subcutaneous Tissue,2016https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4740347/

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